作品名 | ワイルドフロスト (Wildfrost) |
開発 | Deadpan Games, Gaziter |
リリース日 | 2023年4月12日 |
ジャンル | カードバトル、ローグライクデッキ構築 |
価格 | 2,300円(Steam) |
対応プラットフォーム | PC(Steam/Windows) Switch/Xbox OneXS モバイル(iOS/Android) |
日本語対応 | あり |
インストールサイズ | 約774.66MB |
Steam評価 | 非常に好評(81%) |
プレイ時間 | 25時間(ベル10まで) |
- Qどんなゲーム?
- A
使えるカードが1ターン1枚のローグライクデッキ構築
『Slay the Spire(StS)』の系譜ですが、ルールはかなり異なります。
ざっくり説明すると、
フィールドにキャラを配置して戦い、プレイヤーがそれを補助する
というものです。
↑(画像)が実際の戦闘画面。
画面上部がフィールドで、双方とも自陣に最大6枚のキャラカードを配置できます(ただし、ボスは1枚で2枠使用)。
カードの最下部には、攻撃するまでのターン数(カウント)が記載されています。↑の画像の場合、1枚だけ「3」のカードがありますね? このフィールドではこのカードが先に動けそうです。なお、カウントが同じ数字の場合、敵が優先して行動します。
勝利条件は、相手のリーダーカードを撃破すること。各キャラにはHP(カード左上の数字)があり、HPが0になったキャラは退場。戦闘を通じて敵キャラを倒しつつ、最終的にリーダーを討ち取れば勝利となります。ただし、これは同時に自分の敗北条件でもあり、どんなに優勢であってもこちらのリーダーカードが倒されるとその時点でゲームオーバーになります。
ターン数は、「カードを使う」か「リドロー(手札交換)」のいずれかを行うことで進行します。
細かなルールは他にもありますが、「カードを1枚使ったらターン終了」というのが基本です。
- キャラ配置を決める
- 手札のカードを使用する(ターン経過)
- キャラのターンカウントがゼロになったら自動で行動
- どちらかのリーダーのHPが0になったら決着
ゲームの流れ
ゲームの進め方はStSに近いです。
最初に初期デッキ(部族)を選択します。
現時点では3つの部族が用意されています。
続いてリーダーを選択します。
リーダーの能力は毎回ランダムで決まります。いわゆる親ガチャ。たまにすんごいのも生まれます。
マップは軽い分岐のあるStSライクのすごろく形式。各マスではカード獲得や複製、ショップなどのイベントが発生します。イベントの種類はやや少なめですが、必要最低限の要素は揃っています。
このマップを左から右にどんどん進み、最奥のボスを倒すのが最終目標です。
拠点の成長要素
冒険の出発前には、拠点でこれまでの実績を確認できます。
実はこれが意外と重要です。というのも、進捗に応じてアンロックされるカードやアイテムが、ゲーム性に大きな影響を与えるからです。
また、他の類似作品と同様、クリア後には高難易度モード(縛りプレイ)が解放されます。やり込む場合、イベント的な意味でベル10が節目になります。
感想:カードゲームというより将棋みたい
めっちゃ面白い!
夢中になってプレイし、時間があっという間に溶ける感覚を久しぶりに味わいました。これまでさまざまなローグライクデッキ構築ゲームをプレイしてきましたが、瞬間風速的な面白さでいうとナンバーワンかもしれません。
まず目を引くのは、外見の可愛らしいデザイン。でもそれ以上にゲームとして良く出来ているなと。初期デッキは3つとも個性が発揮されているし、プレイ感も独特で本作ならではの魅力があります。操作性も悪くなく、高速周回が快適にできる点も良かったです。
特に気に入ったのが「お守り」システム。これはStSでいうアーティファクトとカード強化を融合したようなシステムで、カードにお守りを装着することでその効果を付与できるというもの。
お守りは複数装着可能で、状態異常を重ねた欲張りセットを作ったり、ダメージを大幅に増加させたりと、カスタマイズの幅がとても広いです。
また、お守りで面白いなと思ったのが、キャラ(仲間)カード、手札カード、そのどちらにも装着できること。お守りをどのカードに装着するか考える際、「キャラに装着すれば確実に効果を発揮できるけれど、手札に付けたほうが使い勝手が良いかも…」といった悩みも生まれ、機能が異なるカードを同じ土俵で比較する仕組みが新鮮でした。
デッキ構築の要素は薄め
このお守りの効果は甚大で、わりと簡単に「ゲームが壊れる」傾向にあります。強化が強烈なので、デッキ構築の戦略性というよりは、圧倒的な力でねじ伏せるようなプレイ感です。
そもそも、マップの短さや、取得枚数の少なさから、「デッキをじっくり組み上げる」という感覚は薄いです。戦闘中も「1ターンに1枚だけ」という制約の影響が大きく、カード同士のシナジーを活かす前に状況が変わってしまうことが多いです。その結果、キャラカードと相性の良いカードを選んで出すだけの、1ギミック的な戦略が中心になりがちです。
その点で、正直なところデッキ構築としては底が浅く、カードゲームの醍醐味である「大局感のあるプレイング」からも遠い印象を受けました。
カードゲームアニメ的爽快感
とはいえ、この単純さが自分の好きなところでもあります。たった1つの仕掛けで勝負が決まる感覚は、まるで「カードゲームアニメ」の通常回的な、単純明快、必殺技ゲー的な爽快感があります。
本格的なカードゲームでは、大局を見ながら臨機応変に冷静な判断を積み重ねる必要があります。コンボを考えて「これとこれが組み合わさったら強いな~」と思いながら、それが実現することはほとんどない、というのがリアル。しかし、本作では「これをしたら勝ち!」という状況がしっかり作れるのが楽しいです。
難しさの本質
ですので、戦略的な意味では、それほど難しいゲームとは思っていません。でも、難しいです。別の難しさがあるんですよ。それがなにかというと、「ミスが許されない」点にあります。
このゲームでは、カードを1枚使用するだけで一気にギューンと進行します。その中で、ほんの少しでも見落としがあれば負けです。このシビアさは、将棋に近いものがあります。一手で相手の動きを封じたり、次の手への布石を打ったり、多くの情報を正確に読み取る必要があり、1つでも見落としがあれば、そこを突かれて負けます。ライフが実質1か2くらいしかない綱渡り。
だから本作の難しさの本質は、デッキ構築の部分ではなく、作り上げたデッキをいかに運用するか、戦闘中のプレイングの部分にあります。
紙一重のスリル
高難易度では、ただでさえ工夫が必要なのに、「プレイング」においてもダメ出しがあるのはしんどい限り。でもそのシビアさがスリルがあって楽しく、紙一重の戦いは本当に痺れました。リーダーカード以外すべて倒されてギリギリ一手の差で勝つ…なんてこともザラにありましたし。
包括的に場をコントロールする戦略性モリモリのゲームも楽しいですが、本作のような「必殺技ゲー」的なシンプルさを持ちつつ、プレイングでヒヤヒヤさせられるシンプルなゲーム性も、惹かれるものがありますね。
気になった点
情報の可視化不足:見落としが敗北に直結するゲーム性にもかかわらず、情報がわかりづらいです。バックログもイマイチ。他のゲームでよく見られるような「戦闘予測を表示する機能」が欲しかったです。けど、それがないのが味とも言える。
イベントが少ない:マップの種類が少なく、戦略に幅が出にくいです。実績解除でイベントが増えていくのは面白いものの、カード削除やコピーのような基本的なイベントは最初からあっても良かったと思います。
王冠の必須感:「王冠」は戦闘前にキャラカードを場に出せる便利なアイテムですが、その必須感が強すぎます。毎回これを取らなければならないのは、むしろ煩わしいです。
そもそも、このゲームではリーダーカード以外の仲間キャラはデッキから引いて場に出す必要があります。しかし、初手で手札に来ないことも多く、手札にあっても使用には1ターンかかります。一方で、敵は容赦なく押し寄せてくるため、仲間がそろう前に数の暴力で押しつぶされてしまうことが頻繁にあります。この手札事故が原因で敗北するのは、1ミスが命取りになるゲーム性を考えると非常にアンフェアに感じます。
結局、この王冠を取らないとこの問題を解決できないため、ショップで王冠を買うのはほぼ強制事項となります。ショップで払う税金みたいなもん。ここまで重要ならデフォルトで使える機能でも良かったかなと思いますね。
その他細かい不満点
- お守りの当たり外れ…何にでもマッチするお守りと、その逆の格差が大きすぎる。プルなんていつ使うの…。
- オカエシとカミツキ…いわゆる反射ダメ。ゲーム全体の攻撃スピードに対してダメージ効率が異常。
- 翻訳の問題…一部内容が理解しづらい箇所がある。
総評:緊張感と爽快感が両立
ずっと遊び続けるタイプのゲームではないかもしれませんが(実際20時間くらいでお腹いっぱい)、瞬間的な面白さでは抜群でした。カード同士のシナジーを追求するというより、カスタマイズの幅を活かして必殺ギミックを決めるゲームというシンプルなゲーム性。
このゲームの肝は、プレイングの難しさと情報を読み取る大変さです。見るべき情報が多く、気を抜くとすぐに敗北してしまいます。
「陸上100m決勝…ヨーイ、スタート!あ、コケた!終わり!」みたいな呆気なさ。自分は「緊張感があって楽しい」と思えましたが、「しょーもな」と思う人がいても仕方ないかなと思いますね。それくらいシビア。
でも大枠ではシンプルカジュアルゲームかなと。スリルを感じながら単純なギミックで突破していく緊張感、爽快感はたまりません。カードゲーム、ボードゲーム好きな人にはオススメです!
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