シリーズ初プレイ!
なぜシリーズ化されたのか、その魅力がよく分かりました。そして同時に続編が途絶えた理由もなんとなく…。
- Qどんなゲーム?
- A
指揮官の視点で部隊を動かすシミュレーションRPGと、自らエイムして敵と交戦するTPS要素を融合させた独自のBLiTZ(ブリッツ)システムが特徴の戦記物JRPGシリーズの4作目
Steamでは「4」のみ

作品名 | 戦場のヴァルキュリア4 コンプリートエディション |
開発 | SEGA |
リリース日 | 2018年3月21日(PS4) 2018年9月25日(Steam) |
ジャンル | SRPG、JRPG、TPS、ストラテジー、ミリタリー |
価格 | 4,455円(Steam) |
対応プラットフォーム | PC(Steam) PS4 Switch Xbox One |
日本語対応 | あり |
インストールサイズ | 約34GB |
Steam評価 | 非常に好評(87%) |
プレイ時間 | 約50時間~ |
「4」とあるようにシリーズ物。シリーズ1作目(無印版)は2008年3月にPS3向けにリリースされ、漫画化やアニメ化もされたメディアミックス作品として話題を呼びました。

2025年現在、その無印版は『Valkyria Chronicles』としてSteamストア上で販売されているものの、残念ながら日本国内からは購入できないようです。そのため、Steamでヴァルキュリアシリーズを遊びたい場合、現時点では今回取り上げる『戦場のヴァルキュリア4 コンプリートエディション』一択となっています。
全部入りの完全版:
なお、本作は「コンプリート・エディション」の名のとおり、これまでに配信されたすべてのDLCをセットにした完全版です。Steamセール最安値で891円ほどで買えるので、DLC単品で1,000円前後だった当時と比べると非常にお得に入手できます。(参照:SteamDB)
ざっくりとしたストーリー:
舞台は1935年──しかし実際の歴史や気候とは異なる、架空のヨーロッパ大陸。ここでは「連邦」と「帝国」という二大勢力が激突し、主人公が属する連邦軍は押し込まれた状況。そんな中、敵の首都を目指す反攻作戦「ノーザンクロス作戦」が発動され、主人公が指揮するE小隊はその尖兵として前線で戦うことに……。
モデルとなっているのは明らかに独ソ戦で、防寒服に身を包む兵士たちの姿にもその面影が見て取れます。やがて戦場には新兵器が続々と投入され、禁忌に触れるような技術も現れるなど、JRPG風に描かれる戦記物といった趣です。
戦闘システム(Blitzシステム)
本作最大の特徴は、そのユニークな戦闘システムにあります。
ターン制シミュレーション(コマンドモード)とTPSアクション(アクションモード)を組み合わせた、その名も「Blits(ブリッツ)システム」。

コマンドモードは戦況図を眺めて動かしたいユニットを選択するモード
ポイントは毎ターン回復するCP(コマンドポイント)の使い方。

CPはユニットの行動可能回数を示し、動かしたいユニットを選択すると、自動でCPが消費されてアクションモードへと移行します。

CPは特殊コマンド(防御アップなどのバフ)に使用することもできるほか、次のターンに向けて温存することもできます。

アクションモードはユニットを操作するモード
ユニットを選択すると、3DマップのTPS(肩越し)ビューに切り替わり、選んだユニットを自分で動かすアクションモードに移行します。

アクションモードでは、画面下部に表示されるAP(アクションポイント)だけ移動することができ、1回のAP使用につき1回しか攻撃できないというルールがあります。
同じターン中に同一ユニットを連続選択するたびに、そのターン中のAP最大値が減るというデメリットがあるため、偏りなく手広くユニットを動かすことが望ましいです。
とはいえ同じユニットを使い続けるのも戦略として有効。
兵種によって機動力や射程に差があり、各ユニットの得手不得手をカバーし合いながら進めていく戦術的な奥深さが本作の醍醐味です。
長距離射程の狙撃兵。
味方の回復、弾薬補給、地雷撤去などが可能な支援兵。

対戦車のスペシャリスト、対戦車兵。

なんだかんだ1番の華は戦車。
他にもいますが割愛。
ミッションをクリアすると、戦果に応じた資金と経験値が手に入り、これを使って武器や防具の研究開発、戦車の装甲や砲塔強化、さらにはユニットの育成にあてることができます。レベルアップしたユニットは、HPや命中率が向上し、一定レベルに達すればさらに上位の兵種へランクアップします。
本編のストーリーは好きなペースで進められるため、過去のステージや遊撃戦闘と呼ばれる稼ぎ用マップ、さらにはDLCマップに何度も挑んで戦力を蓄え、自分なりに強くなってから本編に戻る──そんな進め方もできます。

プレイ時間:
真エンドまで約50時間かかりました。
未プレイのDLCや、クリア後のやりこみ要素が残っているため、やろうと思えばここからさらに10~20時間ほど遊び続けられるボリュームがあります。結構な大ボリューム。
難易度:
難易度はかなり高め。難しいというより難があるって感じ。この後詳しく振れますが、運要素や初見殺し的なギミックが散りばめられているため、クリアまでかなり骨が折れました。これまでプレイしてきたゲームの中でもトップクラスの厳しさでした。メンタル的に。
設定からいつでもイージーモードに切り替えられるので、サクッとクリアしたい人はそちらを利用するのも手です。
感想:ステージ設計が残念

- 1番面白かった→戦闘
- 1番つまらなかった→戦闘
良かったのも悪かったのもすべて戦闘に集約。ユニークな戦闘システムは間違いなく最大の魅力ですが、その戦闘を支えるステージ設計において引っかかりが多く、惜しいな~と。本作単体で評価すれば、正直微妙っす。それでも、細かなバランス調整がもう少しだけ効いていたら、全然化けてたな~と思えるくらいのポテンシャルは感じられました。
戦場の空気感を感じられるブリッツシステム

なんといっても、肝はブリッツシステム。戦闘シーンだけ自分で操作するファイアーエムブレムみたいな感じで、アクション性はほぼないに等しいのですが、銃声がバチバチと響く生々しい戦闘の臨場感が凄い。遠くにチラリと見える敵兵のヘルメットや、先行する味方戦車の頼もしさなど、戦場に立つことでしか見られない景色が新鮮でした。

また、本作は全体的にJRPGの系譜の作品でありながら、ユニットがガチのミリタリー兵種ってのも魅力ですね。見た目的には地味、だがそれがいい。
戦車や装甲車を壁にして敵の射線を遮断し、その背後から擲弾兵の間接攻撃を浴びせる。突撃兵の前進に先立って狙撃兵が露払いを行い、移動力に優れる偵察兵が敵陣背後を突く──。こうした各兵種の得意技を組み合わせ、戦線をじわじわと拡大していく手応えは、まさにタクティカルゲームの醍醐味そのもの。
ストーリーはまあまあ
ストーリーは良くも悪くも王道のJRPGで、先走るバカや無謀な作戦など、およそミリタリー系とは思えないハチャメチャぶりでしたが、ちょいハードな世界観の青春活劇だと思えば、個人的には全然普通に楽しめました。
一方で、先の読めるテンプレ展開が多いため、特別驚いたとか感動したシーンはなかったというのも事実。老舗の味的な安心感はあるものの、この作品ならではの個性には欠け、印象に残らない「薄味」ってのが正直な感想ですね。ヴァルキュリア要素も唐突な感じ。まあでも、ステージ間の息抜きとしてはちょうど良かったです。
にしても、JRPGとミリタリーって滅多に見ない組み合わせ。補給に苦しんだり、敗走寸前で部隊がボロボロになったり、撤退戦・防衛戦といった追い詰められる展開も頻繁に描かれ、思いのほか悲壮感が強く、爽やかな青春譚だけではないところが独自っちゃ独自。
セーブ&ロードしまくった!!

ここからネガティブな話が続きます…。
本作の異質性を示す象徴的なものがプレイ時間かなと。

プレイ中のセーブデータを見ると、「約32時間」となっているのに、Steamクライアントでは「約48時間」と表示されています。この約16時間もの乖離は、リセットの繰り返しによって生まれたものです。
一般的なSRPGでは、ターンごとにセーブすることはよくありますが、実際にはそこまで頻繁に巻き戻すことは少ないはず。それが本作では1ターン巻き戻しを数え切れないほど多用しました。
それだけ「一手待って!」の状態が多かったのと、最初からやり直すよりセーブ&ロード方式の方がスムーズだったのもあります。
とりわけストレスに感じたのが「敵ターンの長さ」で、プレイヤーと同じく「2Dマップ→3Dマップ」の切り替えが逐一挟まれ、1ユニットずつ画面遷移を眺める時間が本当に虚無。設定からクイックにしても違いはほぼなく、プレイ時間の大部分はこの「眺めている時間」だったのではないかと思うほどテンポの悪さが気になりました。
詰将棋的な難易度

根本的には、やり直しをさせる=セーブ&ロード前提の難易度設計が元凶だと思います。
本作の難易度を一言で表現すると、詰将棋。
やはり戦力的に通常兵器を運用しているというのもあって、よくあるRPGのような強キャラでゴリ押ししていくようなことができません。そのため、地道に敵の戦力を削っていくという地味な戦闘が主体となるのですが、ステージ設計もそれを踏まえたものとなっており、丁寧に作り込まれている反面、動かせる手数が極端に限られすぎて、考えられているけれど逆に窮屈に感じられました。
例えば、
- 狙撃兵向きの良さげな高台があるな→草陰に伏兵
- 戦車が突入しやすい通路→死角に対戦車兵
ワンパターンながらも、効果は絶大。なぜなら、その一撃でユニットを失う可能性が高いから。ユニットの損失はそのまま攻略速度の低下につながり、ステージクリア後のランク評価にも直結します。
対策はいたってシンプルで、事前に徹底して索敵するしかありません。それも敵の配置は完全に固定されているため、やがては「覚えゲー」と化していきます。背後から狙われるなら予め背後を警戒し、増援が来るなら最初から対応した布陣を組む――こうした先読みプレイが、結果的にセーブ&ロードの多用を加速させる要因にもなっています。
もちろん、不意打ちや増援イベント自体は他のゲームにもあります。しかし本作ほどユニットの生存力が低く、手数がタイトな作品は稀です。パズル的な手応えが好きな人には堪らない設計でしょうが、一手でもミスすればリトライが必至になる過酷さは、「歯応えのあるイベント」どころか「非情な不意打ち」としてしか感じられず、個人的にはイライラの方が上回りました。
ランダム要素の不条理さ

そして、最大の不満点は、詰将棋のように綿密な手順と手数を求められる戦略に命中率というランダム要素をぶち込んでいる点です。
弾がね、当たらないの。
詰将棋の成功率80%みたいなもので、指し手が正しければ必ず解けるはずの問題に、失敗する可能性があるというのが戦略ゲームとしてスマートじゃないなと。
もちろん、SRPGにランダム要素があること自体は珍しくありません。むしろ、命中率やクリティカル判定の揺れがスリルを生むのも事実です。しかし本作はちと揺れ幅が大きすぎるかなと。プレイヤー不利に運が偏ったときのリカバリーが難しすぎて、ランダム性を楽しむ余地がありません。
ステージによっては、敵から先に動くこともあり、開幕0ターン目で初期配置の味方ユニットが倒されることもあります。「なんだこれ」と思ってリトライすると、今度は急所を外れて生き残るパターンもあります。これもこれで「なんだこれ」。プレイヤーの実力とは無関係に、ランダム要素だけで戦況が変わりすぎるのは、理不尽を超えて不条理で理解不能。
かといって、ステージ全体が調整不足というわけではなく、どれもマニアックすぎるほど緻密に練られているのは確かです。目標クリアターンはかなりシビア、だけれども可能なレベルに設定されていますし、断章のような短いステージでは、ユニット数も手数も限定されるため、パズル的な歯応えを純粋に楽しむことができました。
結局のところ、カジュアルじゃないってことに尽きると思いますね。
その他気になった点
- 敵ユニーク兵が強すぎる
- 回避が強すぎる
- ZOCがなく、敵尖兵が悠々と戦線を突破して後衛狙ってくる
- 地雷が敵守備陣にまかれているのに違和感
- ユニット選択後に戻れない
- 2Dマップでは把握できないマップ情報がある(高低差や壁など)
- 高低差に引っかかりがち
- アクション中にマップが見れない(ミニマップが本当にミニマップ)
- キャラクターの情報が見辛い(ポテンシャルやら相性やら)
- 部隊編成人数に対して、出撃可能人数が少ない(大体いつも10人上限)
- 戦車枠があるのも残念(あるだけ使いたい)
- 擲弾の迎撃がプレイヤー不利すぎる仕様(立ち止まったときしか当たらない)
- カメラ視点が整わないうちに迎撃があるのは理不尽
- 後半から使える支援要請の出番が少ない(マップで縛らなくても…)
兵種雑感
- 戦車…同じ戦車や対戦車兵以外に対しては無敵の存在で、壁にしたり土塁を破壊したり、大暴れできるのが楽しい。無理に敵を倒そうとしなくても、前に出しておくだけで壁にもなるし、迎撃も強い。後半になると対ボス戦用兵器として特殊な立ち回りを求められた。
- 装甲車…硬いタクシー。戦車2台運用のが強いと思える時もあったけど、手っ取り早くスピードクリアすることが最適解なことがあることに途中で気付き評価が変わった。
- 突撃兵…歩兵同士の銃撃戦なら最強。迎撃に優れ、前に出しておけば敵の進行を強力に抑止。ランクアップで火炎放射を使えるようになると、近距離戦で戦車以上の火力を発揮し、しゃがみ状態の相手複数人を一撃で粉砕できるのが爽快だった。
- 偵察兵…序盤と終盤で印象が大きく変わった。まずAPの多さから移動距離が長い、回避でノーダメの可能性がある、低い火力も頭を狙えばほぼ1ショットキル。コマンドで防御を高めた捨て身占領(グレネードとともに)も雑に強くて、終盤は偵察兵無双でした。
- 狙撃兵…突撃兵や偵察兵が突っ込む前の露払いが主な役目で、スコープを覗く動作そのものにアクション的な楽しさがあり、個人的にお気に入りのユニット。脆いのとAPの少なさから意外と運用に困る。あと外すことも多い。
- 支援兵…縁の下の力持ち。弾薬補給に回復にと大忙し。後半からは戦車に張り付いて工兵のように立ち回るのが定番に。
- 対戦車兵…硬いけれども足が遅すぎて普段の戦いでは使いづらく、専ら対戦車戦や装甲施設破壊時にしか使わないユニット。もっとタンクとしての機能があれば良かったのだけど。
- 擲弾兵…いわゆる砲兵。不意打ち(見られていない場所からの攻撃)のダメージボーナスが大きく、影に隠れて爆撃を叩き込む快感は格別。足が遅いのと迎撃が弱い(当たらない)のが悩ましい。逆に敵の擲弾兵の迎撃は、プレイヤーの操作のもたつきを配慮してない仕様が理不尽。
総評:ブリッツシステムはガチ
クセのある作品でしたね~。
自分で操作するブリッツシステムの面白さはガチ。でも、その面白さを存分に味わわせてくれないステージ設計が残念。ランダム要素も絡んで、一手のミスで何度もリトライしまくる苦行感はちょっと心折れそうに。
それでも、シリーズ化された理由はなんとなくわかるし、ボリュームたっぷりで遊び応えも十分。むしろ「1作目ってどんだけ神ゲーなんだ?」と興味が湧いたほどです。4作目だからこそのマニアック調整だったのかもしれないし、そこらへん確かめてみたい。Steamで日本からも遊べる日が来たら、ぜひプレイしてみたいですね。
難しく感じたら、イージーモードもあるし、セール中なら激安で手に入るので、SRPG好きなら試して損はない1本だと思います。
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