今更ながらアマプラで観ました。略称はぼざろというらしいです。
主人公の魅力が1番
やはり本作は主人公ぼっちの魅力によるものが大きいと思いますねー。
陰キャ主人公ってのは珍しくないですが、大体逆転してイキリだすタイプが多いように思います。本作も一芸で逆転する感じは似ていますが、そういう嫌味がまったくありませんでした。環境に対する不満はあっても人に対しての不平不満を言わずに、逆に自分への批評は受け入れることができる。謙虚で懐の広い真っ当な主人公タイプでしたね。単に奇天烈なだけでなく、真っ当な感性を持っているので、共感しやすいし、かわいいし、素直に推せるキャラでした。
また、始終ふざけっぱなしのボケ役ってのも良くて、陰キャともヒロインとも思えない多彩な声色や表情の変化が観ていて面白かったです。
そんなふざけたキャラクターが、急にシリアスになると、おや?と惹かれるものがあります。陰キャが一発逆転するだけでもそれなりに盛り上がるものですが、ライブ中であれば、音楽的な興奮もあって、三重のカタルシスを味わえました。
ただ、似通ったノリがずっと続くので、途中からやや飽きもありました。
ダイナミックな演出
日常系で、物語の起伏はほぼなく、特に際立って面白いわけでないのに、なぜか見ていられる。これは演出の力が大きいと思います。
中心的に描かれるのはよくある日常系4コマ的な小ボケとツッコミの繰り返しでしたが、その小ボケの広げ方が秀逸でした。
パロディ的な顔芸、実写演出、3Dモデルの利用。これらは、もはやアニメの枠組みを超えて純粋に映像作品として素晴らしかったです。なんでもありな感じが現代っぽいしアニメっぽいと思いました。
アニメ技法も際立っていて、何気ないシーンで作画枚数が急に増えて、意味深な感じを演出してみたり、ライブシーンで動いていないのに動いている感があったりと、芸が細かく、魅せ場がかなり多かったですね。そういった一部分を切り取った動画がSNSでたくさんバズっているのがその証左かなと思います。ここが面白い、このシーンも面白い、みたいな。
アニメキャラがイケボで歌う
ロックを題材にしてるだけあって、音楽へのこだわりがすごかったですね。
似た作品のけいおん!は、かわいいキャラがかわいい声で歌って、かわいさが前面に出ていました。これはこれで好きでしたが、キャラソン的な印象がありました。
一方で本作は、かわいいキャラがイケボで歌っていて、しかも主人公が作詞しているという設定が、深みがあって良かったです。けいおんも好きですが、ぼざろのほうがより等身大な感じがするし、エッジの効いたエモさがありました。
ライブシーンの描写も秀逸でしたね。ただ歌っているところを描くのではなく、ライブそのものをしっかり描いていたと思います。ちょっとしたハプニング、メンバー同士の目配せ、アドリブ、観客の盛り上がりなど、緻密な演出で臨場感がありました。
あと作画も。ライブシーンの作画はあれ本当にどうなってんだ? 明らかに3Dモーションでしか無理そうなヌルヌルした動き方なのに、違和感が一切ない。ちゃんとアニメの範疇で動いているにもかかわらずリアル。最初はこの奇妙な感覚に感動より驚きのほうが大きかったです。
ストーリーはやや不足感
ノンストップで飽きずに楽しめましたが、日常系の枠組みを大きく超える作品ではないので、メインストーリーはあまり進まず、物語的な起伏には欠けているように感じました。
もっと分かりやすく主人公が活躍してくれるかな~と思ったら、足踏みが長くてもどかしかったです。まあこれは自分の好みですが。
しかしこれが日常系の良いところでもありますけどね。
最終話もライブやって終わり~ではなくて、新しくギターを買うエピソードを挟んで、新しいけどまた平凡な一日のスタートという終わり方。多くのドラマはあったけど、またしとしとと日常に戻っていくってのが良いんですよねー。
感想
無理に褒めようとか貶そうという邪心なしに、普通に面白かったです。
演出は神がかっていて目が離せないし、ストーリーはよくある部活物に近いノリながら、日常とシリアスのバランスが良く、ただ面白い可愛いだけではない深みがありました。
あっさりスープなのに出汁がものすごいみたいな、ライトな口触りなのに満足感が高い作品でした。1話だけで疲れてしまう作品も多いですが、本作はショート動画を観たような疲労感で、最終話までノンストップで視聴できましたね。
一方で、前評判でハードルが上がりまくっていたのもありますが、面白いけどもう一つ突き抜けたものはなかったなと。視聴中の心の声を文字にすると、「面白い、面白い、もっとこい、こい、こない、こない、でも面白い、こい、もっとこい、終わった、、、」という感じでしたね。面白くないわけではないのですが、個人的な好みとして、もっとストーリーが動く展開を見たかったです。
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また改めて他の人のレビューを読むと、どういう言葉や表現であれ、熱いレビューが本当に多い。それだけ作品に共感できるところや印象的な場面が多く、鷲掴みにされた人が多かったのでしょう。わかるなぁ。やっぱりロックはすげえや。
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