『テロリストのパラソル』あっという間に読み切れるテンポの良さが魅力。ミステリーというよりハードボイルド

3.5
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藤原伊織によるミステリー小説『テロリストのパラソル』の感想です。

Kindle Unlimitedで読みました。

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あっという間に読み切った

ドライブ感が強めというか、次々と場面が移り変わり、進展が早いので、一息つく間もなく気付いたら終わってた、そんなスピード感に溢れた作品でした。読んでいて飽きが一切ありませんでした。初めから終わりまでノンストップです。

文章自体も平易でクセがなく、引っかかるところがないので読みやすいです。ただ個人的には響く表現や好みの言葉選びはありませんでした。良くも悪くもアクション映画のようでした。

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ミステリーというかハードボイルド

この作品はミステリーのオススメとして手に取ったのですが、松本清張のような社会派ミステリー系の作品で、推理小説のようなゴリゴリの謎解きが好きな人には物足りないかもしれません。

社会派ミステリーとして、社会の闇は確かに感じられるものの、それ以上に主人公のヒーローっぷりがクローズアップされており、そのキャラクター性はハードボイルドそのものです。事件の全体像からいっても元祖ハードボイルド小説の『ロング・グッドバイ』と共通するところもあります。

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全共闘世代の余熱

主人公はじめ主要人物たちのバックヤードには、かつて共に学生運動で戦ったという過去があります。

当時、暴力だなんだというほど過激化した学生運動は当事者にとっては忘れられない特別な体験であり、その熱が過ぎ去った後も、昇華しきれなかった思いを持った人たちがいました。

本作が出版された1995年は、当時の学生運動の歴史的評価も定まり、同情的に描かれることも許される、ちょうどいい空気感だったんだろうと思います。これは、明治維新直後はボロクソ評価だった新選組が、時を経て、時代に翻弄された悲劇的な男たちとして再評価されたことにも似ています。

筆致としては、過去を肯定しているわけではなく、ただ想って嘆くことに焦点を置いていて、ノスタルジックすぎないところが絶妙です。その熱感は、余熱と表現するのが適切だろうと思います。

ただ個人的な感想としては、世代の違いもあってか、その熱を肌感として実感しにくいところがありました。昔の人の話という感じでね…。しかしそれでも共感できる話だったと思います。

ノリノリである

作品の時代背景や、ハードボイルドなキャラクターに由来することではありますが、全体的に気取ったノリがあるように感じました。背中で語り合うというか、そういうのなんですけど、主人公1人だけがそういうノリならまだ理解できるのですが、登場人物全員がノリへの理解が良くて、全員で作り上げている感がありすぎて、逆に嘘臭く感じられて、感情移入できませんでした。

不真面目な人間ばかりだからこそ、真っ直ぐな男が映えるのに、みんな簡単に同じ方向を向くもんだから、共犯感があるというか、演出過多のように感じました。とても優しい世界なんだけどね。立派な人間が多すぎる!

ちなみに、この作品は江戸川乱歩賞と直木賞を同時受賞した作品だそうです。本作で1番びっくりしたのがこの部分でした。自分は天邪鬼ではないですし、けなしているわけでもありません。こういう有名作品はほぼすべて自分に合ってましたし、ずっと鉄板だと思ってました。面白くないとまでは思わなくてもまあまあだな~と思って読み終えた最後のページにW受賞とあって驚愕ですよ。そんなにすごい作品だったのか!と。

リアルでもネットでも好評レビューが圧倒的多数で、少数派の異質な意見かもしれませんが、個人的にはまあまあでした。つまらないわけではないですよ。自分の趣味嗜好が原因だと思いますが、共感してくれる方がわずかでもいたら嬉しいです。

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