紙の本と電子書籍の比較~メリット・デメリット~

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電子書籍派として

紙と電子書籍の比較は散々語られているところで今更感もあります。たしかに言えるのはどちらにも良い点があるということと、その評価の尺度は人によるということです。最終的には好きなほうを選べとしか言いようがありません。

私は電子書籍の素晴らしさを啓蒙する立場から比較記事を書きます。できるだけ公平に書くつもりですが、だからこそ、そもそもの立場が電子書籍寄りであるということを最初に宣言しておきます。

普及度

2020年の紙書籍対電子書籍の出版市場占有比はおよそ75%対25%となっています。

https://www.gentosha-mc.com/faq/detail204/

トレンドとしては紙が微減↓、電子が10~20%の増加↑という傾向ではあるものの、微減といっても紙の市場規模が段違いに大きいため、依然として紙の圧倒的優位は変わらず、7:3が見えてきたかな?くらいのところです。

電子書籍はほぼ漫画専用?

2021年度の電子書籍市場規模のうち、コミックが前年度から658億円増加の4660億円(市場シェア84.6%)、文字もの等(文芸・実用書・写真集等)が同41億円増加の597億円(同10.8%)、雑誌が同10億円減少の253億円(同4.6%)となっています。

https://research.impress.co.jp/report/list/ebook/501508

モバイル(スマートフォン・タブレット)ユーザーに対して、電子書籍の利用率を調査したところ、有料の電子書籍利用率は19.8%となり、昨年から0.7ポイントの減少となりました。一方で、無料の電子書籍のみの利用率は昨年からは1.3ポイント増加して26.1%となりました。

https://research.impress.co.jp/report/list/ebook/501508

注目は電子書籍の85%近くがコミックスである点です。しかも、有料の電子書籍利用率はなんと20%弱しかありません。

電子書籍利用者の大部分は、無料で漫画を読むためだけに電子書籍に触れている

小説とか専門書とか文字の本のシェアは圧倒的に紙です。電子書籍=電子コミックスといっても過言ではないですね。漫画アプリや既存雑誌の電子版など、そもそも連載の時点から電子で読んでいる人が購入も電子を選ぶのは自然です。また1話購入、レンタル、読み放題といったサービスも浸透しつつあり、最近では縦読み漫画も好評で、電子コミックスの拡大はまだまだ続きそうです。

味わい

比較の際に1番取り上げられるのが紙独自の味わい、風味ですね。手触り、重さ、インクの匂い、色味。ページをめくる感覚。読み終わってパタンと閉じるときの音。ただ情報を得るだけでなく、本に触れているだけでなんとなく癒やされるものです。

一方の電子書籍は味わいなんてものはありません。全書籍同じフォント同じ文字サイズ。機械的、画一的でつまらないですね。もちろん優れた本はそんなの関係なしにぐいぐい引き込まれるものですが。電子書籍は情報だけを収集しているような感覚です。ちょっと手の込んだWikiを読んでるみたいな。

理解力の問題

紙の「味わい」はただ心地いい感覚をもたらしてくれるだけのものではありません。理解や読解力の面で紙と電子のどちらがより優れているかを比較する研究というのが数多く行われていて、今のところは紙の完勝です。

というのも因果は明らかではありませんが、多くの研究者の指摘するところでは、直感の部分で紙のほうが得るものが多いからというのが理由として考えられるそうです。たとえば手に持ったりページをめくったりするときの触覚、本のどのあたりを読んでいるか視覚で明らかな情報。こうした無意識の直感が記憶する際のキーとなり、頭に定着しやすいと言われています。文字をただ追っているよりも、余計な情報も一緒にあったほうが良いということらしいです。 

分からなくもないというのが私の実感としてあります。紙の本を思い返すときはなぜかページそのものを思い出せることが多かったように思います。電子書籍に切り替えてからはページではなく頭の中の文章とか風景を思い出す感じです。ただ断言できるほど決定的な違いは感じられません。電子書籍で読むという行為に馴染みがないからともいえるし、だったら訓練できるかもと考えることだってできるはずです。

実体のあるなし

電子書籍は電子データですから場所を取りませんし劣化もしません。本や本棚がない分部屋にゆとりができますし、本を探して取り出すのも楽ちんです。最悪配信するところが潰れて取返しのつかないことになりそうですが現実的ではないです。

反対に場所を取るからこそいいという考え方もあります。思い出の本が並んだ本棚はただのコレクションというよりアルバムのようでもあります。それを眺めるだけで幸せな気持ちになれる人は多いでしょう。

本棚を満たしていくのが好きだという人もいます。「読書はセーブデータ作成みたいなもの」とたとえた人は天才ですね。ある本を振り返ったとき、内容だけでなく、その本を読んでいた当時の思い出が呼び起こされた経験は誰にでもあると思います。そうした本の集まりである本棚は、自分自身の分身とも言えそうです。

電子書籍でも本棚は作れますが、しょせんデータです。実体あるものと比べるとどうしても思いの丈は微小と言わざるを得ないでしょう。ただ微小であるだけでまったくないわけではないですから、本人の心の持ちよう次第ということになるんでしょうかね。というかセーブデータ、といっても劇的な思い出なんてものはそんななく、ただ惰性で読んでいた思い出は惰性で読んでいたということしか残らないものです。

耐久性

耐久性では、電子書籍の圧勝です。電子データですから劣化しようがありません。電子データを管理しているクラウド元が潰れる心配もまったくないです。

劣化を味と捉えることもできます。というか紙が劣化したとしても、自分の手で買った本が、生きている間に読めなくなるほど劣化することはないでしょう。

視認性

画面(ページ)の見やすさでは電子書籍の勝ちです。紙の本だと真ん中がくぼんでいるので右ページの左端、左ページの右端が影になって見えづらいですよね。電子書籍を読む端末は、平坦なディスプレイなため端から端までとても見やすいです。また暗い部屋で読書することはあまりないにしても、どっちともつかない微妙な明るさの時ってありますよね。そういうときに微妙なライトの調整ができる点でもストレスがなく使いやすいです。

また個人的にはあまり重要ではなかったのですが、文字サイズの変更ができるというのが電子書籍の最大の利点といえると思います。紙の場合、当たり前ですが文字の大きさは固定されています。読む側で適応するのは簡単ですし、個人的にはあればいいかな程度の機能なのですが、目が不自由な方にとって文字の大きさというのは死活問題だと思います。読みにくいを通り越して見えないのですから。そこまで読書家ではない人にとって、文字が見えないというのは本を読まなくなる理由になります。出版業界もそれを知っていて、わざわざ大文字(大活字)の本を出版していますが、冊数が少ないですし、ページ数が増えるので値段も通常よりかなり高めです。

重さ

文庫本以外の本は重い。机や膝に置いて読めば気になりませんが、逆に言うと、そうでもしないとまともに持てないのです。

電子書籍を読める端末は本より軽いのばかりです。ちょっとした持ち出しするときなんかはつまんで持てるほどの軽さですから楽でいいです。手軽という意味でもいいですね。カバーを開いて即座に前回読み終わったページが表示されます。まんま紙の本を開く感覚です。

電子書籍には2つの形式がある

単に電子書籍といっても、配信されるデータには2つの形式があります。画像を電子化したものと、文章を電子化したものです。便宜的に画像データ文章データと呼ぶことにします。

画像データは紙をスキャンしたデータそのものって感じで、スクリーンショットみたいなものです。漫画や雑誌はこちらの形式しかありませんから、一般的な電子書籍の形式といえるでしょう。ページ数=画像の数なので分かりやすいです。

文章データはページではなく内容(内部)を電子化していて、小説など文字の本のほとんど(未対応あり)がこちらの形式になります。どう描写するのかが規定されていないので、好きなフォント、好きな文字サイズ、好きな行間……などを自分で設定できるのが特徴です。

また本の中を特定のワードで検索、読めない漢字を辞書やウィキペディアで調べる、気になる箇所に線を引く(ハイライト)、線を引いた箇所をまとめて単語帳やまとめ本のようなものをつくる……といったことも可能です。

私は辞書機能を1番よく使います。読めない漢字をタッチで選択すると、すぐに辞書で検索して読み方と意味を教えてくれます。洋書の場合は英単語の翻訳をしてくれます。わざわざ辞書やスマホで調べる手間が省けるので楽でいいです。

価格

電子書籍はまず本とは別に本体代がかかります。スマホはみんな持ってますが、タブレットとか、PWのような読書専用端末を買うとなるとそれなりの出費になり、最低クラスの端末でも1万2万します。それならその分新しい本を買えますね。

本単体では、一般的に電子書籍のほうが印刷代が浮くので安く設定されていることが多いです。ただ劇的に安くはないです。厚みのあるハードカバーの本なんかだと半額になっていることが多いですが、たいていは1~3割引きくらいで、紙と電子でほぼ変わらないものもよくあります。値段設定は出版社の考え方もあるでしょう。たとえば岩波文庫は紙と電子でほぼ値段が変わりません。

セールがある電子書籍、中古がある紙

電子書籍はセールが活発です。本屋に行かないので比較はできませんが、50~90%オフや、20%ポイント還元(実質2割引)のような値引きの大きいセールを年がら年中やっています。興味はあるけど買うほどではない作品が安かったらつい買ってしまいますね。

ただ価格の面だと紙の本には最強の手札があります。中古です。電子書籍は新品オンリーです。セールで半額だーといっても1000円の本が500円、500円の本が250円になる程度ですが、中古屋では100円で投げ売りされているのをよく見かけます。またそもそも電子化されていない書籍も多くあり、そういった本の発掘も含めた本屋巡りという楽しみができるのは紙だけです。

電子書籍にもコスパ最強の本があります。青空文庫です。青空文庫とは、著作権切れの作品を無料で公開しているサイトです。普通にブラウザから読むこともできますし、専用アプリor端末に最適化したデータもあります。

無料、0円です。夏目漱石、太宰治、宮沢賢治、中原中也といった教科書に出てくるような有名作家の本をタダで読めるとはいい時代になったものです。

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紙の本のメリット・デメリット

  • 味わいがある
  • 電子書籍より理解力が高くなる
  • 本棚を鑑賞する楽しみがある
  • 中古で格安で本が手に入る
  • 耐久性
  • 見にくい
  • 重い
  • かさばる
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電子書籍のメリット・デメリット

  • 実体がないから省スペース
  • 耐久性
  • 見やすい
  • 軽い
  • データ検索が便利
  • セールが多い
  • 青空文庫で無料本を楽しめる
  • 味わいがない
  • 理解力が紙の本に劣る
  • 本代とは別に本体代がかかる

このように一長一短で、結局のところは各人でもっとも心地いいのがどれかってのでしょうね。本屋巡りが好き、本棚眺めるのが好き、情報だけあればいい、セールが好き、それぞれ「これだ!!」というポイントがあるはずです。自分の場合は、紙の本の重さに嫌気がさしたのが決め手でした。

すっかり電子書籍に慣れた自分でも、ハードカバーのしっかりとした紙の本をたまに手に取ると「いいな~」としみじみ思うくらいですから、紙は紙でやはり素晴らしいです。

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