ものすごく高評価を受けているけれど、ネタバレ回避のためかイマイチPRされない作品。
各所で高評価の怪作
Inscryption(インスクリプション)は、2021年10月にリリースされたDaniel Mullins Games(ダニエル・マリンズ・ゲームズ)の作品。本作は、同社代表のダニエル・マリンズ氏が手掛けたアドベンチャーゲームで、ローグライクデッキ構築、脱出ゲーム要素、サイコロジカルホラーの雰囲気を融合させた独創的なゲームシステムが特徴です。
多くの賞を受賞し、高評価を受けている作品である一方、ネタバレ回避のために、作品自体について語られることが少ない謎めいた作品でもあります。
本記事はネタバレに十分注意して書いた感想レビューです。
カードゲームで進めるアドベンチャー
多くのジャンルが組み合わさった独特なゲームですが、プレイ時間の大部分はローグライクデッキ構築カードゲームで構成されています。
よくあるSlay the Spireフォロワーの1つで、ルールもシンプル、チュートリアルも非常にわかりやすいので、難しいゲームが苦手な人でも手軽にプレイできると思います。
ただまあ、その雰囲気の恐ろしいこと。
まず言っておくと、不意に驚かせてくる演出や、血が飛び散るような残酷なシーンはありません。
何も怖いことが起きていないのに、精神的にじわじわくるドキドキと冷や汗が止まらないサイコホラー系の作品です。
この不気味な雰囲気の中で、ストーリーはカードゲームと並行して進行し、カードゲームの外で何が起こっているのかのヒントが少しずつ開示されていきます。これらのヒントを活用して、カードゲーム内外で行動を起こす必要があり、その点で謎解きアドベンチャーの特徴も兼ね備えています。
カードゲームとアドベンチャーという2つのゲームプレイが、互いに邪魔することなく、絶妙に調和した稀有なプレイ体験ができる作品です。
ストーリークリアまで14時間
インストールサイズは約3.3GB。
ストーリークリアまでは約14時間ほどでした。他の人のプレイ時間を見ると、10時間ほどでクリアしている人もいましたので、10~15時間くらいが目安かなと思います。
この14時間もかなり濃密で、ゲーム内で少しずつヒントが開示されていくたびに、異なるアプローチが求められるので、プレイ時間の大半は初見プレイのような新鮮さがありました。
難易度的には、普通かなぁ?
カードゲームの部分では、もともとの難易度は低く、さらには「強くてニューゲーム」ができるようにもなっていくので、ゲームに慣れていない方でもクリアできると思います。
謎解きの部分でも、特に苦労したポイントはありませんでした。脱出ゲームっぽい雰囲気はあるのですが、ガチの脱出ゲームに比べると、はるかに易しいでしょう。
もともと直接的なヒントアイテムが多いのに、ありがたいことにヒントも豊富で、助言キャラっぽいのもいれば、周回ごとにヒントを与えてくれるシステムもあります。
ゲーム設計者の「どんどんクリアしていけ」というスタンスを感じられました。
カードゲーム特化の追加コンテンツ
ストーリークリア後には、カードゲームのみに集中できる追加コンテンツがプレイできるようになります。ゲームモード名は◯◯MODとなっていますが、標準で本体同梱済みなので別途サブスクライブ等は必要ありません。
このモードでは、ゲームバランスの微調整に加え、デッキ構築ゲーム定番の「縛りを追加して難易度を上昇させるプレイ」を楽しむことができます。
より挑戦的な難易度をクリアすることで、新たな縛りルールが解放され、新しいカードや初期デッキ、さらには本編ストーリーを補完する文書もアンロックされていきます。
自分はまだ攻略中ですが、正直本編以上に楽しんでます。本編クリアと同等の時間を費やして、いまだチャレンジ半分にも達していないという状況ですので、まだまだ遊べそうです。
感想:予想の斜め上の斜め上
プレイする前は、ちょっとカードゲームを絡めたストーリー重視の作品という印象でしたが、実際にプレイしてみると、その印象は180度転換しました。
大枠では、ストーリー(アドベンチャー)メインのゲームであることは間違いないとは思うのですが、道中のカードゲームが素晴らしい出来で、むしろこっちが面白さの半分以上を占めているといっても過言ではないです。
次に印象的だったのは、その圧巻のゲームデザイン。
最初は、ネタバレ厳禁の雰囲気から、なんとなくストーリーに重大な展開があるんだろうなという予想とそれに備える気持ちがあったのですが、それでも驚愕するくらい魅せ方が素晴らしかったです。
「独創的」と評されることが多い作品ですが、発想的にはむしろベタで、わかりやすいものでした。本作の真にすごいところは、そのデザインにおける徹底的な質と丁寧さにあります。奇をてらっても、完成度の高さが崩れない、むしろ増して感じられるような圧倒的技術力とこだわりに一番感銘を受けました。
カードバトルは大味
他作品と比較するとカードカスタマイズ手段が豊富なのが特徴かなと。
「抽出&付与」「強化」「合体」を行えるマスを高い頻度で踏めます。そのため、無限ループコンボだったり、パワーカードだったりを作成しやすく、ワンコンセプト、ワンギミックでのゴリ押しが実現しやすいです。
先行1ターンキルもかなりの頻度で成功し、終盤デッキが完成した頃は、あっという間に決着がつくことが多いです。その点、カードパワーが正義のかなり大味なバランスですね。個人的には、少しずつアドバンテージを広げていくものよりは、こっちのほうが爽快感があって好きです。
とはいえ、これはデッキが完成した場合の話であり、序~中盤では頭を使った工夫が必要でそれなりに歯ごたえがあります。
演出も必要最低限といった感じで、ストレスを感じる要素がないので、30時間ほどプレイした現在でもまったく飽きがこないです。カードゲーム単体でもすっげー面白い。
ストーリーはわかったような気がしてるだけ
ストーリーについては、ゲーム内の舞台と一体化して引き込まれる瞬間もありましたが、理解度の面では本編クリア時点では半々といったところ。まあ、良く出来たストーリーというよりかは、ドライブ感重視のホラー映画みたいな内容でしたから、完璧に理解できずとも体験という意味では満足でした。
MODをクリアして全ての文書読んだあとに、テキトーに解説サイトでも見ようかな~と思っています。
手軽に手に取って
意味深な感じで、どこか意識高い系の雰囲気を思わせますが、そもそもシンプルにゲームとして面白いというのをまず訴えたいです。
何も気を使う必要なく、
- Qなにか面白いゲームない?
- A
はい「Inscryption(インスクリプション)」
といった感じに、面白さのみで推薦できるゲームです。
難しいことを考えず気軽に手にとってプレイして欲しいですね。
あとやっぱり、既プレイ者の誰もが丁寧にネタバレ回避に注意を払ってきたので、その思いを受け取って、どうかゲームクリアまでは情報を目にしないよう気をつけて…。
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