2014年、もう10年前の作品。いつ買ったか覚えてませんが今回が初プレイ! どうやら2025年中に同スタジオから新作『The Alters』が出るようなので、その前に履修しようかなと。
包囲された都市に生きる

作品名 | This War of Mine(ディスウォーオブマイン) |
開発 | 11 bit studios(ポーランド) |
リリース日 | 2014年11月15日 |
ジャンル | ストラテジー、シミュレーション、サバイバルクラフト |
価格 | 2,300円(Steam) |
対応プラットフォーム | PC(Steam/Windows) PS4 Switch/Xbox One モバイル(iOS/Android) |
日本語対応 | あり |
インストールサイズ | 約2.62GB |
Steam評価 | 非常に好評(94%) |
プレイ時間 | 約14時間 |
- Qどんなゲーム?
- A
戦時下の都市で、民間人としてただ「生き続ける」ことを目的とするシェルターサバイバルシミュレーション
包囲されて物資が困窮している都市に住む一般市民として、どの勢力にも与することなく、ただ「生きる」ことだけが目的の過酷なサバイバル。
本作のユニークな点は、戦う兵士の視点ではなく、戦争に巻き込まれた民間人の体験にフォーカスしているところにあります。
累計販売が700万本を超えている大ヒット作品ですが、教育的な側面でも高く評価されており、開発元のポーランドでは、ゲームでありながら学校の推薦読書リストに入っているんだとか。ちなみにモデルはサラエヴォ包囲。
ゲームシステム【昼と夜】

最終目標は、30日以上生存すること。
本作は大きく内政と探索の2つのパートで構成されています。
内政パート(朝~夕)

昼間は外で激しい戦闘が繰り広げられているため、安全なシェルター内で過ごします。
主にご飯をつくったり、シェルターを強化したり、クラフト作業に専念する時間です。システム的にはマウスクリックだけで操作できる資源管理系のRTSで、時計が勝手に進むため、キャラクターの移動やクラフトにかかる時間を考慮する必要があります。
主な作業内容

- 拠点の拡張…食事の支度、ベッドの設置、バリケードの作成など、生存に必要な各種設備の設置。
- 探索の準備…斧やパール、武器など探索時に役立つツールの作成。
- 余剰資源があれば、ネズミ捕りや雨水貯留槽といった装置を製作し、自動で食料を確保する仕組みも整えられます。
体調管理の重要性

キャラクターは怪我や空腹、疲れにより、作業効率が低下します。時計はそんなこと関係なく進むため、効率が悪いと、食事の準備だけで1日がほぼ終わってしまうこともあります。ときには疲れているキャラクターを休ませるなど、体調管理に気を配ることも大切です。
探索パート(夜~朝)

夜間は、内政で必要なクラフト材料を調達するため、シェルターの外へ探索に出かけます。まあ探索といっても、泥棒ですけどね。人の家に忍び込んでこっそりと物資を持ち帰ることが目的です。
探索のルール
- 探索に出かけられるのは1人のみ。
- 行かない選択も可。
- バックパックの容量にも限界があるため、1度の探索中に運べる量にも制限がある。
- 朝までにシェルターに帰還できなければペナルティ。
探索中のリスク

空き家のようなひとけのない場所ならともかく、物資が豊富なスーパーマーケットのような場所では、プレイヤーと同じように漁りに来た人々が集まります。
友好的な相手とは取引を行うことも可能ですが、敵対的な集団に遭遇すると警告や発砲といった激しい衝突に発展することも…。
精神面のケア

キャラクターは怪我、空腹、疲れなどに加え、倫理に反する行動や仲間の死などの影響を受けます。
「心配」や「悲しい」といった負の感情を蓄積していくにつれ、身体的なトラブルと同様に活力が失われていき、あらゆる動作が鈍くなっていきます。

対策としては、「がんばりすぎない」「悪いことをしない」「生活を安定させる」「休む」「タバコや酒、コーヒー、ラジオ、本などの嗜好品を用いて気分転換を図る」ほか、「仲間同士で話し合う」ことも大切です。
難易度について
本作は、リアルタイムで感じる臨場感や緊迫感が大きな魅力ですので、クリアを目指さなくても楽しめる作品だと思います。
そのことを踏まえたうえで、ゲームクリアを目標とする場合の難易度について述べると、全体としては覚えゲー的な側面が強く、「最初は無理ゲー」「慣れれば楽勝」くらいの感じだと思います。
プレイするたびに上達していく感覚はありますが、緊張感とかはだんだん薄らいでいくので、これから始めようと思っている人は、プレイ前の予習を控え、完全な手探り状態で始めるのがオススメです。
感想:戦争映画を観終わった後のような

プレイ後の感想は、ただ単に面白いゲームというより、壮絶な戦争映画を観終わった後のような、深い余韻が心に残る作品でした。
基本的にはシェルター内でのサバイバルクラフトがメインであり、集めた資源やクラフトで拠点が徐々に充実していく過程は、なかなかの達成感があり面白いです。
しかし、そのクラフト材料や生きるための食料を集めるために、外に出なければならないという点が厳しい!

主な探索地は、空き家やスーパーマーケットなど、「いかにも物資がありそうな場所」ですが、そこで他人と遭遇する瞬間がゲーム中で1番緊張します。
出会う人々の反応はまちまちで、友好的に「一緒に漁ろうぜ」と誘ってくる者もいれば、「ここは俺達のテリトリーだから近寄るな」と威嚇する者も。特に印象深かったのが、最初からその場所で暮らしていただろう人たちの「私達のものは奪わないでくれ」という嘆き。プレイ中は無視しようと心がけていたのに、今なお覚えているのが不思議というか……無意識に強く働いたんだろうなって。
良心が痛みまくり

苦難に次ぐ苦難
毎日のように食料確保に追われる中、たとえ物資が十分にあっても、心は次第に疲弊していくのが現実です。命からがら、罪悪感を抱えながら拠点に戻ると、既に拠点が襲撃され、探索中に集めた以上の物資が盗まれているなんてことも…。
そして、たとえ敵を追い払えたとしても、その戦闘のせいで怪我をすることも…。かすり傷程度ならまだしも、重傷なら医療品がなければ基本的には自然治癒しません。医療品は食料よりも入手が難しいため、状況はますます難しくなっていく一方に…。

こうした過酷な状況の中で、キャラクターのメンタルも徐々に蝕まれていき、精神状態が「精神崩壊」まで陥ると、キャラクターは動けなくなり、プレイヤーの指示にも全く反応しなくなるほどになってしまいます。
歩く気力も、食べる気力も、睡眠すらも放棄してしまったような状態…。
──もう終わったか
と思いきや、そうではないのが本作のすごくて深いところ。

仲間の存在。必死に励ましたり、ご飯を食べさせたり、お酒を与えたりすることで、ほんの少し活力を取り戻せるのです。もちろん、その状態では他の作業はできず、ベッドに直行して寝るくらいしかできません。
しかし、わずかにでも動き出す姿は、人間が再び生き返ったかのような、絶望の中の小さな希望そのものでした。この瞬間は、正直なところ、このゲームで1番心を揺さぶられたシーンでした。絶望的な状況には変わりないはずなのに、がんばれる気がしてくるのです。

どんなに絶望的な状況下でも、倫理が崩壊した世界であっても、
純粋な利他性が人間の尊さや神聖な希望として現れる――それをゲームで示したのが、本作最大の成果であり、素晴らしい点だと思います。
プレイしながら昔読んだ、知的障害の介護をする人の本をふと思い出しました。なぜ本人から特に感謝されるわけでもない見返りもない行為をするのか? その答えはシンプルで、彼らの笑顔が素敵だからというものでした。正直、いまいち実感できなかったその答えが、このゲームをプレイしたことで、少しわかったような気がします。
希望を持つことはマジで大事
気になった点

この作品はライブ感を存分に味わえる点が魅力ですが、戦略ゲームとしては底が見えるのが早かったな、という印象です。上の難易度のところでも触れましたが、覚えゲー的な側面が強いからです。
特に探索ですね。初めてプレイしたときは、人に遭遇したらすぐに逃げるなど、おっかなびっくりな進め方で、成果なしの帰宅も珍しくありませんでした。それが、プレイを重ねるうちに、会敵にもそれほど恐れることがなくなり、バックパックいっぱいの帰宅がデフォになります。
マップの種類は多彩ですが、構造は固定なので覚えちゃうんですよね。「ここは来たことあるぞ」「この家はこのへんから侵入できて…」「このあたりにセーフティゾーンがあって…」みたいに、知っているマップであればリスクなく探索できてしまうので、慣れていくにつれ緊張感も低下していきます。

また、本作は物資が有限なため、クラフトの選択が取り返しのつかない重要なポイントとなりますが、どのアイテムが有用で、どれがそうでないかも、実際にプレイして経験する中で徐々に理解できるようになります。周回ごとのランダム性がそれほど高くないため、似通った選択肢、最適解が見えてきてしまうのが、何周もするうえでちょっと気になる点でした。
初見では30日以上の生存は永遠のように感じられましたが、慣れてしまうと30日以上はむしろ長すぎに感じてしまいますね。
さらに、気になった点として、キャラクターの能力説明が少し不親切だなと。例えば、料理が得意なキャラクターは鋳造や製薬でも効果を発揮するのに、詳しい説明がないのはもったいないと感じました。

あと、探索に出られるのが1人だけで、バックパックの容量にも限界があるため、1度の探索で取得できる物資数が限られており、人数が増えるほど補充が追いつかず、不利になっていくのも残念でした。ゲームバランス上仕方がない部分かもしれませんが、人が増える恩恵だったり探索での「大当たり」や「大漁」といった激アツ演出があったらゲーム的にはもっと面白かっただろうなと。なんというか、全体的に硬派で地味です。
まあでも、この仕様こそが本作が追求する「生存の厳しさ」を際立たせる要素とも言え、そう捉えれば十分にコンセプトに忠実な作品だと思います。
総評:人間の自然状態に迫る追体験

高評価作品、期待通りにちゃんと面白かったですねー。
人間の心理や倫理、そして絶望の中にひそむわずかな希望を見事に描き出しており、ゲームの枠を超えた素晴らしい作品だと思いました。
特に、切羽詰まった状況からの展開がすごく肉厚で、極限環境の、さらに極限といった追い詰められた状況での深く重い人間ドラマには、ゲームではなかなか見ない壮絶さで強い印象を受けました。
何よりも良いのは、フェアに描いている点ですね。露悪趣味的に人間の無力感や野蛮さをさらけ出すだけではないし、かといって人間万歳というわけでもない。絶望もあって、希望もあって、他意なしのありのままの空気感で、プレイヤーの解釈に委ねている感じが好きです。
10年前の作品ということもあり、セールでワンコイン以下で手に入ることも多いので、入手もしやすいかと思います。確かゲームパスにも含まれていたかな? 新作発売前にぜひ。
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