直接的なネタバレはなし。
絶海の孤島×ミステリー
探偵の池田戦と出雲崎ねね子のコンビで、シロナガス島に隠された真実を暴く!
『シロナガス島への帰還(Return to Shironagasu Island)』は、2020年3月にリリースされたHYOGO ONIMUSHI(鬼虫兵庫)制作・企画のビジュアルノベル。
リリース後もSwitch版への移植やフルボイス実装など話題が豊富で、じわりじわりと名をあげてきたタイトルのような印象があります。
注目はその価格。定価500円。セールも頻繁で、つい最近のSteamセールでは200円になってました。
個人的にずっと積んでいたゲームでしたが、未だにプロモーションをがんばる製作者の姿を見たのをきっかけにプレイ開始。
クラシックなビジュアルノベル
ゲームシステムはクラシックなビジュアルノベルにポイント&クリックの要素が少し混じった「読むゲーム」です。
個人的にスクロールで文字送りできるのが嬉しかったです。
ちなみに、2022年12月にフルボイス化されました。声優陣はかなり豪華。
気になる箇所をクリックすることで情報を収集できます。全探索が基本。
推理を求められる場面も。
しっかり読み込んでいれば難易度は高くありませんが、選択を間違えるとゲームオーバーになることもあります。QTE的に瞬時に選択を迫られる場合もあり、それにはセーブする間すら与えられないため、こまめにセーブしておかないとやり直しが面倒です。
本編クリアは6時間弱
インストールサイズは約1.7GB。
音声(フルボイス)はところどころ飛ばして本編クリアまで(TRUE END)6時間弱くらいでした。
本編クリア後にEXTRAという追加シナリオがアンロックされますが、そちらも音声飛ばし飛ばしでサクサク読み進めて全ルート探索に1時間弱といったところでした。
感想:低価格帯なりだが愛のこもった作品
Steamでは「圧倒的好評」のゲームではありますが、個人的にはそこまでかなぁ~というのが正直な感想です。
最終的には、小さな満足感も得られましたが、めちゃくちゃ面白かったわけでもなく、かといってつまらなすぎるということもない、佳作くらいの作品でしたね。
あんまりミステリーじゃなかった
「ビジュアルノベル」「ミステリー」「島」という要素から、クリスティー的な本格ミステリーを期待してゲームを始めました。
なにやら深そうな謎、絶海の孤島、異質な設備、その近辺での事件、生存者同士での協力と対立という定番の流れなど、プレイ開始当初は期待通りの展開でした。
しかし、徐々に「殺人事件」「探偵」といった要素から逸脱した方向に物語は進んでいきました。
詳細はネタバレになるため避けますが、大雑把に言って、ラノベ風の通俗スリラーといった趣で、ミステリー成分が薄まっていった印象です。
予想の斜め上に展開する感じや、クライマックスの熱さは『ひぐらしのなく頃に』みたいでしたね。趣味全開の同人作品という点でも似ているなと。
推理は簡単
トリックも動機も、最初からヒントが露骨で、それでいてミスリードもなかったため、推理はとても簡単でした。
ただそれゆえに一本調子な印象も受けました。推理以外のところでも、全体的にオーソドックスな構造で、既視感のある展開が多く、新鮮さに欠けているように感じられました。もう少し意外性というか、ひねりが欲しかったなと。
キャラクター愛
本編後のEXTRAが顕著ですが、ヒロインを愛でる嗜好が非常に強いですね。
特に本作のアイコンにもなっているメインヒロインねね子は、愛玩系かつ残念系のキャラクターで、隙あらばイジられるというシーンが多いです。本筋とは関係なく、場を和ませるだけのものですが、作者の趣味が表れているなぁと。
ただ、そのイジりを積極的に行うのが、ハードボイルド気取りの探偵主人公というのがなんともミスマッチで、年下相手に強がっている感じがなんかダサかったです。精神的に優位に立っているはずなのに、同じ目線で楽しんでいる感じがあって、ノリノリすぎるというか、はしゃぎすぎというか…。
そんな主人公にエピローグで声がついたのが最大のサプライズでした。いろんな意味でまさかすぎた…。
文章以外のあれこれ
基本システムは古風ですが、演出は相当凝っている方だと思います。
まず、タイトル画面の実写風の海をバックにした演出が雰囲気最高で一発で心を掴まれました。立ち絵はバリエーション豊富で良く見たら瞬きをしているのが良いアクセント。そして何より豪華声優陣によるフルボイスが魅力的。そのフルボイスにも、文章以上の情報やそれを逆手に取ったミスリードが盛り込まれているなど、工夫がありました。
また、時間制限のあるシーンが頻繁にあって、これが面白かったです。文章を読んでいる間にも時間が進行するため、急いで読まなければならず、無駄な情報にイライラしたり、切迫感の増してくるセリフの変化にドキドキしたりと緊張感のあるプレイを楽しめました。
こういうビジュアルノベルって文章のみで成立する都合上、演出は簡略化されがちなジャンルだと思うのですが、それをわざわざ実装するところにこだわりを感じました。
こまめなセーブを忘れずに…
オススメするかしないかの二択なら、オススメです。
やはり、良くも悪くも価格に見合ったクオリティと言えます。500円で楽しめるアトラクションだと思えば、十分に満足できる作品だと思います。Steam評価も「この価格なら満足」という声が反映されているのではないでしょうか。
製作者の熱意はフルプライス以上であり、作品にはかなりの手間と心意気が感じられました。フルボイスにするにも相当な費用がかかったことだろうと思います。こうした同人らしい熱意とこだわりが光る作品でした。
本作はSteamだけでなく、SwitchやCDメディア版も発売されています。詳しくは公式サイトでご確認ください。
これから始めるよ~という人は、とりあえずこまめなセーブを忘れないように…。
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