中世が生々しく、自由が重たい。リアルすぎる中世体験オープンワールドRPG『Kingdom Come: Deliverance』の感想

4.5
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ゲーム概要

作品名Kingdom Come: Deliverance
開発Warhorse Studios
リリース日2018年2月13日
ジャンルオープンワールド、RPG、アクション、アドベンチャー
価格3,589円(Steam
対応プラットフォームPC(Steam、Epic Games)
PlayStation4/Xbox OneX/Switch
日本語対応あり(日本語吹き替え)
インストールサイズ約60.7GB
Steam評価非常に好評(82%)
プレイ時間約50時間(メインストーリークリア)
Q
どんなゲーム?
A

史実をベースにした中世ヨーロッパ舞台のストーリー重視オープンワールドRPG

舞台は1403年、現代のチェコ周辺。当時は神聖ローマ帝国のボスニア王国内で繰り広げられる物語。

鎧を着込み馬に乗って剣や弓で戦う、「ザ・中世」の時代。

主人公は田舎村に住む「ヘンリー」という少年。ある日故郷の村に謎の軍隊が現れ、のどかな田舎の日常が一変。命からがら逃げ延びたヘンリーは復讐を誓うのだった……。

ヘンリー「ていうか、国内で今大変なことが起きてね?」 

ベンツェスラウス=ダメダメ シギスムント=簒奪者

当時のボスニア情勢は不穏でした。

  • ペストの大流行から数十年後(人口は回復しつつあったが社会の不安は解消せず)
  • 王の世継ぎをめぐるゴタゴタ(優秀すぎる王の跡継ぎがダメダメで反乱勃発)
  • 教会の中でも分裂(教皇が2人並び立つ異常事態)
  • フス革命の直前(教会批判が公然と広まり、社会改革の迫る時代)

国と教会の権威が揺らぐ変動の時代。主人公ヘンリーの成長を通して描かれる、日々を生きる中世の人々の苦悩や日常。

実際の歴史に根ざしたリアルな中世の雰囲気を味わえる成り上がり系RPG。

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ゲームシステム:スカイリムっぽいオープンワールド

ゲームシステムは、オーソドックスなオープンワールド形式で、オブリビオンやスカイリムに似ています。自由に行動できる一方、その選択が評判に影響し、クエストの進行にも反映されます。

基本はおつかいゲー。

依頼を受け、目的地で何かをして報告するという流れ。

過小報告は日常

ロールプレイに重きが置かれており、プレイヤーの行動や選択によってクエストの結末が変わります。

クエストの内容は多岐にわたり、

「虫歯の抜歯を励ます依頼」や、

「修道院に潜入して悪者を探し出す依頼」なんてのも。

この修道院での話はクローズドサークルのミステリーみたいでなかなか面白かったですね。

余暇には浴場でリフレッシュ(意味深)したり、ダイスで遊んだりと、クエスト以外のちょっとした楽しみも充実しています。

戦闘は剣戟アクション!

戦闘は近接武器でのタイマンが基本!!弓もありますが有効に使える場面はほとんどありません。

操作はM&BやChivalryに似ており、剣を振る攻撃方向や防御のタイミングを咄嗟に判断する細かい操作が求められます。とはいえ、全体的に動作はゆっくりめなので反射神経的にはイージーです。

武器の強弱やスキルの成長もありますが、戦闘の成否はアクション操作に大きく依存するため、最終的にはプレイヤーの操作力次第なところがあります。

プレイ時間と難易度

クリアまでにかかった時間は約50時間。サブクエストにはほとんど手を出さず、メインストーリーに集中して進めました。加えてちょっと詰まったらすぐに攻略サイトを調べながらの進行だったので、だいぶ早足進行だったと思います。それでも、マップが広いので移動や探索にかなりの時間を要しました。サブクエストや隠し要素(宝の地図)などもしっかりやり込むとなれば、100時間を超えてもおかしくなさそうです。

難易度はそこそこ。地道に進めれば誰でも攻略可能なバランスだと思います。唯一のネックは戦闘で、抜け道的な攻略法がないので、アクション操作に習熟できるかどうかがすべて。

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感想:予想以上に感動する出来だがプレイ中は辛かった

予想以上に良い作品でしたね。

自分が中世好きなのも大きいのですが、特筆すべき非凡な作品だと思いました。しかし同時に残念な部分も多く、なんともオススメしづらい。好きか嫌いかでいうと「自分の心に深く刻まれるレベルで好き」な作品ではあったけれども、ゲームとしてはそこまで面白くはなかったというのが正直な感想ですね。

好き:時代考証の素晴らしさ

町並み、文化、人々の考え方などが本当に当時にタイムスリップしたかのような高い解像度で再現されており、中世ヨーロッパを舞台にしたゲームの中で自分史上最高の没入感でした。

舞台はやや田舎寄りの地域で、壮大な自然とそこに点在する小さな村々のコントラストが特に印象的。自然と人々の生活が調和した風景は、ただ眺めているだけでも美しかったです。

ゲームを進める中でアンロックされるヘルプブック的読み物の「写本」には、当時の暮らしや歴史についての詳細な情報が記載されており、これが非常に興味深い。

トイレ

史実を知ることでストーリー展開を予測しやすくなるだけでなく、村や町の施設がどのような役割を持っていたのかを学ぶことで、散歩の楽しさが倍増します。

中世ヨーロッパに興味がある人にとっては刺さるポイントで、自分にとってもこの要素がクリティカルでした。

好き:ストーリーはちょうどいいラフさ

自分がこれまでプレイした中世ゲーは、騎士が云々、名誉が云々というどこか格式張ったものが多かったです。もちろん本作でも身分や名誉は絶対というのが前提にあるとはいえ、どちらかというと現代風のノリで、気が抜けたというか、いい意味でラフです。確かなユーモアがある。それでいて、わかりやすいカタルシスを狙うのではなく、リアリティを失っていないのが絶妙なバランスで良き。ちゃんと中世らしい無法っぷりも健在。

これは最高の脚色だと思っていて、平易な言葉遣いで直接的に語られるので、初見でもわかりやすいですし、感情移入もしやすく、無理なく物語に引き込まれました。

キャラクターたちは個性豊かで楽しく、根っからのクズもいれば聖人のような人物もいて、どれも血の通ったリアルな人物像として魅力的。個人的には、ハンスとゴドウィン神父がお気に入り。ハンスはカワイイ小物、ゴドウィンは本作で1番はっちゃけたヤツ。どちらも笑いを提供してくれる存在。

イベントムービーは映画のよう。壮大な光景とBGM、カメラワーク、プロの吹き替えが見事に合わさって、見応えがあります。

正直、ゲームの攻略はかなり大変で、時にはモチベーションが下がることもありましたが、ムービーの素晴らしさで何度もやる気を取り戻しました。

ちなみに、ストーリーは一段落こそつくものの、「続く」で終わります。本作はあくまでも状況確認とちょっとした非常事態への対応がメイン。前日譚といってもいい規模の小さな戦いです。史実的には次回作でより大きな物語が待っている予感がします。

好き:ロールプレイが楽しい

サブストーリー含め、プレイ中には数多くの選択肢が登場し、プレイヤーの選択によって道筋が変わります。

  • 悪人を捕まえた→許すか?処罰か?
  • 盗みをしているところを見つかった→謝罪?弁明?逃走?
  • 口約束→守るべきか?裏切るべきか?

衆人環境では基本的に良い行動をした方が得になる場合が多いものの、どうしても欲しいものがある時には……!?という葛藤も楽しめます。

悪さがバレると罰金か投獄

話術システムは意外に奥深く、飲酒によって口がなめらかになったり、高価な服を着ることでカリスマ性が増したり、あるいは騎士らしい重装備で威圧感を与えるなど、見た目や摂取物が相手への印象に大きな影響を与えます。

話術スキルが高ければ、悪事を働いて衛兵に捕まったとしても、相手を言いくるめて切り抜けることもできるようになります。ゲーム的には武力で暴れまわりたいのが本音だったけれども、武力に頼らず、言葉によって世界を変えていくこのシステムは、日和見主義的でありながらも、むしろ現実的なのかも…。

ファストトラベル

残念:自由が重いオープンワールド

中世らしい雰囲気やロールプレイの楽しさは一級品ですが、それ以外の部分、特にオープンワールドゲームとしてはなかなかしんどいゲームでした。

オブリビオンやスカイリムを彷彿とさせる古風というか硬派というか…。システム面でややハードで不便さを伴うデザインが目立ちます。

例えば、インベントリには重量の概念があり、重装鎧を着込んでいる場合、敵1人の身ぐるみを剥いだだけでもうダッシュができないほどの重量ペナルティが発生します。重量ペナルティがある状態ではファストトラベルも利用できません。馬を使えばいくらかは荷物を運搬できますが、大量に運べるわけではなく、戦利品をすべて持ち帰れた記憶はほとんどありません。

また、任意のセーブには特定のアイテムが必要で、これがそこそこ高価かつ有限なのがつらいところ(バイオでいうインクリボン)。任意セーブを節約するためには、クエスト中の自動セーブやベッドでのセーブを活用する必要がありますが、ベッドが近くにない地域も多いため、長時間の移動を余儀なくされます。クエストによっては、失敗すると長い移動からやり直す羽目になることもあり、これがモチベ的にもかなりストレスでした。

この移動もね、馬が移動手段のメインとなるのだけれど一筋縄ではいきません。マップは高低差の激しい急峻な地形が多く、街道を辿るだけでも一苦労。整備された道というよりは、登山道に近い印象で、「ビューン」と爽快に移動する感覚とは程遠いです。

また、クエストデザインもやや不親切です。一部のクエストには期限が設定されている場合があり、気づかないうちに失敗扱いになったり、メインストーリーの進行で突然消滅したりします。探索系のクエストにももう少しヒントが欲しかったと感じました。

加えて、夜間はたいまつを持っていても何も見えないほど真っ暗になり、クエスト進行が困難になります。夕方以降は行動を控えざるを得ないため、クエスト進行に合わせて細かい時間調整が必要になる点も手間でした。

残念:成長の実感が薄い戦闘システム

最大のがっかりが戦闘システム。

中世ゲームに期待するのは、銃でパンパン撃ち合うのではなく、剣でガチャガチャと戦う楽しさです。本作の剣戟アクションは、MordhauやM&Bに似た太刀筋の方向が重要な仕組みで、1対1の戦闘においてはじっくりと戦う操作感が楽しめます。しかし、自分も敵も回避や防御が比較的容易なため、互いに直撃が少なく、戦闘が長期化しがちです。

問題は、この「1対1をじっくり楽しむ」仕様に最適化されているにもかかわらず、対複数戦が頻繁に登場する点です。前後から挟まれると太刀筋どころではなく、死角から斬られて終わります。一人称視点の狭い視界も相まって、囲まれると非常に厳しいです。結局成長しても多人数相手では太刀打ちできないため、戦闘面での成長の実感を得にくいのが、プレイしていて最もつまらない点でした。

本作のスキルシステムは、使えば使うほど自動で成長する仕組みですが、戦闘においては実戦の手応えと数値上の成長が噛み合ってませんでしたね。

対複数戦でも戦いやすい操作や視点の改良、もしくは戦闘スキルによる強化でプレイヤーが有利になるポイントがあれば、もっと楽しめたのではないかと思います。

総評:忘れられない作品になった

総合的には大満足。

景色に感動したり、ストーリーにフフッと笑ったり、戦闘では操作に苦しみつつも、なんだかんだ白熱するものはあったりと、振り返ってみると、心を動かされる場面が多く、間違いなく自分の中では刺激的な作品でした。

一方で、オープンワールドゲームとしては極めて平凡で、アクションゲームとしての完成度も高いとは言えません。システムのハードさや不便さも目立ち、攻略中は正直かなり疲れる部分もありました。

やっぱり特筆すべきは、時代考証の徹底ぶりとストーリー(ムービー)の面白さ。それらは他にはない唯一無二の魅力。中世が好きな人にはぜひプレイしてほしい作品ですが、覚悟を持って挑む必要があることも伝えておきたいです。

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ちなみに、ボリュームに対してお値段はかなり格安。定価が3500円、セール時にはDLC込みで1000円以下で購入可能です。この価格でこれだけの内容なら、十分すぎる価値があります。次回作次第では本作の評価もまた変わってくるかも? 来年には出ると思うけど。話題になって欲しいな~。

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