【感想】響け!ユーフォニアム第3期良かったね~

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制作決定から5年…

3期制作発表から5年、2期の終了から数えると8年ぶりの新作TVシリーズ。

ちなみに、TVシリーズとしては第3期ですが、その間に新作劇場版がいくつか公開されています。まだご覧になっていない方は、そちらを先に観ることをおすすめします。

特に、1つ下の後輩が入部する久美子2年生編『誓いのフィナーレ』、3期直前に公開された短編『アンサンブルコンテスト』に登場するキャラクターは、今季でかなり重要な役割を果たしています。また、劇場版の内容を振り返るようなカットも多く含まれており、シリーズ集大成という意味でも劇場版をまず観ていただきたいです。

2013年12月『響け!ユーフォニアム』(原作小説)
2015年4月『響け!ユーフォニアム』(TVシリーズ第1期)
2016年4月『劇場版 響け!ユーフォニアム〜北宇治高校吹奏楽部へようこそ〜』(劇場版第1作)
2016年10月『響け!ユーフォニアム2』(TVシリーズ第2期)
2017年9月『劇場版 響け!ユーフォニアム〜届けたいメロディ〜』(劇場版第2作)
2018年4月『リズと青い鳥』(劇場版スピンオフ)
2019年4月『劇場版 響け!ユーフォニアム〜誓いのフィナーレ〜』(劇場版第3作)
2023年8月『特別編 響け!ユーフォニアム〜アンサンブルコンテスト〜』(劇場版第4作)
2024年4月『響け!ユーフォニアム3』(TVシリーズ第3期)

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緊張感に耐えきれず原作を読む

毎回のこととはいえ、今回は久美子世代最後の年ということで、いつも以上にピリピリした雰囲気でしたね。

序盤で特に印象に残っているのは新入生入部のイベントです。これまでのシリーズでは、新入生入部といえば、いかにもアニメのコメディ的な、非常に平和的なイベントでした。今回も表向きはそうでしたが、裏では人数のカウントや初心者の扱いについて語り合うなど、現実的な部内運営の話がされていて、初っ端からシリアスだなと感じました。

で、真由が入部してあーだーこーだとシリアスさが加速していくのですが、6話くらいで精神的に耐えられなくなり、原作を買って読んでしまいました。

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原作を読んで気付いた構成の巧みさ

その原作もアニメ同様にしんどい展開が続き、なかなか読み進めるのが大変でしたが、久美子の迷いが消えてから一気に反転し、そのまま終わりまで一気に読み切ったのを覚えています。終盤の方はずっと泣いてたかな。感動したし、ホッとしたし、大満足の内容でした。

原作を読んで良かったのは、単に物語の結末を知るだけでなく、アニメとの違いを比較して楽しめることです。話題となった12話を除いても、細かい部分でかなり違いがありました。

まず挙げるなら、求と緑のエピソード。原作では関西大会前の合宿で進展する話でしたが、アニメでは4話という早い段階で決着しました。久美子と真由のエピソードと重なっていましたから、どちらも際立たせるという意味でも、わざわざ抽出して単独回をつくったのはなかなかの英断だったと思います。

それだけでなく、2人の関係が進展する合宿のイベントが残されていたのも良かったですね。原作では2人の密談の具体的な内容はぼやかされていましたが、アニメでは4話で身の上話が済んでいる以上、残るは…といったところで、なかなかロマンチックな含ませ方がたまらなかったです。最終話の関わり方から察するに、少なくとも恋人ではないけれど、かなり距離の近い関係になったのは確かなようです。

あと、構成でいえば、全体的にフリが非常にわかりやすくなっていました。たとえば、オーディション前に低音が増えそうという話題が出たり、頑なに名前呼びしない奏の真由に対する態度だったり、意味深な描写が無駄なく描かれていました。

これはやはり、前後編の2冊からなる長尺の原作をわずか13話に落とし込む過程で、いくらか効率的にならざるを得ない事情があったのでしょう。しかし、それがかえって、短い描写に多くの情報を詰め込むテクニックが駆使されることにつながり、より濃密でハイレベルな脚本に仕上がる結果をもたらしたと思います。

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真由救済エンド

とまあこんな感じに脚本に大いに感心していたこともあり、12話の改変についても個人的には好意的に捉えています。原作者の方も「原作は原作、アニメはアニメ」と言っていますし、1つの統一された作品というより姉妹作のような感覚ですかね自分は。もちろん、不満の表明も自由ですから、展開を受け入れられないならファンではないと断罪することもありません。

なにはともあれ、元凶は真由ですよ。

もともとどんな存在だったのかと言うと、シリーズ最後に何を描くかとなったときに、久美子の成長した様子を描くことがベストだと思われて用意されたキャラクターだったと思うんです。言い方悪いですが舞台装置的な。ライバルのようで、鏡のようで、久美子が乗り越えるべき最終関門。

奏曰く、くらげ。無色透明で何にも染まらず、ふらふらと漂いながらたまに刺すこともある。

原作では、久美子の向き合い方だけが変化し、2人の仲が特別進展することなく終わりました。不和を起こしたくない・執着がないという本人の特性はそういうものとして割り切られた感じで、あまり深堀りされなかったんですね。久美子は成長したものの、真由はあれで良かったのかというのが、原作を読み終えた際の唯一の心残りでした。

アニメはその原作で消化不足だった部分を見事に補完してくれました。

真由についてアニメ独自に描かれたことは3つ。

  • 友人関係
  • 過去
  • 本心

つばめは「アンサンブルコンテスト」でフォーカスされた久美子世代のパーカッション。

1.友人関係:毎年のように転校。当たり障りない人柄だけれども表面的。久美子ともそんなに仲良くなることはないという設定は引き継ぎつつも、釜屋つばめとの深い関係がアニメオリジナルで描かれました。たしか原作では2人の仲はサラッと触れられただけだったはず。

そもそもの原因は真由の隙を見せない人物像にあったと思います。よくわからない能力高い人間が邪推されるのは古今東西よくある話です。弱みがない完璧超人が一方的に久美子を煽っているように見えても仕方ないでしょう。ぽっと出の新キャラが我らが久美子様を煽るなんて!反感も大いに理解できます。

そこで、アニメではつばめという距離の近い友達に繰り返し慰められるシーンが追加されました。これにより、間接的に真由の弱みが浮き彫りになり、人物描写に奥行きが増したように感じられました。

久美子派の無言のプレッシャーがある環境下でも安定を保っていられたのは、そばに理解者がいたからだったんですねー。この部分は文句なしで良改変ですね。しかもそれが「アンコン」でフォーカスされたばかりのキャラクターというのが、作品間のつながりや流れを意識させられて良い配役でした。「アンコン」もやった価値も上がりました。今思うと、妹関係の絡みもつばめの実直さを描くための伏線だったのかもしれませんね。

2.真由の過去:最終オーディション前に腹を割って話すことができた久美子と真由。そこで明かされた真由の過去。中学時代の久美子や奏のようにオーディションで嫌なことがあったから、気を使っているのだという。(ユーフォって治安悪くない?)

3.真由の本心:オーディションで揉めるのが嫌だったら手を抜けばいい。でもそれはしないということは、真由の中にも妥協したくないラインがあるということ。まさにこの部分が真由の難しいところ。言葉と行動の矛盾。

久美子が言うには、それは真由のわがままだという。このやり取り既視感あるな~と思ったら、あすか先輩にも似たようなこと言っていたね。あのときは、あすかの中に眠るわがままを呼び起こしたわけだけど、今回も心の奥底のわがままを言い当てるという意味では一緒。もしかしたら真由自身もユーフォに対する強いこだわりに自覚がないままだったのかも。

今にも世界が滅びんとする勢いのシリアスさなのに、その状況を紐解くのは論理的な説得ではなく、子供っぽい暴論。あすかが言っていた「久美子が言っていたことは今でも正しいとは思っていない」ってセリフが、めっちゃ「響け!」っぽいし、音楽とも通じるよな~と。理屈じゃねーんだぞと。

いずれにせよ、久美子の助言で迷いが吹っ切れた真由は渾身の演奏で拮抗していた実力をぶっちぎることに…。となると、あのオーディション結果は甚だ妥当かなと。

というか個人的には、原作でもこの展開のほうが自然かなぁと思っていました。「成長」「将来」を意識させるテーマなら、困難に打ち克つ姿を見せた方が頑強さが映えて良いですし。アニメでは結果を受けてすぐ部員をまとめあげる姿が描かれていましたが、まさにあれこそが北宇治3年で成長した久美子の強さかなと思います。

昨今は原作改変にセンシティブな時代で、正直言うと自分もリアルタイムではわりと呆然とした方です。それでもそれまでに見せられた構成の巧みさだったり、原作補完の意味だったりを考えてみると、真由の救済が描かれたことは大変意義のあることだったと思っています。

原作で不足だった部分をアニメが補完し、アニメで不足だった部分を原作が補完する、ちょうどいい補完関係にあるのではないでしょうか。真由の涙が見られたこと、そしてそれに共感できることが何よりも嬉しいです。

その他キャラについて

奏の存在感でかすぎ!

「誓いのフィナーレ」だけのキャラだと思っていたら、仲良し4人組に匹敵するレギュラー級の存在に。すまし顔で腹黒…って設定だけれども、誰よりも表情豊かでそのギャップがたまらない。笑ったり泣いたり、特に最後の演奏を見守る真剣な表情はシリーズ全キャラ全シーンでベスト!

本作の久美子が比較的安定していたのは、隣で久美子の本心を代弁して支えてくれる後輩がいたからですね。

心を許した相手にしか名前呼びをせず、真由のことは一貫して黒江先輩呼び。対立していた夏希が来たときは、噛みつきつつもちゃんと名前呼びをしていたのが可愛い。面と向かって認めるようなことはなくとも、最後の最後で真由と一緒に写る1枚があり、それでいろいろ解消されたと信じたい…。

次世代の北宇治

北宇治の次世代のニューヒロインにスポットが当たったのが嬉しかったですね。

まずは2年の小日向夢。あの麗奈に一目置かれる激戦区トランペットの次期エース候補。これまではチラッと映るのみでしたが、今回ようやく初絡み。トランペットなのに控えめそうな性格。もっと深堀りが欲しいね!

新入生では個別回まで作られたクラリネット奏者サリーと、その練習に付き合い未経験でレギュラーを勝ち取ったすずめがこの世代の中心になっていきそうですね。

そして、個人的に1番注目していたのが、唯一の新ユーフォ針谷佳穂。あのあすかのユーフォを引き継いでいて、なんだか重要な立ち回りをしていきそうな雰囲気。端折られていたけど真由をカメラに写したのも彼女の手柄。そういう問題解決精神がすでにユーフォ気質。それと笑い上戸という設定があり、本編中では単にツボが浅い人という印象でしたが、最終話の結果発表後の泣き笑いが、いかにも笑い上戸の人って感じで愉快で非常に良かった!

アニメーション/演出/曲

本作始まる前の懸念としては、やはり京アニのクオリティ問題がありました。第3期直前の短編映画「アンサンブルコンテスト」は正直なところ、ガワはいいけど動きに欠けているように思え、何よりも本番での演奏シーンがないことが個人的に不満かつ不安になるポイントでした。

それで言うと、本作でも演奏シーンは期待には満たなかったですね。尺的に仕方ないとはいえ、全体を通して音が響かないのが物寂しく、コンクール演奏もほぼ全カット。ようやっと聴けた最終話の自由曲もアニメーション的には迫力不足でした。運指描写すげー!カットイン泣ける!とかそんな気分になりたかったですね…。

まあでも泣いたけどね、うん。曲に合わせて流れる回想シーンは単に時系列で並べられているのではなく、久美子の感情にリンクしているのがわかる絶妙な配置。ユーフォソロでは悲しい思い出が次々に浮かんできて、あぁやはりと…。そしてなんだかんだユーフォの思い出が多く、腕に抱えるユーフォが急に主役面を。これからユーフォ見ただけで泣ける人生になったらどうしよう。

アニメ的なことで言えば、光と影の演出が印象的でしたね! 煮えきらない展開が続く中で、演出の力で見せ場をうまく作り出す感じがありました。放送後に上がるメイキング動画も毎週の楽しみでした。

キャラデザはこれまでの面影を継承しつつも意識的に大人っぽいフォルムにしたんだそうな。身長も伸びたように見えました。まったく違和感なく受け入れられたし、過去作と比較することで、それぞれの持つ「子供っぽさ」や「大人っぽさ」が際立つ見事なデザインだったと思います。

それとやはり今季はセルフオマージュが盛り沢山でした。

  • OPの久美子の目ズーム
  • 新入生歓迎(あすか→秀一)
  • うまくなりたいダッシュ
  • 公開ソロオーディション
  • 結果発表後の呆然とした麗奈

自分が発見したのはこれくらい。探せばもっと見つかるかもしれません。これらは原作で特に強調されていたことではなかったので、アニメ製作陣が意識的に取り入れた試みです。やはりこれは過去作へのリスペクトを強く打ち出すというのが、1つのコンセプトしてあったのだろうな~と。単に過去作をなぞるだけでなく、ブラッシュアップされているのが素敵でした。

曲も良かったな~。

OPは「後悔も喜びも…」の部分で若干あやしい雰囲気を感じ取った人も多いはず。アンコン含めてTRUEさんの声はめっちゃ印象に残る…。

EDはいつもの4人組。けどいつもとは違った雰囲気で、すべてが収束して放出されるような、集大成といった感じのサビが印象的。初めて聴いたときは曲の素晴らしさよりも、あぁこれでシリーズ終焉か~という感慨のほうが大きかったです。

演奏曲でまともに演奏されたのは一年ひととせの詩くらいだったかな。フレーズは良いけれど、思っていたよりおとなしい曲。素人的にも低音が増しているように感じた。気の所為だったらごめん。

次の曲を頼む!

不満点:もうちょっと尺を割いて描いて欲しかったな~というのはありますね。よくぞここまで盛り込んだ!とは思いますが、あのシーンがあったら…ってのはいくつかあります。

たとえば、久美子が将来を決めた瞬間の描写。原作ではポロッと本音がこぼれる久美子らしい発表の仕方で、その心情の流れや説明もわかりやすかったですが、アニメでは省略されていました。一歩前に出て演説するシーンが繰り返し描かれており、とてもいい伏線だなと思いながら見ていたので、その部分の伏線回収がなかったのが惜しい!

それと原作ファン的には秀一とのことも描いて欲しかった!最後のヘアピンは原作勢だけがわかるアイコンでアニメのみの人には理解しにくい描写。最終話で、全国大会直前の雰囲気、会場準備、演奏、結果発表、久美子の将来といろいろ詰め込むにはTVアニメ1話は窮屈すぎたかな?

大丈夫、劇場版で改善しよう。これまで通り総集編映画あってくれ~~!! スピンオフ含め原作弾はまだある。新規でもいいぞ~~。終わらないでくれ~~。

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