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ポーカーっぽいデッキビルダーRPG
Aces and Adventuresは、Triple.B.Titles(テキサス州ダラス)が開発し、2023年2月にリリースされたデッキビルダーRPG。
特徴は典型的なローグライクデッキ構築のシステムを採用しつつ、独自のアプローチとしてポーカーの要素が組み込まれている点。ルールなど詳細は後述。
日本語対応済みだが機械翻訳的
インストールサイズは約2GBで、日本語対応済みの作品となっています。
日本語訳は非常に機械翻訳的。シナリオはニュアンスで理解できますが、一部カードの説明文は日本語として破綻しており意味がわかりません。総じて翻訳のクオリティは非常に低めですね。
ルール:ポーカーの役がダメージになる
基本はトランプ一組と30枚のアビリティデッキを使用するターン性のカードゲームです。
- ターンプレイヤーはどの敵を攻撃するか選び、ポーカーの役で構成されたカードを場に出す。
- 防御側は出された役と同じ役(同数枚)を場に出す。
- 戦闘に勝ったプレイヤーは出したカードの枚数分のダメージを与える。
ポイントは2点。
- ポーカーの役で勝った方がダメージを与えられる
- ダメージは場に出した枚数分
↑の画像(例1)では、
- まずプレイヤーが同じ数字が2枚の「ペア」を出しました。
- しかし相手は手札がないため1枚のカード(シングル)しか出せず、役で上回ったプレイヤーが勝利しました。
- ダメージ量はペアで使用した2枚、2ダメージです。
例1では相手は同じ役を出せませんでした。では同じ役を出した場合はどうなるのでしょうか?
例2ではプレイヤーは防御側。
相手はシングルカード(9)を出しました。プレイヤーはAのペアを出せる手札でしたが、防御側は攻撃側が出したのと同じ役しか出せないので、J(11)のシングルで対抗しました。
お互いの役が同じだった場合、数字の高い方が勝つのがポーカーのルールです。
(2<…<10<J<Q<K<A)→2が最弱、Aが最強
よって、例2ではJを出したプレイヤーの勝利です。防御側でも勝利するとダメージを与えられ、この場合、プレイヤーはシングルカード分のダメージ(1)を与えることに成功しました。
トランプ以外の要素
プレイヤーはアビリティデッキと呼ばれる30枚のデッキから毎ターン1枚ずつドローできます。これらのアビリティカードはトランプカードをコストとして発動でき、手札の交換、攻撃、防御、バフなど種類も多彩です。
ゲーム中にはアビリティカード以外にも、キャラクター固有の能力や装備品や消耗品なども存在し、これらを駆使してメインのポーカー勝負をサポートしていくことになります。
ちなみに、トランプもアビリティも使い切ると再シャッフルされます。つまり使い切りではなく、何度も使い回せると。
ゲームの進め方
ゲームを起動すると現れるのがこの画面。3台のテーブルがありますが、それぞれ左から「←デッキ編集」「↑ステージ選択」「→キャラクター強化」をする場所です。
グラフィカルなインターフェースであることから察せられるように、グラフィックにこだわっているゲームで、このジャンルのゲームにしてはまあまあ重いです。
「デッキ編集」ではアビリティデッキの編集が可能で、必ず30枚ちょうどに収める必要があります。後述しますが、新しいアビリティカードはプレイ後に獲得できます。
「ステージ選択」は正確には「アドベンチャーデッキ選択」で、シナリオや敵情報が記されたデッキを用いてゲーム内でゲームをするみたいなイメージです。
アドベンチャーデッキには、シナリオに沿って攻略していくデッキと、StS風ローグライクマップを攻略していくデッキの2種類があります。
シナリオ主体のデッキは、1つあたり約10分~20分でクリアでき、カードに記されたシナリオに従って進行します。シナリオは「北欧神話と中東神話に触発された…」とストアページにあるように、壮大な世界観を感じられる長大な物語です。とはいえ基本的には「敵が出た、どうする?」「最短か遠回りか」「森では狼」「墓場ではスケルトン」…といった小さなイベントや選択が続くライトなTRPGのようなプレイ感です。
自動翻訳の洋ゲーにしては、理解しやすい展開で、SEもリアルで没入感が高く、シナリオ全体の出来栄えはなかなか良いです。
StS風ローグライクマップで構築されたデッキは、まあ…よくあるタイプです。分かれ道もあるルートを自分で選択していき、終点で待つボスを倒せばクリアとなります。
マップの形状はアドベンチャーデッキによって変わり、クリアまで大体約50分~1時間半くらいかかります。敵が硬くなる終盤のデッキではもう少し時間がかかるかもしれません。
マス目の数と種類に圧倒されますが、
- 敵(赤)
- カード関係(青)
- 回復or強化(緑)
- それ以外
の4種類だけで、分かれ道も多くて3本程度と意外とシンプルな設計であり難しさはありません。
アドベンチャーデッキをクリアすると、リザルトに応じて「マナ」を獲得します。
マナが溜まるとアビリティパック(アビリティカード×5)を開封でき、ここから新しいカードをアンロックしていく仕組みです。
マナは「キャラクター強化」に使用することもできます。
1つのマナでキャラクターレベルを1上げることができ、レベルアップするごとにポジティブな効果を得られます。最大30レベルまで成長可能なので、最大まで育てるとポジティブ効果は30個にもなります。これらの効果にはキャラクター特性の強化やジョーカーの追加、最初のターンにマリガン(再ドロー)する権利などが含まれます。
つまり本作は、プレイ前からキャラクター強化が可能な、強くてニューゲームができるゲームです。カード収集的意味でも、能力強化的な意味でも、プレイするたびに簡単になっていくというゲームバランスになっています。高難易度は別ですが…。
なお、30レベルに到達するとレベルをリセットすることができ、この状態で再度30レベルにすることで、特別なオプション(ややチート気味?)が解放されます。
感想:RPG感の強いカードゲーム
楽しい。けど、最初は正直イマイチでした。手札補充のタイミングなどルールの把握が大変でインターフェースも洗練されておらず、翻訳にも意味不明な箇所が多く???なことばかりでした。なじもうと苦労した肝心のポーカーバトルも、シングルとペアばかりで単調であり、雰囲気はいいけど、なんか地味で物足りないなぁと。
そんな難のあったゲームですが、徐々に仕様を理解するにつれ、面白みを感じられるようになっていきました。やはり勝てるようになってくると楽しいです。このゲームの良さは、いい意味でぶっ壊れているところ。1プレイ中に特性、装備、消耗品などの強化を高頻度で獲得していくことが可能なのですが、元々がポーカーというシンプルなルールであるために、ほんの少しの手札操作ができるだけで、あっという間に無双できてしまいます。
その強化が容易に進まないのが面白く、最初は無強化状態から始まり、スリリングを通り越して、理不尽だろ、と言いたくなるような戦いも多いです。ただ、そうした苦しい過程こそが、当たりの強化を引いた瞬間に得られる喜びを大きくしています。
ポーカーのようなデッキビルディングというのが、本作の魅力の一因かもしれませんが、実際の楽しみはデッキ構築やプレイングなどの繊細な部分ではなく、当たり外れのある強化で劇的に変化していく過程を楽しむローグライク感、RPG感にありました。
クレジットも良かったですねー。ゲーム設計を利用した小粋なエンディングで、これぞインディーゲームといった感じの愛とこだわりを感じました。
ポーカー感はあまりない
本作で特に目を引くのはポーカーっぽいゲーム性ですが、実際のところはポーカーの要素を一部利用した別ゲーです。
たとえば、通常のポーカーには手札を入れ替えて役を作り上げる面白みがありますが、本作の手札入れ替え手段には制限があり、デフォルトの状態では役が揃いにくい傾向にあります。確率的に仕方ないことではありますが、シングルとペアがほとんどで派手さに欠けます。
また気になるのは「防御側は攻撃側と同じ役までしか出せない」という仕様です。つまり、防御側が攻撃側を打ち負かすためには、数字で上回る同じ役を出すしかありません。これはバランスを考慮した仕様なのかもしれませんが、ポーカーの醍醐味であるハッタリや度胸が試される役勝負が、ただの数値比較とは、なんともスケールの小さいバトルだなーと。
アビリティカードも戦略性を高めるというより、グッドスタッフの介入者みたいな感じで、ゲームに馴染んでいるかというとそうでもありません。
…という点からして、カードゲーム単体で評価した場合、ポーカーとは似て非なるゲームで、戦略面でもバランス面でも全体的に魅力的とは言い難いクオリティだと思います。
ガンガン成長していくRPG感
ただ逆に、そんなシンプルで地味なカードゲームだからこそ、装飾が際立ちます。
たとえば、「ハートの攻撃力+1」の装備を手に入れると、ハートのカードはシングルでも2ダメージ、ペアで4ダメージ、フラッシュなら10ダメージに向上します。ハート限定とはいえ装備1つで2倍ダメージとはものすごい変化ですよね。
またさらにはキャラクターのレベルアップによる強化もあります。初期キャラのマグナーの場合、攻略中にレベルアップすると、手札が1枚増える特性を獲得します。6枚の手札から5枚のカードを選ぶ形になるので、より役ができやすくなります。
極めつけはアイテム。アイテムの中には消費されないアイテムがあり、たとえば↑のアイテムは+1の範囲内で数値を上げたり下げたりできるというもの。ノーコストで使用できるため、これがあればペアやストレートが毎ターン簡単に構築できます。
…このように、特性やアイテムの効果は非常に派手で、ガンガンキャラクターを強化していく楽しみを味わえます。ローグライクデッキ構築ゲームを多くプレイしてきましたが、1プレイ中の強化具合はトップクラスです。
こうした攻略中のインフレ、プレイ前にキャラクターの永続的強化が可能な点、捨て札のカウンティングなど、だいぶプレイヤーに有利な仕様が揃っていて、難易度的には非常に抑えられたバランス…というか俺TUEEEができるレベルです。
ボリュームもヤバい
すべてのアドベンチャーデッキをクリアするのに60時間もかかりました。プレイ可能なキャラクターは5人いますが、1キャラのカードをコンプするのに10時間ちょっとかかった感じですね。半額セールで買えば1,000円程度のゲームですからコスパは優秀です。
ただし、文章の流れるシナリオは1本しかなく、後はその高難易度版やStS風のマップ形式なので、実質的なコンテンツ量的にはそこまで多くはないかもしれません。
また、マップの豊富さは新鮮ではあるものの、ユーザーのフィードバックが分散してしまいやすいデメリットがあるように思います。そのためか、全体的に磨き上げられた深みのある1プレイというより、ステージ制のSRPGみたいな軽いプレイ体験になっています。
そこそこ良作
総合すると、ゲーム内の特性やアイテムが派手な変化をもたらす、キャラクター強化の楽しさがある低難易度のポーカー風ローグライクRPGといったところでしょうか。
カードゲームのギミックや戦略性が好きな人には物足りないかもしれませんが、成長を楽しむRPGと思えばライトなプレイ感で気楽に楽しめます。ボリューム十分でコスパも非常に高いです。セールなどで安くなっていたらおすすめです。
自分としても、パーフェクトな作品ではないなぁ~と思いつつ、60時間もプレイしてしまうほどには魅了されたゲームでした。
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