作品名 | Chants of Sennaar(チャンツオブセナール) |
開発 | Rundisc(フランス) |
リリース日 | 2023年9月6日 |
ジャンル | アドベンチャー、パズル |
価格 | 2,480円(Steam) |
対応プラットフォーム | PC(Steam、Windows) PlayStation4&5/Xbox OneXS |
日本語対応 | あり |
インストールサイズ | 約613.56MB |
Steam評価 | 圧倒的に好評(98%) |
プレイ時間 | 約14時間 |
- Qどんなゲーム?
- A
未知の言語を解読していくパズルアドベンチャー
ストーリー:言葉がバラバラになってしまったバベルの塔
舞台は「バベルの塔」をモチーフにした巨大な塔。ここには同じルーツを持ちながらも異なる言語を話す人々が層ごとに暮らしています。彼らの間に存在する言語の壁を乗り越え、分断された人々の調和を取り戻すことが主人公の使命です。
ゲームシステム
ポイント&クリック型の探索アドベンチャーで、マウスだけでプレイできます。最大の特徴は、人々の会話や壁画に記された文字を観察し、未知の言語を解読することにあります。最初は全く意味がわからない言葉も、状況や繰り返し現れるパターンから少しずつ意味を推測できるようになっていきます。
最初は仮の意味をノートに記録しながらニュアンスを掴むことから始めます。
そして、ある程度の文字数が揃うとノートに描かれた絵と文字を対応させて正しい意味を確定させる「答え合わせ」ができるようになります。答え合わせは見開きページ全ての正解が必要ですが、問題数は3~4個程度と少なめ。いくつか分かれば残りは総当たりでも解けるため、徐々に推測が進みやすくなります。
全て総当たりも可能っちゃ可能。
言語解読の進展とともに、知らない単語の特徴も絞り込みやすくなり、体系的な理解へと繋がります。この観察→推測→確定のプロセスを繰り返し、言語を解き明かすことがゲームのメインとなっています。
また、ゲーム中にはステルスアクションや謎解きパートも登場します。ステルス要素はミニゲーム的で進行の妨げにはなりにくいですが、謎解きは凝ったものが多いです。
プレイ時間と難易度
クリア時間は約14時間でした。途中、長時間考えてもわからなかった箇所では攻略サイトを利用したので、完全な自力ではなく、個人的にはかなり駆け足進行でした。攻略を見ずにじっくりプレイしていたら、さらに数時間はかかっていただろうと思います。
難易度は全体的に高めです。理不尽とまでは言いませんが、全体的に導線が不親切で、ヒントが少ない謎解きが多い印象でした。詳しくは後述。
感想:想像以上にマニアック
プレイ前は「おれ、おまえ、好き」くらいの単語を組み合わせただけのライトなゲームだと思っていました。しかし、実際には否定文や疑問文といった文法レベルまで掘り下げる必要がある、かなりマニアックな言語解読ゲームでした。普段ゲームで使わない脳の部位をフル回転させたせいか、プレイ中の疲労感は大きかったですが、それ以上にやりがいも大きく、大変だったものの、プレイして良かったと心から思えます。
架空言語の作り込みがすごい
やはり驚かされたのは、架空言語の作り込みの細やかさです。ひと目でわかる統一感のあるデザインはもちろん、同系統の単語が似たデザインをしていたり、意味が遠い単語にも共通点が見つかる仕掛けがあったりして、その背後にあるルーツを感じさせます。本当に実在する言語を研究しているようで、非常に興味深い体験でした。
さらに、登場する言語は複数あり、それぞれ異なる文法が用意されている点にも驚きました。これらの言語には、それぞれの文化圏の特徴がしっかり反映されており、振る舞いや言葉遣いにも文化の個性が表れているのがすごいな~と。
とにかく言語と格闘するゲームで、ずーっと資料を見ていたこともあり、↑の画像も、スクリーンショットを撮った当時はわけがわからなすぎて記録した1枚ですが、今となっては資料を見ずとも意味を理解できます。ここまでくると、もはや学習ですね。
グラフィックとサウンド
それとプレイ中に意外な驚きだったのが、グラフィックやサウンドのクオリティです。グラフィックはシンプルながら洗練されており、文化圏ごとに色彩や雰囲気ががらりと変わるため、新しいエリアに踏み入るたびに新鮮さがありました。
カメラワークにも工夫があり、一部屋進むたびに位置が変化し、建物全体を引きの視点で映してその大きさを強調したり、手前に人や物を配置して遠近感を演出したりと、空間の広がりを描写画面以上に感じました。
サウンド面では、「文化」を感じられるBGMが印象に残ってます。静かな環境では無音になって緊張感を演出したり、壮大な背景のシーンでは迫力あるBGMが流れたりと、流れるシーンやタイミングも絶妙でした。
ポジティブストーリー
ストーリーは、主人公が塔の1層から登っていく過程で、現地の人々の悩みや偏見、そして強みを観察しながら、最終的に調和の架け橋となるというシンプルな構造です。ドラマチックな展開は少ないものの、人々の生々しい反応が見どころでした。
最終的にはポジティブに終わり、最後のイベントシーンでは、勢いが面白かったのと、純粋にすごいなという気持ちでつい笑ってしまいました。前向きに終わる展開っていいよね!
難しさと人を選ぶ要素
大絶賛の多いタイトルで、自分もそのユニークさに虜になったクチなのですが、万人受けとは言い難く、かなり人を選ぶゲームだなと感じました。その理由はシンプルに難しすぎるから。
本作の進行速度は言語解読の進捗に依存しています。解読が進むほどスムーズになりますが(単語数に限りがあるため)、序盤は手がかりが少なく、広いマップを探索しながら少しずつ情報を集める必要があります。問題は、この過程の誘導がやや不親切な点です。
まずマップが広すぎます。にもかかわらず移動速度が遅く、マップ機能もないため、隅々まで探索するのに余計な時間がかかります。攻略は層ごとに進めるのですが、その層のあらゆる場所に移動でき、そのどこかに解くべき扉が隠れているという構造になっています。つまり攻略自体は順序があるのに、一度全部見て回る必要があるのです。
全部見て回ると、探索中に手に入れた手がかりが膨大になり、その分だけ答えを絞るのが大変になるし、またはその逆に手がかりが見つからない場合、再度広いマップを隅々まで見て回ることにもなります。とにかくゲーム中の印象は「歩いて、迷って、歩いて」って感じでした。
次に、答え合わせの絵がわかりにくい点。ある程度文字を集めると、ノートに絵が現れ、それに対応する文字を当てはめることで正しい意味を確定できます。しかし、この絵があまり直接的ではなくわかりにくいものが多かったです。「好き」「美しい」「存在動詞」といった抽象的概念は特に。
とはいえ、結局のところ、広いマップやわかりにくい絵が問題ではなく、それを補うヒントが少ないことが最大の残念ポイントですね。マップの広さや絵の曖昧さを補うようなヒントがあれば、もう少し快適にプレイできたかもしれません。
個人的にはこれまでプレイしてきたパズルゲーの中でも上位に入る難しさで、2層あたりで難しすぎてやめようかなと心が折れかけるほどでした。振り返ってみると、まさにこの2,3層目がピークでしたね。2層を突破した時は半分も言語を理解してなかったと思います。3層ではさらに苦戦し、4層目から少し楽に、5層目でほぼ全解放…って流れでした。
ちなみに、他の人のレビューでは、アクションやステルス要素がいらないという声もありましたが、個人的にはストレスに感じるほどには障壁にはならなかったので、特に気になりませんでした。まあ、あってもなくても。
総評:完成度は高いけど、難易度には覚悟必要
非常に完成度の高い作品で、いろいろ気になった点もありましたが、トータルでは、ユニークなゲーム性と希少な体験という面で、ポジティブ要素が大きく上回ったかなという印象です。世界観の作り込みが素晴らしいし、クリア後の爽快感も格別。ただ、攻略サイトに頼る場面が多く、パズル部分では少し敗北感もありますが。
かなりオススメできる作品ではありますが、手癖でサクサク解けるタイプのゲームではないので、その点で覚悟が必要です。サクッとクリアできると思って軽い気持ちでプレイすると面を食らうかも。
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