ブループラネット2という海洋保護を訴えるドキュメンタリーにインスパイアされた作品。
ゲーム×ドキュメンタリー
Beyond Blue(ビヨンドブルー)は、E-Lineによるアドベンチャーゲーム。
本作の特徴は、前作の「Never Alone」のように、ゲームパートの途中で短編ドキュメンタリー映像が観られること。
ドキュメンタリー映像は、海洋学の専門家へのインタビューを通して海について学べる1~3分の短い実写映像で、本物のドキュメンタリー番組のようなクオリティです。
ゲームパートでは、ミライという女性主人公を操作して、深海を潜る海洋学者のリアルな日常を追体験できます。詳しくは後述。
短時間でクリア可能
インストールサイズは10.98GB、クリア時間はできるだけ最短を意識したプレイで3時間弱でした。
また、標準で日本語化済みです。翻訳のクオリティも高かったです。
ゲームパートは2つの側面で展開
ゲームパートは、海中探索のアドベンチャーパートとストーリーを進めるための小休止パートで構成されています。
海中探索はスキャンするだけ
ミライの仕事は環境調査と生物の追跡調査です。
やることはいたってシンプル。
まず最初に広域スキャンを行います。
すると、こんな感じに目的地にマーカーが設定されるので、そこでタスクをこなすだけです。
タスクといっても、近づいてスキャンするのがほとんどですけどね。
ゲーム性が面白いというより、視覚的に興味深いという感じです。
特殊なスーツ?でどんな深海も大丈夫。
正直な感想を言うと、ゲーム性はほぼないですね。ゲームとしては面白くはないです。ただ散策ゲームとしては上々だと思います。
合間にストーリーが進む
探索が終わると深海探査艇に戻ります。ミライはここを拠点に長期任務にあたっているという設定です。
奥の椅子では通信が可能。ここでの関係者とのやり取りでストーリーが進行していきます。
通信を終えて「潜水準備よし」の表示がでたら、潜水服を選択することで、次のエリアに進めます。
その左の端末からはアンロックされたドキュメンタリー映像を視聴できます。
ドキュメンタリー映像は1~3分尺のものが全部で16本あります。
映像では実在の海洋学者へのインタビューを通して彼らの仕事やライフスタイルについて知ることができます。
内容も興味深かったですが、何より驚いたのがその映像美。映像に勝る説得力はないですね。
前作と比較してドキュメンタリー映像の入手が簡単なのも良かったです。前作は隠れているのも多かったですからね。
ストーリーについて
主人公は海洋学者のミライ。彼女は幼少期に親を亡くし、海女であるおばあちゃんに育てられました。しかし、おばあちゃんは認知症を患っていて、生先も怪しい感じ。妹との仲も最近芳しくない。そんないろいろと整理が必要な状況で、孤独になれる長期の仕事を通して自分と家族について見つめ直し、目の前の困難に立ち向かうためのヒントを得る…というストーリーです。
ちなみに英語音声でも「アマ」って言ってましたね。顔立ちもアジア系。
ミライは特にクジラが大好き。そんな彼女と作中のクジラがリンクしているところが見どころでした。たとえば、クジラの群れはオスはすぐに外洋に出ますが、メスはとどまって祖母と暮らすことが序盤のドキュメンタリー映像で語られます。これは彼女のバックボーンとそっくりです。作中に登場するクジラの家族の動向も…。
感想:プレイしてよかったと思える
楽しめたか楽しめなかったの2択でいうと、楽しめました。もちろんゲームとしてはどうかなという面もありましたが、この作品ならではのユニークさがあり、貴重な体験ができました。
押し付けがましさはない
本作をプレイする前は、「人間が悪いんだぜ」を強調したネガティブな要素も多そうだなというのが気になっていました。クジラやイルカってのも日本ではわりとセンシティブな内容だし。なんか説教臭そうなゲームだなと。
この点についてですが、「人間が悪いんだぜ」的な持っていき方はあるものの、メインは海の多様性や神秘性を強調したもので、思想的な押し付けがましさがまったくありませんでした。海はスゲー!が8割、訴え系2割といったところ。ちなみに主人公は日本人っぽいですが、日本的な要素も1つもなかったですね。
探索パートは面白くない
探索パートは視覚的にはいいんですが、ゲームとしては正直面白くありませんでした。泳いで、スキャンして、また泳いでスキャンしての繰り返しで、移動がダルかったです。
クジラやイルカやサメなどが共生しているマップは、非現実的で変化に乏しいため、水槽の中を泳いでいるようでした。しかし、後半の深海マップは非日常的な雰囲気があり、探検の面白みを感じられました。
ゲーム操作は簡単ですが、ただ1つズームスキャンの操作感が繊細で、慣れるまでとても苦労しました。コツはゆっくり操作することですね。
興味深い題材
あとやっぱり、題材が良かったですよね。ドキュメンタリー映像にしてもテーマが多彩で、観ていて飽きることがありませんでした。
追跡にタグ付けをするのは、なんとなく知っていましたが、生き物を殺さずに調査する非侵襲的な最先端技術を駆使した映像には驚かされました。
その他、深海採鉱の問題や、有機物と岩石の共進化についての興味深い話、そしてお決まりの地球温暖化やプラスチック汚染の話もありました。
ストーリーも満足
ストーリーは海洋学者の追体験をしながら、彼女のパーソナリティに迫ったものでしたが、主観的すぎないのが良かったですね。クジラとの触れ合いや、同僚とのやり取りを通して、間接的に心情を浮き彫りにする描き方でした。この方がリアルだと思いますし、変に後に引かないというか、いい意味で淡々としていて観やすかったです。キャラクターは英語音声のフルボイスでしたが、声色豊かで感情が良く伝わってきて、これもまた良かったです。
エピローグは最初は唐突に感じられましたが、後になってからこういうのもいいかなと思いました。言ってしまえば省略された形でしたが、むしろそれが効果的でした。描くまでもなく、語られるべきことはすでに語られたと…。
ストーリーの根本にあるのは共生というテーマ。クジラ同士、人間同士、そしてクジラと人間。直接的な意思の疎通はなくても、愛と思いやりの力が描かれていて、非常に感銘を受けました。個人的な視点と普遍的なテーマ性が見事に融合していたと思います。
総合すると、ドキュメンタリー映像には見応えがあり、ゲームパートは散策ゲームとしては及第点、ストーリーも悪くないといった出来でした。
ドキュメンタリー映像のみ目的としても、是非プレイして欲しい作品ですね。
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