作品名 | Path of the Abyss |
開発 | Suzuki Suzuzou |
リリース日 | 2023年12月21日 |
ジャンル | DRPG、ダンジョンクロウル、ハクスラ |
価格 | 800円(Steam) |
対応プラットフォーム | PC(Steam) |
日本語対応 | あり |
インストールサイズ | 約1.3GB |
Steam評価 | 非常に好評(94%) |
プレイ時間 | 約21時間(ラスボス撃破まで) |
- Qどんなゲーム?
- A
戦闘スタイルがユニークなDRPG
モノクロのペン画で描かれた独特な質感のビジュアルが特徴的な国産ダンジョン探索RPG。見た目に反して、中身はクラシックなダンジョンRPGの形式を踏襲した硬派なゲーム性となっています。
なお、本作はアーリーアクセス作品で、2024年10月にはクリア後コンテンツが追加されるなど、現在も新要素の追加やバランス調整が続いています。
この記事は2024年11月時点での内容となります!
ゲームの流れ
- 拠点で準備を整える
- アビス(ダンジョン)に出発
- ダンジョンは主観視点で攻略
- 戦闘はほぼオートで進行(後述)
- ほどほどで拠点に帰還
最終的には、すべてのダンジョンを攻略し、最奥のラスボスを倒すのが目的です。
ユニークな隊列&スキルシステム
パーティは4人編成。
隊列(前列・中列・後列)の概念があり、位置によって受けるダメージ頻度が変わります。
本作がユニークなのは、隊列だけでなく、位置ごとに使用スキルをセッティングする必要がある点です。戦闘で使用できるのは隊列パネルにセッティングしたスキルのみ。つまり隊列パネル自体が手札のような存在なのです。
隊列パネルは3×3の9マスで構成されており、実質的に戦闘に持ち込めるスキルは9つまでに限定されます。
- 盾役で前列を固めれば守備は安定するがそれだけ攻め手は減る
- 攻撃重視しすぎるとボス戦など長期戦で苦労する
- 一部スキルはセットするだけで隣接スキルにバフを与える「シナジー効果」が発生
これらを考慮して、自分なりの最適解を見つけていく過程が、シンプルなコマンドバトルが多いDRPGの中でも異色のプレイ感を生み出しています。
戦闘はほぼオート
実際の戦闘風景はこちら↑
プレイヤーはスキルの発動タイミングを管理するだけで、あとは自動で進行します。
- 雑魚戦:スキルを適当にセットして半放置で楽々
- 強敵戦:敵の動きに応じて一時停止を繰り返すマイクロマネジメントが求められる
感覚的には、ターン制コマンドバトルを高速スキップで流している感じ。設定だけして放置。しかし、難易度的に雑魚戦でも油断できない局面が多く、こまめにスペース(一時停止)を押して調整することのほうが多かったです。
戦闘終了後には経験値や装備がドロップ。
装備品は拠点で鑑定する必要がありますが、レアリティや付与効果が豊富で、ハクスラ系ゲームの楽しさをしっかり味わえます。
ハイリスクハイリターンの「マナ汚染」
その他特筆すべきシステムとして、「マナ汚染」というものがあります。
これはアビス(ダンジョン)に潜れば潜るほどキャラクターが汚染されていくというもの。某穴作品と似た感じで、マナ汚染が進むほどにアビスには愛されるけれども人間からは遠ざかる…そんな感じの設定ですかね。
マナ汚染が進むと、ゲーム的にはメリットとデメリットの両方が発生します。
装備ロストは痛手ではあるものの、取り返す方法もあり、個人的にはメリットのほうが大きいと思います。ハクスラゲー的にも楽しくなりますし。
感想:戦闘バランスが素晴らしい
面白かった!
いろいろ要素を詰め込みつつも、どの部分も浅はかさを感じさせず、しっかりと洗練されているのが印象的なゲームでした。
非常にオーソドックスなスタイルということもあり、正直ゲーム体験的には新鮮さは少ないです。しかし、それゆえに奇抜なアイデアに頼らない 「どっしりとしたプレイ感」 を味わえました。これがわずか800円で楽しめるインディー作品というのは驚きですね。
気に入ったポイント
1.隊列パネル編集の奥深さ
個人的には、やはり隊列パネル編集の未知感がプレイしていて最も楽しかったですね。9枠のパネルを編成する作業は、デッキ構築ゲームのコンパクト版のよう。数枚入れ替えるだけで劇的に変化する盤面を眺めるのが、ピーキーでありながら戦略的で、本作ならではの醍醐味を感じられました。
2.絶妙な戦闘バランス
本作の難易度はDRPGの伝統に則った「気持ち難しめ」。雑魚戦でもうっかり死ぬことがあり、終盤では、最初の数戦でパーティ半壊…なんてことも。このジャンルに初めて触れる人は理不尽に感じてしまうかもしれません。
個人的にはこの難易度についてはすごくポジティブに受け止めています。率直に言って、バランス神だなと。初階層初見でのヒリヒリ感と、成長後の無双感が絶妙なラインでコントロールされていて、ソウルライクゲーみたいな、理不尽さもあるけれど納得感のある絶妙なバランスでした。
何よりも壁に当たっても解決策が用意されているのが素晴らしいポイントでした。たとえば、盾役がすぐ倒れるなと思ったら耐性を、敵が硬すぎる場合は攻撃属性の見直しを…といった対策を行うと、たった一手で戦況が劇的に変化します。対策のための選択肢が広く、そして実際正解も多いので、究極的にはそこまで難しいゲームではないです。
戦闘多めのRPGでここまで丁寧に調整されている作品はあんまり見ないですね。地味なところですが、個人的にこのゲームで1番に評価しているポイントです。
3.ハクスラ要素の充実
それと、このゲーム、ちゃんとハクスラしてるのも驚きでした。
そもそも装備品の種類からして多彩。
- 通常装備
- 通常装備に付与効果
- 特定の敵からのみドロップするエピック装備
- 装備強化
- 祝福装備(スキルカスタマイズ)
上でも取り上げた「マナ汚染」によるドロップ上昇効果が凄まじく、アイテム大量、レア大量のフィーバー状態が楽しくて楽しくて仕方ない。
トレハンに没頭していると、気がつけば踏破していた…なんてこともしばしば。拠点に戻ると、今度は鑑定やレベル上げ、スキル取得、隊列の再考とやることが盛りだくさん。次々と目の前に「餌」をぶら下げられるような飽きさせない設計に見事に囚われ、クリアまで一気に駆け抜けてしまいました。
気になったポイント
1.初心者には取っつきにくい
結構人を選ぶゲームだなと。ヘルプは充実しているものの、パーティ編成やステータス配分など、初心者には少し判断が難しい部分があります。また、序盤の戦闘バランスが厳しめで、理不尽に感じる場面もあるでしょう。
2.ユーザビリティが微妙
UIはスタイリッシュですが、長時間プレイするうえで利便性が気になる点がいくつかありました。
まずはマップ。帰還ポイントや重要箇所を自分で記録する必要があり、手間に感じました。帰りたくても帰還ポイントがわからずウロウロすることも序盤に多くありました。また、昨今のゲームに標準的な自動移動機能もないのも残念。
ハクスラ要素が充実している反面、装備情報の見やすさがいまひとつ。
デザインの統一性という観点では素敵だなとは思うけれど、文字の比較という観点ではしんどいです。「良くなる→青色」「悪くなる→赤」といった視覚的サポートや、手数の少ないソート機能があれば、もっと快適だったと思います。
そのため、自分にとって拠点帰還後のアイテム選別は楽しみでもあるのと同時に苦痛の作業でした。選別だけで疲れてしまってゲームを閉じてしまう日もたくさんありました。リズムを著しく落としているポイントだと思うので、もったいないなと感じてしまいますね。
3.隊列パネルの枠数
隊列パネルシステム自体は斬新で面白いし伸びしろを感じますが、やっぱり9枠は少なすぎるなーというのが本音。
4人で9枠ということは、等しく分け合った場合、2,2,2,3という形になります。1人以外大体2枠。つまり戦闘に使えるスキルが2つだけ。防御系やシナジー系に1枠割くと、なんと使えるスキルは1つだけ。成長しているのに…。序盤はともかく、終盤では物寂しさを感じずにはいられなかったです。
もう少し枠を拡張するか、パッシブを別枠で配置できるような調整があれば、戦略の幅が広がったと思います。
総合:丁寧につくられた良作DRPG
全体的に満足いくクオリティで、おすすめするかしないかだと、圧倒的におすすめする気持ちが強いです。ただ人は選ぶかなと。
一言で表すと、質実剛健。
マニア向けな作風ながら、中身はガチ。取っ付きにくさこそあるものの、丁寧に作られていることがわかる良作DRPGでした。
アーリーアクセス段階ですでに完成度が高く、今後のアップデートでさらなる進化が期待できます。
初心者やライトユーザーには敷居が高い部分もありますが、セールなしで800円とロープライス。コスパはめっちゃいいと思います。DRPGやハクスラに興味がある人はぜひー。
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