部隊編成がユニークなファイアーエムブレム。
FEとオウガバトルにインスパイアされた作品

Symphony of War: The Nephilim Saga(シンフォニー・オブ・ウォー:ザ・ネフィリム・サーガ)は、Dancing Dragon Gamesが手掛けた戦略シミュレーションRPG。
製作者自らが『ファイアーエムブレム』や『伝説のオウガバトル』からのインスパイアを公言しており、それら名作RPGの優れた要素を巧みに織り交ぜたゲームシステムが特長です。
2022年6月のリリースから1年経った本作は、Steam評価で圧倒的好評を維持し続けています。

プレイ時間は約50時間
インストールサイズは約1GB。
2Dの非常に軽いゲームなので、低スペックPCでもプレイできます。
難易度設定は3段階。今回はその中間の難易度でプレイし、
外伝含むメインストーリー全クリアまで47時間でした。
30章+外伝5章
オーソドックスなサーガ

ストーリーは、3つの国が支配する世界で展開されます。その中でも最も力を持つ国で混乱が勃発し、主人公も巻き込まれます。地位を奪われた主人公は、国を救うため、そして自分を裏切った人間に復讐するため、各地を放浪してそれに対抗する軍勢を築き上げる…というのが大筋です。
この復讐劇と並行して、その地に伝わる「ネフィリム」と呼ばれる存在に関する神話も関わってきます。タイトルにもなっているネフィリムとは、RPGでお馴染みの勇者のような存在で、国だけでなく人類全体の未来を背負った使命を担っています。
大義の下に戦力を結集し、超常的パワーも宿しつつ、宿敵を徹底的に叩き潰す…という明快な逆転ドラマですね。
ゲームの流れ:ほぼファイアーエムブレム

ゲームの流れは、ほぼファイアーエムブレムシリーズと同様…というか、そっくりそのままという感じですね。
まず最初に観るだけのストーリーパート。その後、1ユニットずつ動かすターン制のSLG形式の戦闘があり、それをクリアすると次の章に進む前に軍備フェーズがあります。軍備フェーズでは、兵の雇用や部隊編成、装備品の設定などを行なえます。

熟練度(CP)をためて、無償でクラスチェンジ。クラス数は40以上。

ユニットは装備品によるカスタマイズも可能。
レアリティの概念もあって、種類はかなり豊富。
ユニークな部隊編成システム

本作ならではのユニークなシステム。それが部隊編成システムです。
通常、このようなターン制SLGでは、1マスで1ユニット、1ユニットで1人を表すのが一般的です。ところが、本作の場合、1ユニットは1部隊を表し、1部隊に最大9人まで組み込むことが可能です。
全体のバランスを考えてチームを組み立てることは、なかなか手間のかかる作業であり、プレイ時間の大半はこの部隊編成だったような気がします。
最良な編成の追求

適切な配置が攻略の鍵です。
たとえば、耐久力はあるけれど攻撃力の低い重歩兵を前衛に、耐久力は低いけれど殲滅力の高い魔法使いを後衛に配置することで、「しっかりした防御力を持ちつつ殲滅力を持った部隊」を組むことができます。
このように、互いの長所と短所を補完するバランス型が最もベターな編成と言えるでしょう。
しかし、それ一辺倒だと器用貧乏になりがちで突破力に欠けるため、騎兵で固めてみたり、弓兵で固めてみたりといった特化型もまた必要になってきます。他にも、強キャラがいる部隊に新人をくっつける育成重視の編成や、特殊な装備を活かすための特別編成も考えられます。
スムーズな育成と大軍団の形成

1回の戦闘で最大9人に同時に経験値が入るので、育成はとてもスムーズです。
最終クラスに到達するのも意外にすぐで、自分の場合10章くらいでポツポツ到達し始めるくらいでした。するとまた、育成枠のようなポジションが空くので、新たに雇用、育成、卒業、雇用を繰り返し、気がつけば大軍団へと成長していました。
最終的に、123人から構成される16部隊でラスボスを倒しました。
短期決戦
これだけ大規模だと、戦闘も長引きそうだな、と思う人もいるかもしれませんが、本作の戦闘は非常にスムーズかつスピーディーです。
どんなに長い章でも20ターンを超えることは1度もなかったと記憶してます。最終章ですら10ターンを切るレベルでした。
これは1回の戦闘中に2回行動するユニットがほとんどのためです。攻撃ユニットが9人投入された部隊ならば、18回攻撃が行われることになります。1回の衝突で半壊か全滅、2回目にはほぼ100%全滅というスピード決着が多いです。
そもそも操作するユニットも部隊単位ですし、操作量は少ないタイプのゲームだと思います。
難易度とキャラロストについて

難易度中でプレイしておいてアレですが、難易度としてはそれほど難しくありませんでした。やり直すことは何度かありましたが、それは犠牲を最小限にするためで、これは詰みだ!と感じたことは1度もありませんでした。
本作には、キャラロストあるいはパーマデス(permadeath)と呼ばれる取り返しがつかない喪失要素があります。ただし、厳格ではありません。
まず、ストーリーに絡むようなメインキャラクターたちは死んでも失いません。HPが0になっても次の章には復活しています。
それ以外の名無しの兵たちは死んだままクリアすると失います。しかし、多くのマップに配置されている神殿で復活させることができます。

復活の費用はずっとコスト100でこれは序盤でもかなり安いです。まあ、この神殿がないマップも多いですが…。
終盤は主人公が復活を覚えますし、そもそもクイックセーブ&ロードが優秀なので、失敗したらすぐにやり直せばいいだけです。
そしてロストしたところで、兵はほぼ無限に雇用できて、再度育成し直すのは簡単ですし、育ちきった兵を雇用することもできるので、挽回は比較的容易です。
それでもロストが嫌ならば、設定から永久死亡を有効から無効に切り替えることができます。この設定はシナリオ中のいつでも変更可能です。
感想:部隊編成に大ハマリ
率直な感想を言うと、フツーに大満足な作品でした。
結構プレイしてるな~とは思ってましたが、約50時間弱もプレイしていたことに驚きました。その間、まったく飽きがなかったというと嘘になりますが、ダラダラプレイでも進められる手軽さもあって、気がついたらクリアしていました。
特に没頭した部分は、やはり部隊編成ですね。最適なバランスを目指し、編成だけで30分以上かかることもありました。ただその時間は苦ではなく、いつまで経っても楽しい時間でした。狙い通りに部隊の運用ができたときの喜びは大きく、達成感を感じられました。
終盤はやや部隊編成が固定化され始めて面白みが薄れたようにも感じましたが、全体として、このシステムがあったからこそ完走できたと言い切ることができるほど、自分にとって大ハマリのシステムでした。
ストーリーはダイナミックだけどダイジェスト的

ストーリーはサーガというのにふさわしい壮大なものでしたが、全体的に要所のみを描いたダイジェスト版を見せられているようでした。
これはやはりキャラクターが弱かったからかなと。本作のキャラクターは洋ゲーにしては描かれている方ですが、元ネタであるFEは際立ってキャラゲーなところがあるので、そこと比較して不足を感じてしまいました。
衝撃的な展開もあるにはあるのですが、それに対するキャラクターたちのリアクションや振る舞いが、JRPGに慣れた目には、淡々としすぎているように映りました。
主人公とカタルシス

特に引っかかったのは主人公ですね。最初に性別を選んだりパーソナルな質問に答えたりして、自分の分身のように感じていたのに、ある時点で急激な変化が起こり、まるで別の人間のようになってしまいました。自分と作品を繋ぎ止める絆を喪失したようで、これ以降ストーリーやキャラクターにあまり感情移入できなくなりましたね。
宿敵との対峙も、悲願であるべき対決が、復讐の執念に埋もれた一方的な戦いのように描かれ、満足感に欠けるものとなりました。もっと最終戦らしい大規模な戦いや、一騎打ちのような白黒をはっきりつける展開の方が個人的には良かったですね。なんというか、カタルシスがありませんでした。
とはいえ、ストーリーは全体的な尺からいっても微々たるものですし、これくらいの描かれ方だからこそ、ちょうどいい感じもしました。変に凝って中だるみするより全然マシです。
再三言うように、自分がこのゲームで1番楽しかったのは、進軍前の部隊編成でしたから、その合間に時間がかからないのはむしろありがたかったですね。
演出の作り込みがすごい

ストーリーについてはいろいろと引っかかるところもありましたが、演出や作り込みには正直感心させられました。
おそらくRPGツクール製だと思われますが、もともとある素材だとしても、それを使いこなせるかどうかはまた別のスキルが必要です。すごい!とまではいかないしても、細かいところまでよくできているなぁ!と。探索できるわけでもなく、ただ観るだけのイベントのワンシーンなのに、この作り込みはすごい。こだわりを持って作られていることを感じられ、好意を持てたポイントでした。
スムーズなプレイ

50時間プレイして思ったのは、リスタートが本当に手軽なゲームだなと。そもそも超軽いゲームなので、起動も終了もセーブもロードもノータイム。OPの開発ロゴもスキップできるのはプレイヤーにとってありがたい仕様。戦闘アニメもスピードアップや省略ができるため、システム、演出面で冗長さを感じることがなかったです。
あと、地味にありがたかったのは、戦闘マップで隣接することでイベントが発生する仕組み。本作ではイベント発生後に移動をキャンセルすることができます。FEでは、隣接するだけで行動力を消費してしまったり、わざと敵の中心などに呼び込むギミックがあったりするのですが、そういった煩わしさが取り除かれていて、よりスムーズなプレイを楽しめました。
バランス調整について
章数に対して、ユニットが最高クラスに達するのが早かったです。これは、ロストからのリカバリーを早めるための絶妙なバランス調整だったのでしょうが、ロストしなければ、同じ編成、同じパワーレベルのユニットがずっと維持されることになります。
途中、主要キャラのパワーアップイベントこそありましたが、軍の大部分を占める名無しの兵たちにまったく変化がないというのは面白くありませんでした。
また、その他バランス面でいうと、部隊編成システムによってスキのない構成をつくれるというのも大きいですが、あまりにもスキがなさすぎて、アンチユニットでさえ突破が難しい状況が多かったです。
結局、前衛が受け止めさえすれば、中衛以降はほぼ無傷で乗り越えられるため、前衛はどうして重歩兵安定すぎるんですよね…。
倒れにくいユニットが存在することは戦略的に有益ですが、同時に高い攻撃力も兼ね備えているのが問題で、ガチガチに防御を固めた編成の安定感があまりにも高すぎて、他のユニットの存在意義が薄れてしまっているように感じました。
新たな定番ゲームへ

文句も多い記事になりましたが、これだけ本音を言っても魅力が薄れない貴重な作品ということでもあります。

近々初のDLCも発売される予定で、それの出来や評判によっては続編の可能性も考えられます。低価格で長時間遊べる圧倒的好評の定番ゲームシリーズとして、これから一層注目を集めそうな作品ですね。
コメント