鉄血のオルフェンズの感想【ネタバレあり】

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 【ネタバレあり】鉄血のオルフェンズ(以下鉄血)の感想。

内容の感想と考察

 「居場所のない子どもたちが自分たちの居場所を探す」というのが鉄血の大テーマだったということです。やれ貧困やれ格差やれ革命だのいうのは、すべて主人公たちには関係ない事柄でした。安穏な生活というのが第一の課題にして目標だったのです。一方でストーリーのほうは革命という大きなテーマが掲げられ、大軍団がぶつかり合う壮大な戦いが繰り広げられることになります。この主人公サイドとそれ以外との熱の違いがこの作品の特徴だったのかなーと思います。革命?ふーん。みたいな。

 熱の違いで一番に思い出すのは3話のクランクです。クランクは子供たちのことを思い、かなり譲歩した提案を持って鉄華団に迫ります。その後ミカヅキとの決闘の末に痛手を負ったクランクは介錯を頼み、死に際に「ありがとう」とつぶやきますが、それを言い切る前にミカヅキは終わらせます。自分たちに関係ないことには情けもなにもない残酷で排他的なキャラの特徴がでているシーンだと思います。このクランクの厚意を踏みにじったとして憤慨したアインが、ゆくゆくはマクギリスを終わらせるキーマンとなるのですから、この回は本当に重要だったと思います。クランクの提案が「CGS(鉄華団前身)と縁を切る」というのも今となっては…という気持ちになりますね。その回のサブタイトルが「散華」というのもまた興味深い。

 こもりがちな彼等(鉄華団)が人との触れ合いを経て自分を解放していく展開になるのでは、という読みは大外れでした。世界情勢に絡んでいるようで、ずっと彼らは彼ら自身の世界を生きていただけでした。これが結局のところ、自分たちはうまくやっているつもりでも、大局的な視点にたった大人たちに利用されるだけだったというね。バッドエンドすぎた…。

ミカヅキ

 自分から話すことがない+話しかけられる人間が忙しくなってくるとほっとかれがちだったので、後半特に空気でした。主人公というより、鉄華団の中の1人のメンバーみたいな感じでしたね。もっと内面を深掘って欲しかったなーと。

クーデリア

 クーデリアは彼等と外部を繋ぐ存在になるのではなく、ただ彼等の生きる意思を尊重し寄り添うというだけの役割をするに収まりました。彼等を救おうというのが自分のエゴだということに気付いてから、理解しようというのが第一に来て、それによって受け入れられるようになったと思うんですが、結果ほとんど見守るだけの空気のような保護者役になってました。エピローグのあの展開もクーデリアがなんとかしたというよりも、ラスタル&ラスタルでしたからね。

マクギリス

 理想を語っていたマクギリスも、実は鉄華団と同じく、ただ生きるということにおいて方向性が違っていただけというオチでした。シャア的なポジションで、ゆくゆくは主人公のライバルになっていくであろうと目されていた人物があのようなあっけない終わり方をしたことは評価がわかれるでしょう。バエルとはなんだったのか。見掛け倒しのライバルだったということに目を瞑れば個人的には好きな終わり方でした。決着がついてから心が通じ合うという一番ガンダムらしい、自分好みの悲劇だったからです。「見えていたけど見えないフリをしていた」このセリフはぜひとも鉄華団サイドからも聞きたかったですね。

 終盤は鉄華団よりマクギリスのための物語みたいになってました。というか、鉄華団は内向きすぎて、あまり外部とコミュニケーションをとる機会がなかったので、マクギリスがその窓口みたいになってました。アレだコレだといって暗躍するわりに、どれもこれも挫折続きで、そういう点ですごくピエロ的というか、かわいそうなキャラでしたね。

鉄華団

 鉄華団はいろんな意味で浮いた存在でした。生き残るということが第一にあり、それ以上に戦う理由がありませんから、それ以外の理由で戦う人々とは立っている土俵が違うのです。この温度差が縮まることなく終わってしまいました。ミカヅキの戦いは最後まで無味乾燥のままでした。せっかくビームがない白兵戦が主体の世界観なのだから、もっとバチバチにやりあう戦いが観たかった。

 テーマはただ生き残るということにあり、内面の成長とかはこの作品において重要なポイントではなかったのです。ただそこが強調されたわりに、けっこう寄り道多かったですよね。旧友から見られる目を気にしたり仁義を貫いたりがそうです。主人公サイドよりむしろ敵役のラスタルのほうが、戦争を引き起こしたり禁止兵器を使ったりと必死感がありました。

総評

 心理描写や言い回しなど気に入らないところもありました。ただ一話一話に惹かれるものがあったのは確かで、総合的には楽しめた作品でした。何か特別な示唆を与えてくれるような作品ではなく、ショッキングな演出と新鮮な世界観を提供してくれる娯楽向けガンダムだったのかなと。シリアスというには可笑しくて、ライトというにはバッドエンドすぎるというね。

 毎週放送時間になると賛否両論入り乱れながらもトレンド入りしていましたね。作品の力かシリーズの力か、どちらにせよ多くの人が注目していたことに変わりないでしょう。時間帯もあるでしょうが、この熱量はシリーズ前作のGレコではあまり感じられないものでした。このときの高揚感はリアルタイム視聴でなければ味わえないものだと思います。作品の評価にはつながらないけど、記憶に残る作品であったのは事実です。

その他

・基本ビーム兵器がない

 ガンダムと銘打っているのだからMSで戦ってナンボ。鉄血はどっちかというと戦闘が少ない方の作品だったかな。そんなたまにある鉄血の戦闘は他とひと味違っていた。それはビームがない戦場だということ。MSの装甲を貫く武器がないので、制圧するにはコクピットを文字通り叩くしかない。白兵戦が多かった印象だ。どの機体も等しく頑丈で、まるで、やばいやばいと言いながら殺しはしない不良漫画のようだった。終盤登場したビーム兵器の恐ろしさたるや、他の作品はすごいや。

・圧力なし

 ガンダムは作品は組織や上司との軋轢を描いたものが多いですが、鉄血はそういったものが最初だけで、大部分は子どもたちが自分で決断し行動するというのが許されてました。まー珍しいよね。

・厄災戦、ミカヅキと月の関係、アグニカの業績

 消化不良だった。伏線と呼ぶほどでもないけど、もっと語られてもよかった。一番気にかかってるのはアグニカ関連ね。どんな人物でどんな活躍をしたのか。

・オルフェンズの涙が名曲

www.youtube.com

 第一期のEDだけど、この一曲で世界観が大きく広がった気がします。ゆったりとして、それでいて力強い。一歩一歩進んでいく感じがして、今まさに冒険に旅立とうとする一期の内容にすごくマッチしてた。

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