ファンタジーが現実を照らす!ペルソナチームの新作『メタファー:リファンタジオ』の感想

4.5
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Q
どんなゲーム?
A

ペルソナ開発元アトラスの完全新作RPG。ファンタジーでありながら現実社会や政治を彷彿とさせる生々しい描写が特徴。

©ATLUS. ©SEGA.

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作品概要

作品名メタファー:リファンタジオ
開発ATLUS
リリース日2024年10月11日(Steam
ジャンルJRPG、ターン制、アクション
価格9,878円(Steam
対応プラットフォームPC(Steam,Epic,Windows)
PS5/PS4
Xbox Series X|S
日本語対応あり
インストールサイズ約80.76GB
Steam評価非常に好評(90%)
プレイ時間約75時間~(ストーリークリア)

王様が死んだ!

暗殺だ!

後継者は誰だ!

主人公、ライバル、教会「俺だ!俺だ!俺だ!」

ってな感じの玉座をめぐるゴタゴタを描くファンタジーRPG

…と見せかけて、

本作の魅力は、その背後にある生々しさ。熱狂や噂に踊らされる奔放な民意、多種族国家ゆえに根深く存在する差別――そうした現実世界に通じるリアルなテーマが織り込まれた、わりと社会派な作品となっています。

ファンタジーとは何か? 理想とは?

そんな本作を特異なものにしているのが、劇中に登場する「ある小説」の存在。

それは「差別は許されないし、自由な職業選択もできる」といった「理想世界」を描いたファンタジー小説

登場人物たちにとっては現実味のない絵空事に見えますが、同時に「こうなったらいい」と夢見るきっかけにもなっています。

実はこの理想世界こそ、私たちの現実世界

ゲーム冒頭で主人公の名前とは別に「プレイヤー名」を入力するフェイズが用意されていたり、タイトルに「メタファー」という言葉があることなどからも、露骨にメタフィクションとしてのファンタジー論を扱っています。

それもオマケではなくメインストーリーの軸として強い存在感で描かれている点が、過去になく斬新な設定のRPGだと思います。

この「作中作」の存在理由は物語の進行とともに明らかになります。

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感想:期待と現実のギャップ

普通に面白い作品でしたが、「思ったほど…」ってのが正直な感想ですね。

とても良くできた作品だけれども、どこか期待を下回った感があるのも確か。少なくとも直近プレイしたペルソナシリーズ、P3Rは超えてこなかったですね。

とはいえ、70時間以上近く飽きずにプレイし続けられたのも事実で、本作をプレイしている時間がここ最近の楽しみの1つでもあったので、「終わってしまった…」と寂しさも少々…。

良かった点
気になった点
  • ユーザーに優しいシステム
  • アーキタイプによる付け替えが面白い
  • 世界観の作り込みがすごい
  • ペルソナに通底する爽やかさ
  • システムはほぼペルソナ
  • アクション性が微妙
  • 難易度高め(敵が硬い)
  • 序盤の戦略幅の狭さ

気になった点:ペルソナすぎることと、微妙なアクション性

先に気になった点から挙げていきます。

1.システムはほぼペルソナ

プレイを始めて最初に思ったのが、

「あ、ほぼペルソナじゃん」

でした。

弱点を突いて追加ターンを得るコマンドバトル、技の名称、オシャレなUI、カレンダーシステム、ダンジョンの構造、仲間との絆を深める支援者(コミュ)システムなど、根幹はまるごとペルソナシリーズの延長線上。

無難に面白いのは確かですが、新規IPならではの新しい体験を期待していた自分としては、「いつものかーい」という脱力感が否めず、正直ここが最大のガッカリポイントでした。

2.アクションが微妙

ペルソナシリーズの戦闘はカジュアル寄りで、難易度がゆるい割には道中が長くダンジョン攻略に時間がかかりすぎるという難点がありました。本作ではそのテコ入れとして、「格下は戦闘突入前のシンボルエンカウント状態を殴ることで倒せる」ようになりました。

これにより、無駄な戦闘は減りましたが、同格以上の敵に対しては、ダウンさせるまでアクションで殴り続ける必要があり、アクション自体の操作量が増えました

そして、このアクションの手触りが、正直あまり良くありません。

  • カメラが近すぎる
  • カメラ外からの不意打ち
  • 壁が多い
  • ロックオンが見づらく、切り替えもしづらい

それでいて、アクション失敗時、つまり敵に先攻を取られた際のペナルティが非常に大きく、パーティ半壊どころか、状態異常が絡んで何もできないまま一方的に壊滅させられることもあるほど。

アクションは戦闘前のミニゲーム的なものでしかないのに、妙に歯応えがあるんだかないんだか微妙な感じで無駄に気を使わされるのが疲れました。アクション単体のゲームだったら厳しい。で、そのアクションが前提のゲームだから「うーん…」というね。

3.難易度も高め

こうしたアクションの難しさに加え、ターン制バトルそのものの難易度もかなり高めでした。少なくともP3Rよりは歯ごたえがあります。

とにかく敵が硬い!

戦闘回数が減った代わりに、1戦ごとの重みと消耗度が増しており、「弱点を突いてダウン→一斉攻撃」といったお馴染みのお手軽全体攻撃もないため、コツコツと削るような地味な戦闘が多くなりがち

ギミックがある敵もいます。

といっても、超難易度というほどではなく、ペルソナやメガテンプレイヤーであれば、「いつもよりちょっと硬いな」「敵の攻撃が苛烈だな」くらいで十分対応できる難易度ではあります。

ただ、最後のサブクエストから難易度が二段階くらい跳ね上がった感じがありましたねー。パーティ構成、装備やスキルの配分はもちろん、ターンごとの行動にも工夫が必要で、何回もやり直しました。

ラスボス戦についても、初見撃破が無理どころか、ラストダンジョン侵入前からやり直して構成と装備を見直す必要があったほどです。まあ、これは自分がセーブスロットを分けてなかったのが悪いのもありますが…。いずれにせよ、全体的に、見た目のカジュアルさに反して、「けっこう難しいゲームだったなー」というのが率直に思うことです。

4.序盤の戦闘の単調さ

敵が硬いことによる弊害は多く、序盤は特にそれが顕著でした。

  • 敵が硬い
  • 倒すまでにターン数がかかる
  • HP・MPの消費が激しい
  • 継戦能力が低くなる
  • 1回の探索で攻略しきれない

これは意図した設計であり、中間地点(セーブ&ワープ拠点)がダンジョンの各所に配置されていることからも、複数日での攻略が想定されています。

カレンダー的には余裕たっぷりなのですが、序盤はスキルも単発攻撃しかなく、その他スキルのバリエーションも狭いまま。

セーブ地点兼ワープ地点

10時間くらいは単発スキル使ってた気がします(序盤はストーリー追う時間が長いってのもありますが)。それに加えて敵も堅いうえに全体攻撃が多いなど、厳しい戦闘が続き、レベルも上がらない、スキルの幅も狭い。単発攻撃コツコツ。すぐ帰還。どれだけスローなんだこのゲームはと思った記憶があります。

硬派といえば硬派。

ちなみに、終盤になればMPの余裕も出てきて、かなり快適になっていきます。

その他気になった点

MAG不足: 新しいアーキタイプをアンロックできても、余剰MAGがなくて転職できないことがありました。金もカツカツ。雑魚はリスポーンが遅いので、わかりやすい稼ぎマップが欲しかった。

長尺:サクサク進行でも60時間は超えてくるのは確実なくらいの大ボリューム。良くも悪くも。

キャラクターの類型性:メタフィクション性を重視した反動なのか、ファンタジーのテンプレート感が強く、キャラクター間のやりとりや支援者イベントがややオーソドックスすぎるかなと。

良かった点:ユーザーフレンドリーな設計と細部まで作り込まれた世界観

さすがアトラス。

1.とにかくユーザーフレンドリー!

いつでも戦闘やり直し機能も

本作でまず感動したのは、圧倒的な便利機能の数々です。

ワンボタンセーブ、ワンボタン全体回復、ファストトラベル地点の豊富さなど、ショートカット系がた~くさん。最初の頃こそ、画面いっぱいに情報が並んでいて戸惑いましたが、慣れてしまえば爆速操作で快適にプレイでき、「これが令和最新版のJRPGか!」と感動せずにはいられませんでした。

特に嬉しかったのが、ペルソナシリーズお馴染みのコミュ(本作では「支援者」)の条件緩和ですね。過去作のように属性合わせや選択肢の正解を気にする必要がなく、勇気や包容力といった性格ステータスさえ育っていればOK。これらのステータスを上げる手段は豊富で、ストーリー進行に伴って上昇量も増えるため、「条件緩め」「いつでも追いつける」という非常に嬉しい仕様。初見プレイでも全キャラコミュMAXは余裕でした。

自分は最後は約2週間(14×1日2回行動)残してコンプリート。だから寄り道もいっぱいできた。

2.アーキタイプ育成が楽しい

アーキタイプは、いわゆるジョブシステムのようなもの。

キャラのレベルとは別にアーキタイプにもレベルがあり、アーキタイプのレベルを上げていくことでスキルが取得できるという仕組みです。取得できるスキルはアーキタイプごとに違ってて、例えばファイター系なら物理スキル、ウィザード系なら魔法といった具合。

転職(アーキタイプの変更)をすると、転職前のスキルは使えなくなりますが、最大4個までなら過去に取得したスキルを継承(登録)することができます。そのため、転職を繰り返して強いスキルをかき集めるのが基本戦略になります。

キャラごとに向いたアーキタイプセット(下位・中位・上位クラス)が用意されているので育成に迷うこともなし。

あえてそうしたガイドを無視してオリジナル構成を試すのもまた楽しい。惜しむらくは、転職に必要な資源(MAG)がやや不足しがちな点ですね。

ジンテーゼと呼ばれる特定のアーキタイプ同士の協力スキルなんてのもあります。

3.作り込まれた幻想

ストーリーについては、ぶっちゃけ最初の数時間くらいはやや退屈だったかな。

しかし、「ここからがスタート!」という明確な転換点があり、そこで「うおおお!」と気分が盛り上がったのを覚えています。体験版でもここらへんまでプレイできるようなので、プロローグがちょっと長めだったのかなと。

そこからは、普通に楽しい。

各地を旅しながら問題を解決し、支持を得ていくみたいな流れで、テンポもいいし、新しいキャラも次々登場して、王道だなぁと。

みんなが「良くない国を良くしていきましょうよ」ということを訴えるのですが、その内容は三者三様。中には「こいつに任せて大丈夫なのか?」みたいなのもあり、個性豊かなそれぞれの主張を聞いて一喜一憂するのも楽しかったりします。

各地を移動するための足が鎧戦車(街宣車)というのも面白い。まさに選挙活動。

あとやはり、全体的に世界観の作り込みが凄まじいです。

例えば、一言で多種族国家といっても、実質的なカースト制で支配者種族が存在したり、種族間で仲が悪かったり、またどの種族からも蔑まれる最下層種族がいたりと、それぞれの立ち位置や関係性が細かく設定されています。状況のあまりよろしくない種族が逆転を狙っているかというとそうでもなくて、みなそれぞれの生活に必死なところが、「リ…リアルだなぁ…」と。

港町なら魚、砂漠の街ならサンドワームなど、ご当地グルメもあって、風景・武器防具屋のレイアウトに至るまで、街ごとに文化の違いが表現されているのも深みがあって好きなところです。

個人的に最大の山場は、ライバルとの直接対峙。ネタバレは避けますが、「出し抜くこと」をお互いに狙い合う、およそファンタジーRPGとは思えない政治的・戦略的な駆け引きの緊張感がたまりませんでした。

4.ファンタジーの価値

本作のテーマは、やはりファンタジーが現実にもたらす影響と意義でしょう。

劇中では、どうてみても私たちの現実をモデルにしたような「理想世界」の幻想小説が登場し、ゲーム内のキャラクターがそれを読みながら語り合っているんですよ。

「差別がない」「職業選択が自由」――そんな世界を見て、「現実味がない」「でも、うらやましい」と感想を語り合う。この構図は、まさに私たちのメタファー(隠喩)そのもの。

よくよく考えれば、「差別はない」といっても現実にはまだあるし、「完全な職業選択の自由」も、実際には全部がそうというわけではない。こういう一面的な捉え方は風刺的でもあるし、完全な理想と現実は、なかなか一致しないものなのだと気づかされます。

自分なんかは魔法が使えるファンタジー世界を見て「楽しそう~」とかのんきに考えるけれども、普通そんな夢の技術が本当にあったら兵器転用するのは当たり前のことだし、同時にそれをよく思わない反対運動だって起こるはず。

応用、責任、対立。そうした「リアルだったら…」の視点での生々しい描写が、本作の世界観にはしっかりと織り込まれているのが面白いところ。

そうやって見ると、「ファンタジー」と「現実」はまるで正反対のように見えて、実はとても近い存在。

理想と現実の間にはギャップがあり、「夢は所詮夢」…という悲観論が根強いのがリアル。しかし、理想に思いを馳せる感情もまたリアルであり、それに共鳴する人々の想いの結集もまたリアル。

そういう夢物語のポジティブな前進力みたいなものが、この作品にはあるんですよね。この青臭いまでのロマンチックさは、ペルソナ的でもあり、アトラス作品に通底する一貫した意思を感じました。

自分としては筋運びとか、メインストーリーの方は正直まあまあといった感じだったんですが、こうしたファンタジーと現実の関係性の描き方や、登場人物たちの生き様そのものに強く惹かれた作品でした。

特に響いたのが、それぞれの覚醒イベント。キャラクターたちが自らの決意を高らかに宣言するシーンには、青臭さはあれど、それ以上に前に進もうとする強さ、ポジティブなエネルギーを感じさせてくれました。こういう前進力というか、ポジティブさに元気をいっぱいもらいました。

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総評:新しくはないけれど異色

トータルでは、大満足でした。

全体としての印象は、「令和最新版のペルソナ」といった感じ。システム面は完成度が高く、非常に遊びやすい一方で、いつものペルソナすぎるプレイ感はやや革新性に欠ける。戦闘は歯ごたえがあり、アクション要素の粗さもあって、ストレスやや強め。

とはいえ、「ファンタジーとは何か?」というテーマを正面から取り上げたのはすごい。ファンタジーをどう捉えるか、どんな意味があるのかを小ネタ的ではなく、ストーリーの核心に据えていたところが、新しいし、不思議な味わいの作品だった。

これからプレイする方へのアドバイス

  • セーブスロットは分散
  • 状態異常回復スキルは便利
  • 困ったら火耐性
  • 悪天候時の経験値稼ぎ
  • 雑魚狩りが大事

1.セーブスロットは分散:せっかく自由にセーブ&ロードできるのだから、保険をいくつも残しておくのがオススメ。少なくともダンジョン突入前後くらいは分けておくと安心。

2.状態異常回復スキルは便利:状態異常は最初から最後まで悩まされることに。回復アイテムの用意は必須だが、万能回復の「パトラ」があると手軽で便利。

3.困ったら火耐性:基本的に次のダンジョンの敵の情報を見て耐性を決めるべきだが、火耐性・反射・無効あたりは汎用性が高くて頼りになります。

4.悪天候時の経験値稼ぎ:悪天候時には経験値が増えます。その分、追加ターンを得られないといったデメリットもありますが、レベル上げを優先したいときはオススメ。

5.雑魚狩りが大事:転職やスキル取得に必要なMAGは枯渇しがち。絆イベントや顔石を見ることでも少し貰えるが、基本は雑魚狩りを頑張るしかない。アカデメイアやダンジョンの入口に戻ると敵が復活するので、MPに余裕があるときなどは稼ぎも意識すると良い。

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