本家に忠実なローグライクデッキ構築
作品名 | Monster Train(モンスタートレイン) |
開発 | Shiny Shoe |
リリース日 | 2020年5月22日 |
ジャンル | ローグライクデッキ構築 |
価格 | 2,800円(Steam) |
対応プラットフォーム | PC(Steam/Gog) Switch/Xbox モバイル(iOS) |
日本語対応 | なし(日本語化MODはあり) |
インストールサイズ | 約1.11GB |
Steam評価 | 圧倒的に好評(96%) |
プレイ時間 | 約25時間 |
- Qどんなゲーム?
- A
StS風のローグライクデッキ構築! 本家とルールは近いが、値が大きいのと、モンスターを召喚して戦うという点がユニーク!

例によってSlay the Spire(StS)フォロワーのローグライクデッキ構築。
エナジーシステムや毎ターンのリドローといった基本ルールは本家に忠実。
最大の特徴は、モンスター(ユニット)を召喚して戦う点。遊戯王やMTGのように、デッキ内にモンスターカードが含まれており、これらのモンスターを召喚すると、毎ターン固定砲台のように自動で攻撃してくれます。
「即効性が高いスペル」と「バフをかけまくれば無限に強くなれるモンスター」の両輪で、主なダメージソースはモンスター。ただし、序盤や少しダメージが不足する局面では、スペルの火力が頼りになります。

なお、公式では日本語に対応していませんが、Steamの場合、ワークショップからサブスクライブするだけで導入可能な日本語化MODがあります。
サブスクライブしたら、タイトル画面→MODオプション→導入MODをONにするだけで適用完了です。自分の環境では、最初に起動するとすぐに最初の周回が始まってしまったため、その状態で一度メインメニューに戻る必要がありました。
また、追加DLCではクラン(属性)が1つ増えます。必須ではありませんが、価格もお手頃なので、ぜひ。
ルールと進行の流れ

最初は初期デッキと難易度の選択から。
各デッキは「クラン」という区分けをされており、ニュアンスとしては一族や同種族みたいな感じ。
この中から、必ずメイン(プライマリ)とサブデッキの2つを選ぶ必要があります。つまり、本作は2色混合デッキが絶対です。
メインとサブの違いは?

メインデッキで選んだ方は、各クラン固有の主人公的モンスター「チャンピオン」を使うことができます。チャンピオンはプレイ中3回まで固有アップグレードが可能で、デッキの核として機能します。
※各クランごとに2体のチャンピオンが存在し、全6クランで計12体が使用可能です。アップグレードにも分岐があるため、バリエーションは非常に豊かです。
マップ

マップはStS風のすごろく調になっており、2つの分岐が交互に現れるというスタイル。片方の道にショップやイベントマスが同時に配置されているので、複数のマスを比較吟味して右か左かを選択します。
最終的には、最奥のボスを倒すか、条件次第で出現する“心臓(仮称)”を倒すことでクリアとなります。プレイ時間は1周あたり約1時間前後とコンパクト。
戦闘の流れ

手札関係はStSと同様に、毎ターン山札から5枚ずつドローし、カードに記載されたエナジー分を支払って効果を発動。ターン終了時に残った手札はすべて捨て札へと回り、山札が尽きると捨て札から山札を再構築します。
初期手札には必ずチャンピオンとモンスターカード1枚以上が含まれており、チャンピオンはコスト0で出せるため、最初のターンに確実に使用できます。
なお、モンスターカードは1度倒れると廃棄ゾーンへ移され、山札には戻らないため、できるだけ長く生かす工夫が求められます。
ロストではなく、次の戦闘からは通常通り使えます。
敵の侵入とターン進行

戦闘フィールドは4階建ての列車となっており、各戦闘はタワーディフェンス的なウェーブ制で進行します。
敵は最下層から侵入し、1ターンごとに上階へ登っていきます。
1ターンは、「同じ階にいる敵と味方が1回ずつ殴り合うまで」。たったの1回の攻撃なので決着しないことも多く、ちょっと傷付いた敵が上へ進み、ちょっと傷付いた味方が次の敵を待ち構える…といった展開が繰り返されます。
最上階にはパイル(HP)

最上階の4階には「パイル」と呼ばれる列車の心臓部、いわゆるライフが配置されています。
パイルのHPがゼロになるとゲームオーバーとなりますが、パイル自体にも一定の戦闘力が備わっているため、必ずしも4階に敵が侵入されたからといって即敗北というわけではありません。
とはいえ、終盤では飛躍的に敵が強くなるため、基本的には侵入させたらアウト。1~3階で敵を漏れなく迎え撃つ戦略が求められます。
ユニットの収容制限

各階に配置できるユニット数には収容制限があり、召喚できるモンスターの数に上限があります。

ステータスの高いムキムキなモンスターほど多くの容量を必要とするので、容量の軽いサポートモンスターを採用したり、容量を拡大するカードを駆使したりして、最適な配置を考える必要があります。
ボスとの戦闘

ウェーブ最後にはボスが登場します。
ボスとの戦闘では少しルールが異なり、戦闘が1回きりではなく、その階数で決着がつくまで戦闘が繰り返されます。
敵種類 | 戦闘回数 |
---|---|
通常の敵 | 1(生き残った敵は上へ) |
ボス戦 | 1~(どちらかが倒れるまで) |
1ターン1階ということなので、ボスが出現した時点で実質残り3ターン(1~3階)となるわけです。この時間制限がわりとシビアなので、モンスターの配置や強化はできるだけ手早く行う必要があります。
感想:ド派手な数字爆発が楽しい

これはいい作品だぁ。StSフォロワーの作品の中でも、かなり上位クラスの面白さと完成度の高さ。日本語化MODはあるけれど公式では対応していないから無名なのかな?
一言で言えば、シナジー前提のスケーリング特化デッキ構築。
もうとにかく数字を盛って盛って、バフをこれでもかと詰め込むことで、ようやくクリアが見えてくるインフレバトルが醍醐味。
素のカードパワーからして高く、「ダメージ6」のスペルを気軽にカード改造で倍増できたり、素で「ダメージ100」のカードが手に入ったりします。
良かった点
強化がお手軽

初見プレイ時にまず驚いたのが、ショップで「魔力+10」のカード強化を見かけたこと。魔力とはそのままダメージのことで、「攻撃力6」のスペルが、なんと20ゴールドという格安で「攻撃力16」にアップグレードできるのです。
さらに、ショップではスペルのコストを下げたり、ユニットに「2回攻撃」を付与できたり、カード削除やアーティファクト(レリック)の購入も容易に行えます。他の類似作品では考えられないほど手軽に超強化が可能で、敵をワンパンで倒せるカードが次々に手に入ります。「こんな簡単に強くなっていいの?」と逆に引いてしまうほど…。

──じゃあヌルゲーか?
いや、それがかなり難しい…。
強化自体はぶっ壊れ気味ではあるものの、敵のHPのインフレ具合がそれを上回ってくるんですよねー。ボスのHPは進行によっては3000を超えてきます。そんな相手に「攻撃力16」は雀の涙。
──じゃあどうするか?
シナジーでなんとかしよう!
ってのが、本作の味付けですね。
強いカードは簡単に拾える・作れるものの、ボス戦では力不足となるため、シナジーによる工夫が必須となります。
ここで「良いな!」と思うのは、敵の攻撃力がそれほど高くない点。もちろんある程度の注意は必要ですが、比較的穏やかで、あまり防御に意識を割かなくても平気です。
だからやるべきことはとてもシンプルで、ひたすら拡大、それだけ。デッキの安定度や回転率、引き込み率などの細かいコントロール系の構築に頭を悩ませるよりも、シンプルに拡大を追求する──。シミュレーションゲームで、国を発展させる内政ばっかりやるような…そんなプレイ感ですね。
デッキ構築の安定感が高め

マップは2つの分岐を繰り返すスタイルですが、左右両方にショップが配置されることが多く、不要なカードの整理や必要なカードの入手がしやすい設計になっています。さらに、独立したカード削除マスでは1度に2枚の削除が可能なため、何度も利用することで、終点に至る頃には「削除したいカードがもうない」と言えるほど洗練されたデッキを作ることができます。
このように、ギミックを整えやすい土台がしっかりしているため、デッキ構築の安定感が非常に高いのも良い点ですね。
イベントが豊富
イベントマスに限らず、戦闘後のラッキーイベントなど種類が非常に多彩です。続き物の展開が多く、序盤にデメリットカードを抱えておくと後に強力な効果を発揮するケースなど、「結局リスクよりもリターンの方が明らかに優位」な展開が多いのが嬉しいところです。
こうしたデッキ構築系のイベントマスは、選択に迷ってスルーしてしまうことも珍しくないですが、本作では積極的に踏む価値のある、意味のあるランダム要素として機能している点が好きですね。
その他システム周辺の完成度
- UIの使いやすさはトップクラスで、何よりも戦闘プレビューがあるのがありがたいですね。これのおかげで、終盤のインフレにもストレスなくついていけます。
- また、テンポが抜群で、通常プレイでもそこそこ速いのに、さらに3段階の加速モードが用意されているため、1周が約1時間と非常に速いペースでプレイできます。
- 音楽も、ストアで別売りされているだけあって、注目に値するインパクトがあり、戦闘前にBGM名が流れる演出も他作品で真似してほしいほど好きです。
- 難易度のレベリングも申し分なし。プレイ記録のデータが細かく確認できる点も◯。
- 通常の戦闘で「トライアル」オプションがあり、普段の戦闘からメリハリをつけられるのも評価できます。しかもちゃんと報酬がうまい(上画像参照)。
気になった点

ウェーブ制の問題
本作の肝であるウェーブ制は、通常の敵なら「前半の敵を敢えて逃がして後半で迎え撃つ」といった戦略も可能ですが、ボス戦になると状況が大きく変わります。
ボスが出現すると、実質的に残りターンが3ターン(1階につき1ターン)となり、類似作品で見られる「死ななければ負けない」という遅滞戦術が通用しなくなります。さらに、ボス戦ではその階数で決着するまで殴り合いとなるため、モンスターの戦闘頻度が非常に高く、スペルの介入余地が相対的に低くなってしまいます。
攻略がモンスターのスケーリング一辺倒

結果として、スペルによる攻略が難しいので、必然的にモンスターにひたすらバフをかける戦い方が主流になっています。
どのデッキ、どのチャンピオンでもこの戦法が安牌すぎて、結果としてワンパターンな展開になりがちだなと。
実際にスペル寄りのチャンピオンを使ったスペル特化デッキも試してみましたが、かなり綱渡り的な戦い方で安定度は一段落ちるなぁという感触でした。全体的にスペルの威力は高いものの、攻撃頻度の面でモンスターとの差が大きすぎるのが難点なんですよね。まあ、モンスター主体のゲームという性質かもしれませんが、もう少しスペルの活躍の余地が欲しかったと思います。
シナジーがないカードに価値なし

複数カードの組み合わせが前提となっているため、他カードとのシナジーが発揮できないカードは価値が低くなりがちです。
特に、0コストなどのコスパ重視カードは、序盤では縁の下の力持ちとしての役割はあるものの、後半になると存在感が薄れ、戦闘全体でのインパクトが小さくなってしまいます。やはり有限ターンの影響が大きく、「ちょっとアド」程度じゃ間に合わないんですよね。
チャンピオンの性能差

初期デッキで使えるチャンピオン間の性能差が大きいのも気になる点です。
ステータスが高いチャンピオンはそのままスケーリングの核として使える一方、サポート系チャンピオンの場合は別途強力なモンスターで補完する必要があるため、ピック運に左右されやすいです。
また、サポート系のチャンピオンは低HPであることが多く、スパイク(反射)や薙ぎ払い(全体攻撃)といった、低HPに刺さる敵特性が多いのも辛いところ…。
プレイングで差がつきにくい
難易度調整において、「一手で勝つ・負ける」というギリギリの調整ではなく、「このラインを超えるか否か」という足切りテストのような調整となっており、これが良くも悪くもという感じ。
究極的には「デッキのポテンシャルゲー」で、デッキの出来不出来で結果が決まってしまうので、戦闘中のプレイング上達の楽しみや実感にやや欠けます。デッキ構築に比べたら実際の戦闘は確認作業のよう。
総評:さすがは圧倒的好評…。

強いカードや強力なギミックを手軽に作れる一方、敵もそれに応じてインフレしていく、まさに少年バトル漫画のようなインフレっぷりが楽しいゲームでした。倍掛け倍掛けでどんどん数字を膨らませていくことにロマンを感じる人に特にオススメです。
大味な作りながらも、その手順は意外と繊細で、デッキを最適化していく面白みもあります。UI、音楽、戦闘プレビューなど細部にわたる作り込みも素晴らしく、全体として完成度の非常に高い作品という印象でした。StSフォロワーの中でも上位クラスの出来栄えだと思います。
そろそろ続編も出るようで、そちらも大いに期待ですね。日本語があればいいけど…。
コメント