作品名 | In Other Waters(イン・アザー・ウォーターズ) |
開発 | Jump Over The Age |
リリース日 | 2020年4月3日 |
ジャンル | SFアドベンチャー、ビジュアルノベル |
価格 | 1,700円(Steam) |
対応プラットフォーム | PC(Steam、GOG)、 Switch |
日本語 | 対応 |
インストールサイズ | 約706MB |
Steam評価 | 非常に好評(88%) |
プレイ時間 | 約5時間半 |
- Qどんなゲーム?
- A
SF系の読むゲーム
ざっくりとしたストーリー:舞台は「グリーゼ667Cc」という人類未踏の惑星。主人公は生物学者で、パートナーに呼ばれてこの星にやってきた。しかし、到着してみるとパートナーの姿が見当たらない。パートナーの消息を求めて、そして生物学者としての興味からこの水の惑星を調査することに……。プレイヤーはダイビングスーツに搭載された人工知能となって、主人公をサポートする。
ゲーム性について:海中での移動と観察がメインのフィールドワークシミュレーションのようなゲームですが、基本的には文章を楽しむ作品であり、攻略は難しくありません。
流れは以下の通り。
- スキャン:周囲をスキャンしてアイコンを表示
- 読み取り:アイコンを読み取り、地形や生物のデータを把握(ここの分量が多め)
- 移動:収集した情報を元に次の目的地に移動
表示させて読んで、読むものがなくなったら移動して…の繰り返しですね。
観察対象にはそれぞれにデータ収集率があり、これが100%になると名前が付いて、図鑑に記録されます。
図鑑埋めは必須ではありませんが、フィクションとは思えないほど詳細に記載された本格仕様。読み応え抜群です。
感想:細部の描写が素晴らしい
率直な感想を言うと、シチズンスリーパーほどではなかったですね。それでも非常にクオリティの高い作品で、他のストーリー系とは一線を画す、良い意味で異質な凄みを感じました。
絵的には退屈なんですよ。ソナーで検出された無機質なアイコンを追うだけで、変化はあるっちゃあるけれど、所詮ソナー越しの景色に過ぎません。想像力が豊かな人なら感動するかもしれませんが、その程度でしかないというか…。
それでも、この作品の文章には、その想像力を掻き立てる力があります。これはシチズンスリーパーをプレイしているときにも感じたことですが、地の文や状況描写がとにかく細かい。どんな状態で、どのように、なんのためにといったことが事細かに説明されるので、生々しい臨場感があります。
挿絵を見ながら小説を読んでいるような感覚。間取り図のような簡易な絵なのに、文章の力でそこに画が視えてきます。
酸素の概念や環境音といった、いかにもゲーム的な演出もありますが、文章の力だけでシーンを想像させるのは、純粋に書き手の力量の賜物です。そのポテンシャルを引き出す日本語翻訳も素晴らしかった…。架空学名も難しいところだったと思いますが、直感的でわかりやすい見事なネーミングでした。
緊迫感ある展開も
言うまでもなく架空惑星は地球をモデルにしており、人類と自然の関わり合い方が1つのテーマになっています。観察内容的に、適応、共生、自然保護とかソッチ方向に進むのかと思っていましたが、意外な展開でビックリしましたね。ある事実が明らかになるエリアでは、酸素ゲージがギリギリになる緊張感も相まって心臓バクバクでした。
環境保護を訴える作品では、象徴的な動物ばかりがフォーカスされがちですが、この作品は生態系全体をフォーカスしています。たかが植物、たかが生物と思われるかもしれませんが、そこには人類と同じような社会性があり、互助や拮抗、多様な生態があります。本作がユニークなのは、その独自社会内での関わり合い方に重きを置いている点ですね。
結局のところ、なんだかんだバランスが取れているということでしかないのですが、遠く地球から離れた場所ですら、こうした共生関係や、ある種の危機を経てもそこから復元する力が見られるというところに、自然のロマンを感じました。
ちなみに一応本作は、地球外生命体とのファーストコンタクト物でもあります。いつの日か人類が本当に地球外生命体と出会ったとき、人類が真に感動するのは、その生命体そのものよりも、その生命体を育んだ生態系に対する関心かもしれないなと。
良くなかった点
良くなかった点は2つ。
1つ目はUI全般。スタイリッシュで洗練されたデザインではあるものの、使い勝手が悪いです。文字が小さい、移動速度が遅い、そして1番は全体マップを見れないこと。難しいゲームではないものの、長時間プレイするのはしんどいシステムですね。
2つ目は図鑑収集要素。ここまで架空環境を構築したことには驚きますが、さすがにマニアックすぎるなと。興味深いのは確かですが、ライトに楽しめる!って感じではないですね。手間かけてフレーバーテキスト読むか?って話。
総じて、ゲームとしてはあんまり…というのが正直な感想。読み物としては面白いけれども、それ以外では煩わしく感じる部分が少し。まあ、雰囲気ゲーですね。
これからプレイする人向け攻略
- 拡大・縮小可能(基地に戻るたびにリセットされるっぽい)
- やることはスキャン&移動
- 時間制限はないので焦らなくておk
- 燃料の概念はあるが、サンプルや中継地点で回復できる
- 燃料ゼロになってもワープ直後(中継地点)に戻るだけ
- 帰還はドローンでいつでも(範囲外もあり)
- サンプルは拠点で分析
- 回復用サンプルを持っておくと長めの探索でも安心
- 図鑑埋めは自由でストーリークリア後にも進められる
良質だけどマニアック
よくできているのは間違いないけれども、マニアック過ぎて手放しでオススメすることは難しい作品ですね。ある程度の覚悟を持ってプレイする必要がありますが、シチズンスリーパーに感動した人なら、十分に楽しめるかと思います。SFテーマが好きで、読むゲームが好きな人はぜひ。
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