作品名 | Astrea: Six-Sided Oracles (アストレア:シックスサイデッド・オラクルズ) |
開発 | Little Leo Games(ブラジル) |
リリース日 | 2023年9月22日 |
ジャンル | ローグライクデッキ構築、カードゲーム |
価格 | 2,800円(Steam) |
対応プラットフォーム | PC(Steam/Epic) |
日本語対応 | あり |
インストールサイズ | 約2.52GB |
Steam評価 | 非常に好評(92%) |
プレイ時間 | 約9時間(心臓撃破) |
- Qどんなゲーム?
- A
「カード」が「六面体ダイス」になったSlay the Spire(StS)風のローグライクデッキ構築ゲーム。
ストーリーとゲームシステム

ストーリー:
舞台は神秘の星「アストレア」。穏やかだった世界に突如「堕落」が広がり、星の調和が崩れてしまう。この異変を食い止めるべく、星の祝福を受けた六面(Six-Sided)の力を持つオラクル(神託者)の子孫たちが立ち上がる。果たして彼らは、星を再び輝かせることができるのか──。

ゲームシステム:
StS(Slay the Spire)風のローグライクデッキ構築で、最大の特徴は「カード」が「六面体ダイス」になっている点。
六面体ダイスのそれぞれの面に効果が設定されており、手札に加えるたびにダイスロールが行われ、出た面の効果が確定するという仕組み。

ダイスには良い効果と悪い効果があり、その偏り具合に応じて以下の3種類に分けられています。
- セーフダイス…安定した効果が揃い、リスクが少ない。
- バランスダイス…良い効果と悪い効果が混在している。
- リスキーダイス…悪い目が出やすいが、大きなリターンが期待できる。
たとえば、セーフダイスは「外れ」がなく安定して使いやすいものの、効果は控えめ。一方、リスキーダイスは強力な効果を狙える代わりに、悪い目が出るリスクも高め。このように、ダイスをピックする際に、効果そのものだけでなく、「目の出やすさ」も考慮する必要があります。

もう1つの特徴は、「浄化」と「堕落」によるデュアルダメージシステムです。
- 浄化
- 敵に使うとダメージ
- 自分に使うと回復
- 堕落
- 敵に使うと回復+強化
- 自分に使うとダメージ
プレイヤーの属性は「浄化」で、「堕落」は敵にとって有利な効果を持つ属性。

特に厄介なのが、手札に来た「堕落」は必ず使用しなければならないというルール。ダイスを振って「堕落」の面が出た瞬間、「敵の回復」か「自分へのダメージ」のどちらかが確定してしまいます。
そのため、「浄化」を回復に使うか、それとも攻撃に回すか、といった押し引きが攻略のポイントです。

ゲーム進行の流れ:
ゲームの流れは本家StSに近い形式で、すごろくのような一筆書きのマップを進みます。道中で様々なイベントをこなしながら最終ボスを目指す、オーソドックスな流れです。
ステージは全3ステージ(+α)構成。
マスの種類も一通り揃っています。
センチネル:
センチネルは、プレイヤーの隣で一緒に戦ってくれるお供キャラクター。最大2体まで連れていくことが可能。ターン開始前に自動で攻撃してくれるだけでなく、自分専用のダイスを持っており、もう1つの手札のように使えます。また、強化することで能力がどんどん上昇し、組み合わせ次第で多様な戦術が狙えます。

ダイスのカスタマイズ:
特に面白いと思ったのが強化(鍛冶)マス。このマスでは、ダイスの効果を上書きできます。主な用途は、悪い効果を良い効果で上書きすること。改造を重ねることで、リスキーダイスをノーリスク化させることも可能。
そんなに多く踏めるマスではありませんが、ここで改造したダイスを今度はコピーして…みたいに、発展可能性を感じさせるロマンマス。

プレイ時間と難易度:
心臓撃破(エンディング到達)まで9時間。6キャラいますが、ほぼ初見でクリアできました。難易度はこのジャンルの中では比較的優しく、初心者でもクリアしやすいバランスになっています。クリア後のやり込み要素も豊富なので、むしろここからが始まりかも?
感想:良かった点、気になった点

良かった点
1.ビジュアルと雰囲気が抜群
初プレイ時、メインテーマが流れた瞬間に当たりゲーと確信。
天体をテーマにした神秘的な世界観はビジュアル面でも音響面でも魅力的で、キャラクターやモンスターのデザインも丁寧。
演出がやや長めではありますが、ゲームに慣れてからは高速化オプションをオン。サクサク動作でストレスなく楽しむことができました。

2.ローグライクデッキ構築の王道
王道をしっかり踏襲しており、その完成度も高いです。
特にマップ。ショップや強化マスがしっかり揃っているのはもちろん、イベントマスではさらに尖った効果が用意されているなど、意外と中身もしっかり。バラエティ豊か。目新しいわけではないですが、ここまで高いクオリティで完コピしているのは珍しいと思います。
3.独自性「カードをダイスに」
カードを六面体ダイスに変えた発想はユニークで、最悪のケース、最高のケースを常に想定しながら構築する流れは、既存のデッキ構築型ゲームにはない魅力がありました。安定重視か、ロマンを追求するかの選択肢をプレイヤーに委ねている点が好きです。
気になった点

最初のキャラの時点では、期待できる感じだったのですが…。
1.デュアルダメージシステムによる弊害
このゲームの肝は、「相手にはダメージだけど、自分にとっては回復」という「デュアルダメージシステム」にあります。
これは「相手の攻撃に対して回復で立ち向かう」というデザインであり、「攻撃を受けても回復は間に合う」というのが前提のバランスになっています。問題はキャラクターのライフがHP7しかないことで、どんな強敵の攻撃もHP7という小さい振り幅の中で完結しているため、迫力やスリルを感じにくいです。
特に開始数ターンの敵の攻撃力(堕落)の数値は、強敵でも「4」とか「5」といった控えめなものが多く、数字的にも演出的にも地味だなと。
レリック(星の祝福)の多くは「戦闘開始時にデメリットを伴う」という効果ですが、それがあってもなお脅威を感じる場面は少ないです。難易度を上げていくと変化があるかもしれませんが…。
2.リスキーダイスの価値が薄い
敵の脅威が足りないのは、おそらくダイスによる自滅が考慮されているからだと思われます。
ですが、その調整が裏目に出てしまったのか、現状ではリスキーダイスを選ぶ必要性があまり感じられません。特別リスクを取らなくても、十分に勝ててしまうんですよね…。その結果、「ノーリスクだし、敵も穏やか」という二重のヌルさが生まれてしまっています。
リスキーダイスは確かに強いものの、状況を一変させるほどの爆発力はありません。個人的には、もう少し尖った効果でも良かったかなと思いました。そしたらドロー時のダイスロールにももう少し緊張感や期待感を感じられたかも。今のままではダイスを振ることの意義や魅力を、あまり引き出せていない印象を受けました。

3.最初のキャラクター以外微妙
プレイアブルキャラクターは6人いますが、最初のキャラクター以降の出来栄えがイマイチに感じました。特殊なパラメータを付与して戦うキャラが多く、理解に時間がかかるだけで、深みのある戦略性はそれほど。
中でも、ランダム効果を主体としたキャラクターは理不尽な運ゲーすぎてちょっとラインを超えているなと…。

4.日本語訳の粗さ
ストーリー部分はクオリティが高いのに、カードの説明文に日本語として破綻している箇所が散見されました。大体こういうのはニュアンスでなんとかなるものの、ユニークな固有効果と絡む場合、推測するのも難しく、プレイの大きな支障になりました。1個か2個ならともかく、それが結構あったというのが残念なところ。
総評:手堅いけど平凡

気軽に楽しめるローグライクとしては魅力的で、初心者やカジュアルプレイヤーにとっては親しみやすいと思います。独自のダイスを使ったデッキ構築はユニークだし、神秘的なビジュアル・世界観の演出もよく出来ています。
一方で、そこそこの歯応えやスリルを求めるプレイヤーには、やや物足りないかもしれません。特に、デュアルダメージシステムによる窮屈さ。
ダイスという題材から、もっと波乱万丈な展開やギャンブル性を期待したくなるのですが、実際のプレイはHP7の範囲内での穏やかなやり取りが中心。「2削られて2回復して……」という展開が続き、シナジーや爆発力で爽快感を味わうシーンが少なめ。全体として、「手堅いけど平凡」という印象が残りました。
自分としても、一通りプレイして心臓まで倒したら「もういいかな」という気持ちで、そこまで惹かれなかったというのが正直なところ。ただ、これはあくまで全キャラ1~2回触っただけの感触なので、難易度を上げてやり込みを続ければまた違った魅力が見えてくるかもしれません。

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