作品名 | オクトパストラベラー(OCTOPATH TRAVELER) |
開発 | Square Enix, ACQUIRE Corp |
リリース日 | 2019年6月8日 |
ジャンル | JRPG、ターン制バトル |
価格 | 7,480円(Steam) |
対応プラットフォーム | PC(Steam/Windows) Switch/Xbox One Netflix(iOS/Android) |
日本語対応 | あり |
インストールサイズ | 約3.19GB |
Steam評価 | 非常に好評(86%) |
プレイ時間 | 約65時間(裏ボス撃破) |
- Qどんなゲーム?
- A
普通のJRPG。ただし、主人公が8人いて、8人分の物語がある。
同じ大陸を舞台に、8人の主人公のストーリーを同時並行で進めていくRPG。主人公同士がメインストーリー上で直接関わることはありませんが、同じ町でイベントが発生したり、一緒のパーティで共に戦ったりします。
8人のキャラクターそれぞれの物語が4章ずつ用意されており、総章数は8キャラ×4章=32章にも及びます。
戦闘システム
戦闘は「たたかう」「MP消費してスキルを放つ」といった、よくあるコマンド式ですが、独自な要素として、「シールドブレイク」と「ブースト」というものがあります。
シールドブレイク
どんな敵にも初期状態で「シールド(盾)」があり、このシールドがある間はダメージが大きく軽減されます。弱点攻撃を受けるとシールド値が減っていき、0になるとブレイク(破壊)。ブレイクされた敵はノックアウト状態になり、1ターン動けなくなるのに加え被ダメージも大きく増加。ノックアウト状態が終わると再びシールドが貼られます。
ブースト
ブーストはコマンドを強化します。たとえば、剣の通常攻撃を1回ブーストすると剣2回攻撃に、最大3回ブーストすると4回攻撃に。また、スキルの場合は威力が増加し、最大ブースト時には非常に高いダメージを期待できます。
この2つを組み合わせ、「コツコツと敵のシールドを削り、ブレイクしたらブーストで一気に叩き込む!」という流れが戦闘の基本です。
ジョブシステム
他にもユニークなシステムとしてジョブシステムがあります。
各キャラクターには固有のジョブが設定されており、戦闘で得たポイントを使ってそのジョブ特有のアビリティやコマンドを習得していくことができます。
固有ジョブのアビリティを習得していくのが基本ですが、冒険の途中で「装備ジョブ」を入手することができ、固有のジョブに加えて装備ジョブのアビリティも習得できるようになります。この装備ジョブは自由に変更可能できるため、普段は「剣士」に「狩人」を組み合わせて弓攻撃を行い、ボス戦では「神官」に切り替えて回復役を担う、といった柔軟な運用が可能です。
感想:万人向けのカジュアルゲーではないね
60時間以上もプレイする中で、夢中になった瞬間もあれば、イライラさせられた瞬間もありました。まずは総合的な評価に入る前に、良い点、悪い点を率直に挙げてみたいと思います。
良かった点
1.音楽の素晴らしさ:
この作品で最も感動したのは、なんと言っても音楽です。マジでBGMが素晴らしい。一曲一曲のクオリティが高いし、流れるタイミングも絶妙でした。初めてゲームを起動したときは「BGMの音量大きすぎるのでは?」と思いましたが、聴かせることが目的ならば納得のバランス。
ノスタルジックで感情に直接語りかけてくる曲調で、ストーリーが「歌詞」のように思えてくるくらいのパワーがありました。エンドロールでは奏者の名前が一斉に流れ、気分はまるでコンサート。まさに「生きた音楽」を楽しむ体験でした。
2.圧巻のビジュアル:
HD-2Dというらしい。2Dのドット絵に3DCGの画面効果を加えたスタイル。レトロでありながら写実的でもある独特な空気感。日差しの眩しさや篝火の揺らぎをリアルに感じられる一方で、よく見たらちゃんとドット絵。そんなリアルとフェイクのギャップが不思議でした。
特に感心したのが、奥行きの演出です。マップを探索していると、遠くにぼんやりとセーブポイントが見えたり、これから入る町の遠景が視界に入ったりするのですが、世界が地続きに広がっている感覚を強く味わえて好きな演出でした。
また、戦闘時のエフェクトも良かったですね。特にブレイクは爽快感があり、何度見ても気分が高まりました。
3.ストーリーのドラマ性:
他の人のレビューを読むと、「8人もいるせいで分量的に薄味」「キャラ同士が絡まないのでつまらない」という意見をよく見かけます。
──これは実際そう。
各キャラのイベントが4つしかないんだもの。ダイジェスト的なのは事実。展開も「新しい町を訪れる→事件発生→ダンジョン攻略&ボス戦→解決&次回への伏線」という似た流れが多いです。
それでも、個人的にはこの分量でここまでドラマチックに描けているのは見事だなと思いました。各イベントにはしっかり起承転結があり、見せ場やサプライズが散りばめられています。主人公ごとに雰囲気が異なる点も良いですね。たとえば、プリムロゼ編は相当シリアスな復讐劇だけれど、トレサ編はラブコメのような立志伝、といった具合に。
第4章では、これらの別個のストーリーが実は繋がっているのでは?というのがほのめかされ、その伏線の回収が裏ボス戦。詳しくは語りませんが、真相は結構“パズル的”で感心しました。疑問点もほぼ解消され、スッキリとした気持ちで終わることができました。ただ、本筋に深く関わる話をやりこみ要素に含ませたのは少し不満です。そこに至る誘導が明確に示されていないのも、不親切だなあと。結局攻略サイトに頼りました。
各キャラ/ストーリー雑感
- サイラス(学者)…戦力的な意味でも最初に選んで正解。知識の共有がモットー。顔が良いため女性関係でトラブル多めなのに、本人無自覚なのが面白い。お誂え向きに女性キャラばかり登場するのも…。ストーリーはある歴史的な書物を巡るもので、全員の中で最も世界の真相に迫る内容で興味深かった。
- ハンイット(狩人)…師匠との探り探りな距離感が微笑ましかった。意外とグイグイ系? 戦力面では、序盤は硬い敵を処理する「捕獲」が強いと思ったが、徐々に成功率が低下していったのと、捕獲した魔物もすぐに世代交代することもあって、終始中途半端なキャラという印象。本人が弱いからボス戦もキツかった。
- トレサ(商人)…シリアスなストーリーが多い中で、堅苦しさのないドラマはちょうどよい清涼感で、気持ち的に助かった。全編コミカルかと思いきや意外と重要な組織や名前も登場する。アビリティが有能で貴重な金策役として、枠が余ったらとりあえず入れてた。中盤からはBPパサーの強さに気づき、最後の裏ボス戦ではメインアタッカーとして大活躍。
- オフィーリア(神官)…基本感謝される旅で登場人物も良い人ばっかり。雪の降る町のBGMも素晴らしいし、優しさあふれるエピソードの数々に心が温まる。高台でのシーンは屈指の名シーン。
- プリムロゼ(踊子)…ドラマ性では群を抜いている。全体を通してテキストがノリノリで声優の力強いブチギレ声も最高だった。第3章で過去を語り合うシーンは舞台のようで、状況、演出ともに素晴らしく特に記憶に残っている……ね。堂々としているがゆえに、第4章での動揺が見える内面描写には心を揺さぶられた。
- テリオン(盗賊)…ボスの顛末が壮絶。紫箱は許せん。
- アーフェン(薬師)…人の命を直接救っているわけだから、感謝のされ方はトップ。序盤はおまけキャラくらいにしか思ってなかったが、進めるにつれ好きになっていったキャラ。意外と熱血で、よく泣くところが好き。決意を固めたシーンが特にお気に入り。状態異常を治すだけでなく予防効果もある「健全化」はボス戦では必須のバフだった。
- オルベリク(剣士)…「強い男が一番かっこいい」を体現したキャラ。旅の目的や得たものがわかりやすく、ストーリーとして一番整理されていると思う。周りの人間も精神的にかっこいい奴らばかり。戦力面では終始頼れる存在であり続けた大エース。ストーリークリア後のエンドロールではこれまで戦ったボスのラストアタックの瞬間が流れるが、8割がオルベリクだった。
良くなかった点
このゲーム、実はクリア率が相当低いです。Steamの実績を見ると、8人全員のストーリーをクリアしたプレイヤーは20%未満。ゲームパス入りしたMicrosoft Store版では3%しかいません。ゲームパスはまだしも、7,500円を払って買った人の中で20%もクリアしてない(裏ボスどころか正規ルートすら)というのは驚きの数字です。ちなみに8人クリアは「表ストーリー」にすぎず、「裏ボス撃破」が真のクリアといえますが、そちらはそれぞれ6.2%(Steam)、0.65%(Microsoft Store)とさらに低くなっています。
最大の問題は戦闘
クリア率が低い理由はさまざまあると思いますが、何よりもまず戦闘の難易度の高さが挙げられます。
敵の攻撃が痛すぎる!
適正レベルでその時点最高の装備を揃えていても、最初のターンでパーティが半壊なんてことも珍しくないです。ボスの攻撃でHP半分は普通で、一撃死もたまに。自分としてはリラックスしてプレイできるカジュアルゲーだと思って始めたので、度肝を抜かれましたね。
…とは言っても古典的なコマンドRPG。レベルを上げて装備を整えれば楽になるんじゃない?
─その通り!─
ほんの少し記録を取ってみたところ、レベルが1上がるごとに全ステータスが5程度伸びていくみたい。武器や防具の性能が1ランク上がると10~20程度伸びていくことを考えると、レベル2~4上げるだけで、装備を新調したのと同じ効果が得られ、装備更新と合わせることでさらに強化が加速するはず。
──なーんだ、簡単──
と思うじゃん?
しかし、そのレベル上げと装備強化がスムーズではないことが、本作最大の残念ポイント。以下、3つの問題点を詳しく述べます。
1.戦闘のテンポの悪さ
まず、戦闘のテンポが非常に悪いです。本作の仕様では敵のシールドをブレイクしないとまともなダメージを与えられません。そのため、どんな戦闘でもまず敵の弱点を突き、シールドを削る作業が必須になります。この削る作業は基本的にカスみたいなダメージでコツコツやるため、時間がかかるうえに戦況的にも地味です。
ボス戦ならまだしも、格下の雑魚戦ですら同様のプロセスが必要で、とにかく長いし面倒。終盤になるとシールド耐久が5以上になる雑魚も現れたりします。さらに、エンカウント率が高く、逃げるのも確率次第。レベル上げ目的ではなくても、普通にマップを移動するだけでどれだけ時間かかるんだろうという感じ。
また、シールドブレイク後の格差も気になりました。ブレイクすると敵がノックアウト状態になり、その間は通常より大きなダメージを与えられますが、このチャンスを最大限活かせるのは瞬間火力スキル持ちだけ。低コストの多段技では、シールド削り役にしかなれません。このバランスの悪さのせいで、キャラ差がとんでもなく開いてます。
2.パーティ数と経験値補正
戦闘に時間がかかるなら報酬はおいしいのか?というとそうじゃないのが辛いところ。パーティ数は4人までが上限で、待機中のキャラには経験値が入りません。そのため、8人全員を育成するには、レベルの低いキャラを育成枠として都度パーティに加える必要があります。すると、他のメンバーは育成済みで固めざるを得なくなり、実質育成枠は1~2しかないわけです。8人を育成するのに、1~2人ずつしか行えないのは…。
しかも、レベルの離れている敵を倒したからといって経験値ボーナスのような救済もなく、出遅れたメンバーを引き上げるのには相当な時間がかかります。全キャラを満遍なく育てる必要がある本作のコンセプトを考えると、ちょっとハードすぎるなぁと。
3.装備入手の不親切さ
装備入手の導線もだいぶ不親切。装備は各町の武器屋で買えますが、各町で販売される商品が異なるため、どこで何が売られているかメモを取るなりしておかないと、買い逃した時にいずれ困ります。
また、「探る」コマンドで店に商品が追加されるというシステムがありますが、「探る」コマンド自体に確率があり、商品追加系は総じて中確率となっています。「探る」コマンドについてはここでは深堀りしませんが、リセマラが必要なシステムとだけ。
整理すると、新しい装備を手に入れようと思っても、まず1️⃣狙っている部位の装備を扱う町を探し、2️⃣『探る』コマンドで中確率を引く(外れたら金を積むかリセット)というステップを経ないと装備が見つかりません。
これだけでも面倒なのに、3️⃣結局、金がなくて買えない(本作は金策がシビア)というオチが一番多い。『見つからない→見つかった→金がない→金稼ぎだ→戦闘が辛い』と、よくないループ。こうした不親切な仕様が積み重なり、プレイヤーのやる気を削いでいるのではないでしょうか。
「難しい」+「不親切」
「難しい」うえに「不親切」という妙にハードな仕様は、自分にとって非常に強いストレスでした。
「難しい」こと自体は問題ないと思います。むしろ、適度な難易度はゲームの魅力になり得ます。ただ、挑戦したいと思わせる仕掛けや導線が不足している「不親切さ」と融合すると、良くないケミストリーが生まれてしまいます。それが本作。ストーリーやビジュアル、音楽は素晴らしいですが、「プレイを続けたい」と思わせるほどの推進力はなく、脱落する人が多いのも理解できます。
ちなみに、終盤になると状況はいくらか改善します。1キャラにブーストを集めたり、新ジョブを活用することで、シールドを無視して大ダメージを叩き込めるようになるからです。終盤(第4章クリアしかけ~裏ボス撃破まで)の雑魚戦は1ターンキルばかりでむしろ爽快なくらいです。ただそこまでが遠すぎることは否めない…。
細かい不満点
自分の中で他にも細かい不満点はありましたが、戦闘のストレスが何よりも大きすぎて霞んでしまいました。ただ、一応挙げておきます。
- エンカウント率が高すぎる…頻繁な戦闘を回避するには、貴重なアビリティ枠を割く必要。
- キャラ差…ジョブシステムによって補助や回復は誰にでも行えるため、そうした役割のキャラの価値が低い。補助や特殊立ち回りに特化したキャラが多すぎて、差別化が難しい。
- 推奨攻略レベルの急激な上昇…特定キャラを集中して育てて進めることができず、ストーリーとは別にレベル上げ作業を要求されるのが辛い。
- 裏ボスルートの導線…特定のサブストーリークリアが必須にもかかわらず、明確なガイドがなく、見落としやすい。
- 裏ボス連戦…再試行に時間がかかりすぎる(1時間レベル)。
- 特殊コマンドの重複…上位互換があると、そちらしか使わなくなり、下位コマンドの存在意義が薄れがち。
- フルボイスじゃない…フルボイスではなく、ところどころ声が入っているだけなので違和感あり。
- キャラ同士の交流不足…イベントでのキャラクター間のやり取りが少なく、リアリティに欠ける。
- ストーリー上の整合性…あくまで各主人公が1人で問題に挑む体裁で進むため、他のキャラがモブや妖精のような存在に見えてしまいます。たとえば潜入ミッションでは、4人で行動しているはずなのに、1人で侵入しているかのように進むのが不自然。
総評:癒やしとイライラの両輪
日常系アニメのような、ただ聴いて眺めるだけで癒やされる、そんな幸せな瞬間もあれば、ピーキーな戦闘バランスと理不尽な戦闘にイライラが爆発することもあり、癒やされたりイライラしたりと感情が忙しい作品でした。
ただ、嫌いじゃないなってのが正直な感想ですね。不満は確かに多かったものの、最後までプレイしたのも事実です。BGMはこれまでプレイしてきたゲームの中でもトップクラスで、これからも聴きたくなるクオリティでした。ストーリーも「薄い」と言われがちですが、感情が動かされれば小話だって価値があると思います。戦闘も辛い部分が多い中、ボス戦のギリギリ感には楽しさを見出だせました。
オススメするかしないかで言うと、悩ましいライン。やっぱり戦闘がハードなので、時間的にも心理的にも覚悟が必要だと思います。ただ、その分得られるものもありました。
- 素晴らしい音楽との出会い
- 癒やしを感じられるストーリーや風景
- 難ゲーを乗り越えた達成感
- 続編への期待感
特に続編はプレイしやすくなっているようなので、とても楽しみにしています。本作の苦しみがなくなったら、それはもう素晴らしい作品だと思うから…。
これからプレイする人向け:進行中にストレスを感じやすい場面と対策
第1章序盤
状況: 味方がいない、火力が足りない、敵が強い。
対策: まずは仲間を4人集める。オルベリク、サイラスがオススメ。回復役はオフィーリア。
第2章序盤
状況: 推奨レベルが急に上がり、レベル上げが必須に。戦闘が長くて心が折れがち。
対策: 軸となるメンバー(例: サイラス、オルベリク)の育成に集中すると楽になります。また、攻略中のストーリーで次に進めたいキャラをパーティに入れるなど、自然にレベルを上げられる編成を心がける。コアメンバーが強ければ推奨レベルより多少低くても進行可能です。
第4章のボス
状況: 最終装備を整えても状態異常が多く、戦闘が冗長化。
対策:
- 耐性アクセサリを用意するか、薬師の「健全化」を踊子の奥義で全体化して予防バフを維持する。
- 上級ジョブを取得するとアビリティ面で革命が起こる。BPパサーでブーストした魔法で雑魚敵を一掃できるようになったら1つのゴール。
裏ボス連戦
状況: 長丁場で途中セーブなし。やり直しにリアル1時間以上かかることも。
対策:
- レベル70以上を目指し、攻撃役2人+補助役2人のバランス編成を組む。
- 全員に「回復上限突破」を装備すると安定します。攻撃役には「ダメージ限界突破」が必須。
- 鉄板アビリティ: 永続フィジカル/メンタル、ラストアクト。
- 戦法: 万ダメージが出せる攻撃役(例: サイラスの魔法、オルベリクの武道奥義、トレサの風魔法)にBPを集中させて火力を出す。
- 結局BPゲーです。
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