作品名 | 善人シボウデス |
開発 | スパイク・チュンソフト |
リリース日 | 2012年2月16日(DS版) 2017年3月25日(PC版) |
ジャンル | ビジュアルノベル、アドベンチャー、脱出ゲーム、パズル |
価格 | 3,190円(Steam) |
対応プラットフォーム | 3DS/PS Vita/PS4/XB1/XSS/XSX/PC |
日本語対応 | あり(フルボイス) |
インストールサイズ | 約6.96GB(2本セット) |
Steam評価 | 非常に好評(93%) |
プレイ時間 | 約28時間 |
『9時間9人の扉』に次ぐ極限脱出シリーズの第2作目。
Steamでは、前作とセットになった『Zero Escape: The Nonary Games(ダブルパック)』として販売されています。
- Qどんなゲーム?
- A
ビジュアルノベル+脱出ゲーム
ゲーム内容は前作とは大きくは変わらず、主に文章を読み進めつつ、合間に脱出ゲーム(パズル)をプレイする構成。
今回も謎の空間に閉じ込められた複数人がデスゲームに巻き込まれる展開で、その名も「アンビデックスゲーム」。これは前作で行われたノナリーゲームの別エディションとされ、「協力」か「裏切り」を選択する囚人のジレンマをベースにしています。協力するふりをした相手に裏切られたり、逆に自分が裏切って相手を出し抜いたりと、ギスギスした緊張感は前作以上かもしれません。
また、本作からグラフィックが3D表示になり、動きのある演出や立体感を用いたギミックなどが増えました。ただ正直なところ、携帯機クオリティのため粗さも目立ち、個人的には3D化にそれほど魅力を感じませんでした。
- Q前作をプレイするべきか?
- A
当然そのほうがいいが、パスもできる
前作『9時間9人9の扉』の明確な続編であるため、前作を知っているとより深く楽しめます。とはいえ、新規プレイヤーでも理解できるような説明があるので、未プレイでも問題なくストーリーを追うことができます。
そもそもダブルパックで販売されていますし、あえて1をスキップしてプレイする人はいないと思いますが…。
感想:疲れた…
前作は10時間程度で駆け抜けましたが、本作は約30時間とボリュームが3倍に。長かったな~というのが本音。それだけ語りたくなる点も色々。
びっくりするくらい前作の不満を解消
プレイを始めてすぐに気づいたこと…前作のフィードバックが反映されている!
- 主観視点のままの移動シーンは没入感があっていいなぁ→本作でも引き継がれて一安心
- 脱出パートで「ゲーム外でメモ必要なギミックやめろ(本音:難しいのはやめてくれ…)」→ゲーム内メモ機能が追加され、複雑な仕掛けにもゲーム画面内で対応できるように。これで複雑さを言い訳にできない!
- パズルの難易度が低すぎる→しっかり難易度アップ(後述)
- ストーリー終盤で主人公との距離を感じる→主人公のボイスがなくなり自己投影しやすくなったうえ、性格的も前作ほど先走らなくなったので、最後まで感情移入できる。
前作の感想記事で触れたポイントが、ここまでピンポイントで反映されているとは!
パズル難易度上昇
前作では特に詰まることなくサクサクと解けた脱出パートですが、本作ではかなり苦労しました。
やはりメモ機能が追加されたことが大きく、メモ前提の工程の多いパズルが増えたかなと。暗号変換から計算まで…とにかく書いて書いて書きまくりました。たとえるなら、3桁の掛け算。解き方がわかっても、すぐには答えは出ないよねって、そんな感じのが多かったです。
前作の謎解きは、簡単すぎるところがあったとはいえ、閃きをすぐに結果に結びつけられる爽快感がありました。しかし、本作では「わかった!」となってからも変換作業が必要で、しかもその導き出した答えも不作為な文字列であることが多く、「本当にこれで合っているのか?」と不安になることも。やりごたえはあるけれど、閃きがダイレクトに評価される感覚がなく、爽快感は控えめでした。
一方で、ヒント機能は前作以上に充実しており、パスワードが必要な場面では解法どころか答えを直接教えてくれることも。自分も何度か助けられました。ちなみに、ノーヒントで部屋をクリアすると裏設定などを知ることができるTIPSが解放され、こちらはクリア上必須ではありませんが、ちょっとした小ネタの深堀りを楽しむことができます。パズルが得意な人はボーナス情報を得られ、苦手な人には丁寧なヒント機能という、誰でも自分のペースで楽しめる両対応のシステムは素晴らしいと思います。
良くなかった点:似た展開が多い
本作も選択によってルートが分岐するマルチエンディング方式ですが、各ルートに独自の展開が少なく、似たような進行が続くためにどうしても中だるみを感じます。
最大の問題は固定イベントの分量が多すぎること! 同じイベントが異なるキャラクターで何度も繰り返されるため、「またこれか…」という既視感がひどかったです。固定イベントそのものは悪くないのですが、各ルートの独自性が薄いため、進展が感じられず、具の少ないホットドッグを食べ続けているような気分でした。
ただでさえ謎解きの負荷が上がっているのに、ようやっと抜けた先で同じ展開が繰り返されるのは、つまらないを通り越して苦痛でした。
ストーリーについて
じゃあストーリーはダメダメだったのかというと、そんなことはなく……。
メインストーリーの題材は、前作の「形態形成場仮説(テレパシーの話)」を、シュレディンガーの猫のネタで発展させたよくあるSF設定。ポイントは前作とのつながりがどこにあるのかという点で、正統な続編というよりも、前作の世界観をベースにした新しい展開という感じでした。
個人的には世界観についていけない部分もありましたが、最終盤の伏線回収は推理小説の解決編のような緻密さと意外性があり、思わず感心するほどのクオリティ。
また、各キャラクターそれぞれのバックボーンエピソードが丁寧に描かれている点も良かったですね。こうしたデスゲーム系の作品では、黒幕が参加者の中に潜んでいることが多く、だからこそキャラクターの背景を深堀りしたエピソードは、ドラマ的にもミステリー的にも重要になります。全体の分量からするとわずかでしかありませんが、前作以上に人間的な温かみがあって、結構引き込まれるものがありました。
特にお気に入りは天明寺とクォークのエピソード。葛藤を抱えた2人が支え合う姿が尊い…。
総評:前作以上のパズルを求める人にはおすすめ
パズルの手応えや、バックボーンエピソード、そして終盤の怒涛の伏線回収など、目を見張る場面が随所にあるのは確か。
しかし、ルート分岐にあまり変化がなく、展開が長引くことでテンポの悪さが際立ち、同じシーンが何度も繰り返されることには正直辛さを感じました。このストレスと面白さのつりあいが、自分にはちょっと合いませんでした。
それでも、前作の続きが気になる人や、より難度の高いパズルを求める人はプレイしてみる価値があると思います。少々の忍耐は求められますが、じっくりと考えながら解き進める楽しさと、予想を裏切る方向へ展開するストーリーは独特のものがあるかと!
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