2013年12月『響け!ユーフォニアム』(原作小説)
2015年4月『響け!ユーフォニアム』(TVシリーズ第1期)
2016年4月『劇場版 響け!ユーフォニアム〜北宇治高校吹奏楽部へようこそ〜』(劇場版第1作)
2016年10月『響け!ユーフォニアム2』(TVシリーズ第2期)
2017年9月『劇場版 響け!ユーフォニアム〜届けたいメロディ〜』(劇場版第2作)
2018年4月『リズと青い鳥』(劇場版スピンオフ)
2019年4月『劇場版 響け!ユーフォニアム〜誓いのフィナーレ〜』(劇場版第3作)
2023年8月『特別編 響け!ユーフォニアム〜アンサンブルコンテスト〜』(劇場版第4作)
2024年4月『響け!ユーフォニアム3』(TVシリーズ第3期)
『響け!ユーフォニアム』は武田綾乃の小説シリーズを原作にした京都アニメーション制作のアニメシリーズ。
劇場版3作を続けて観たのでその感想記事です。
TVアニメシリーズは両方リアルタイムで追っていたので、完全初見ではありませんが、作品自体に触れるのは数年ぶり。
~北宇治高校吹奏楽部へようこそ~
ボロボロ泣いた。
数年ぶりの視聴
劇場版第1作。TVシリーズ第1期の総集編的内容で、久美子入部~京都府吹奏楽コンクールまでを描いています。
TVシリーズの内容だけで構成されているということでしたが、視聴したのはもう8年近くも前のことなので、本筋を全く忘れてしまってました。コンクールの結果も記憶の外。それなのに、キャラクター同士の関係性はなんとなく覚えていて、この作品の見せどころが象徴されているようだなと、自分の記憶に対してしみじみ。
2時間弱の尺に合わせてカットされたシーンも多いですが、描かれないことや、進みの良さからくる違和感のようなものは1つもなく、シンプルに1つの作品として良く出来ていたと思います。このクオリティなら映画から入るのも全然ありです。
あとやっぱりリアルタイムだと、他の作品との兼ね合いで消化的になるというか、ながら観のような時もあったので、1本の作品として集中して観ることでより作品に入り込め、新たな発見も多かったです。
王道の逆転劇
あらためて観てみると、弱小吹奏楽部が成長する王道展開でした。大枠だけでも爽快で気持ちがいいストーリーだなと。これに個々のドラマが乗っかって更に大きな感動となるのですから、そりゃーすごいことになるのも当然ですね。
リアルなドラマ
とはいえ、響け!の魅力はそういう分かりやすい結果ではなくて、途中のリアルなドラマにあると思います。
意識低い部活動あるあるの言葉だけの目標や、厳しい指導への反抗と団結、そしてオーディションでのギスギスなど、緊張感の続くシーンから生まれるキャラクターたちの心の動きや空気感が本当にリアルです。部員同士の衝突や内面の葛藤を通して成長していく姿にめちゃくちゃ感動しました。
久美子のボヤキ芸
あとやっぱりキャラクターが魅力的。なんといっても主人公である黄前久美子。良くも悪くも忌憚のない真っ直ぐな意見を言える子で、時に毒を、時に正論をぶつけることのできる本音力が魅力でした。リアルタイムで観ていた当時は、彼女のボヤキ芸をとても斬新に感じていたのを憶えています。
あらためて聞くと、ただぼやいているだけではなく、ボソボソ声にも表情ついているのが本当にすごいなと。動の演技でも、声がかすれたり、途切れたりする些細な表情に、声優さんの技量がめちゃくちゃ表れていました。
久美子と麗奈
久美子と高坂麗奈の関係性、当時はあんまり理解してなかったな~。映画観てスッキリ。
中学時代のコンクールで、久美子は金賞で喜んでいたのに、麗奈はダメ金が悔しかった。久美子は涙を流して悔しがる麗奈に対する負い目があったんだね。久美子はそれも含めて人間関係リセットできる北宇治を選んだと。
麗奈は自身が持つ反骨心や自尊心、性格の悪さを久美子にも見出していたからなんとなく気に入っていたと。北宇治を選んだのは滝先生がいたから。
最後のコンクールの結果発表の瞬間、プロローグのように無音で魅せる演出はすごく良かったですね。あれはおそらく、プロローグのときも聞こえてたけど、聞こえないフリをしてたということなんだろうな。そして、ちゃんと聞こうと思った今回は、逆にまったく聞こえなかったという…そういう風にも見えました。
雄弁な音楽
ストレートな物言いも多い作品ですが、何よりも音楽が素晴らしい。
緊張する部員に喝を入れる高坂のトランペット、祭りの日の久美子と高坂の絡み合うようなハーモニー、緊張感が毎度違う演奏前の単調なチューニング。そしてすべてのドラマが収束するコンクール当日のオーケストラ。
演出上のアクセントだけでない音楽の力というのを随所に強く感じる作品でした。
3作振り返ってみると、やっぱり第1作が1番泣いたなぁ。ここ!ってこともなく、見どころばかりで、何回も泣けた。
〜届けたいメロディ〜
しっとり泣いた。ボロボロ泣けるというよりかは、ジーンと目が熱くなる感じ。
田中あすか編
劇場版第2作はTVシリーズ第2期の総集編で、時系列的には関西コンクール~3年生の卒業までを描いています。新作カットもあったらしい?
本作は田中あすか編といってもいいくらい、彼女を中心としたエピソードで、なかなか仮面が剥がれない彼女の内面に切り込む内容になっています。
青春の終わり
リアルタイムで追っていたときは、毎週暗いな!って思ってました。なかなか折れねぇな~みたいな事も思ってたかな。合宿もなぜか記憶に残ってたな。めっちゃ短かったけど。合宿にいた大人たちって何者なんだっけ?
前作はゴタゴタがありつつも部活内の話で完結していましたが、本作は家族が登場するなど部活外の話も多くて、笑えないというか…より生々しい話になりました。青春という夢の時間の終焉を意識させられる感じでした。
鏡のようなキャラクター
少しでも隙を見せるとすぐに茶化す方向に持っていくあすかには、ゾッとすると同時に哀れみも感じ、観ていて非常に痛々しいものでした。そんな厚い仮面を被ったあすか先輩の時折見え隠れする本音から、複雑な心情の輪郭が見えてくる過程が丁寧に描かれていました。
つくづく久美子は鏡のようなキャラクターだなぁと。麗奈もあすかも、そして第3作で登場する後輩たちも、久美子の一部分に自身との共通点を感じ、それが久美子が彼女たちを引き寄せる要因になっているのですが、その根底には自分への興味や不満があるように思います。
久美子はそんな彼女たちのアプローチからSOSを察知し懐に入り込む術に優れています。久美子の言葉は、説教風に見えることもありますが、最終的には自己と向き合うことを推奨しているだけで、最後まで相手をリスペクトした寄り添う姿勢に人としての温かみが表れているな~と。距離感が絶妙。みんな久美子が大好きになるのも理解できます。
あすかが久美子のことを「ユーフォっぽい」と表現したシーンが良かったですねー。彼女にとっての生きがいや、楽しみでありつつ、オーケストラにおいて地味ながら重要な働きに感心していることも示した最高の賛辞、いや愛情表現でした。
最後の演奏シーンは集大成
フル尺で描かれる最後の演奏は本シリーズの集大成のようでした。前作と同じ年なので課題曲も自由曲も同じなんですが、今回の方が舞台も大きくドラマの整理加減からいっても、より熱がこもっていたように見えました。
あすが先輩を見送る最後のシーンは、今思い返してもジーンときますね。タイトル回収なんかもあったりして、前作と本作で完成した作品になったという感じがしました。これ以上は蛇足じゃねーのと思えるほどパーフェクトすぎる終わり方でした…。
作品単体で見ると、前作ほどではないかな。合宿時の知らん大人の登場や、久美子と姉のエピソードは省略されすぎて、初見だとモヤモヤが残る構成だったかな~。
~リズと青い鳥~
あわれあわれ。
久美子2年生編のスピンオフ
久美子2年生編の自由曲『リズと青い鳥』が決定したあたりの話で、オーボエ鎧塚みぞれとフルート傘木希美の2人に焦点を当てた90分のスピンオフ。
まず目を引くのは、これまでのシリーズとは異なるキャラクターデザイン。観る前はまったくの別作品のように思っていましたが、登場する個性豊かな人々は変わりなくすぐに慣れました。友情出演とかいうレベルではなく、ガッツリ個性を発揮してましたねみんな。
みぞれと希美
希美とみぞれ。性格の対照的な2人ですが、中学時代からの特別な絆で結ばれています。希美は明るく社交性豊かな一方で、みぞれは寡黙で控えめ。この対照的な性格からくる絶妙な距離感が、2人の関係を特別なものにしていました。
しかし、TVシリーズ第一期であったゴタゴタや進路の問題が2人の関係に溝を生み、それが2人のパートが前面に出た自由曲で表出してしまいます。お互いに嫌い合っているわけではないのに、どこか気まずさを抱える2人が『リズと青い鳥』の世界観に影響を受けながら互いに歩み寄るという物語です。
架空原作がアクセント
表題曲『リズと青い鳥』は童謡を基に作られたという設定。作中には岩波文庫風の原作本も描かれていましたが、実際には存在しない架空の作品のようです。その架空原作世界の描かれ方は、なんというかジブリ的で色彩豊かな映画館映えする映像演出でした。
俯きがちの視線や緊張する場面で髪を触るようなリアルな仕草や空気感が魅力の作品ではあるけども、要所で挿し込まれる原作パートがアクセントとして良い働きをしていました。
ちょっとミステリーっぽかったですね。
フィナーレの前に
自分は先に「フィナーレ」の方を觀たので、なんだかスピンオフの子らのカットが多いな~くらいにしか思っていませんでしたが、これをこれを観たらより感動が深まりますね。クライマックスは次作にというね…。
ところで最後は寡黙なみぞれが感情的になっているだけでもエモかったですが、どう声をかけたかで想像力を働かせる余地を与えてくれたのは良かったですね。大親友あるいはってね。
〜誓いのフィナーレ〜
もっと観たかった2年生編
久美子2年生編
スピンオフ『リズと青い鳥』を経て公開された本編劇場版第3作目は、久美子2年生編を丸々1年描いた完全新作ストーリー。
幼馴染の告白からスタートし、新入生入部、サンフェス、オーディション、コンクールを経て、最後は久美子が3年生になって終わります。
新しい風
本作は「新しい風!」って感じで、クセの強い新入生と彼らに振り回されっぱなしの久美子が描かれます。
気難しい後輩に対して先輩の威厳を持って制する久美子には精神的な成長を感じられました。1年生はクセはあるけど、シリアスすぎないというか、可愛げがありましたね。
その中でも要所で流れる「響け!ユーフォニアム」に感動。そういや先輩たちもちょっと出てたね。
一気に駆け抜ける1年
総集編だったこれまでと違って、先の見えないワクワク感があった作品ですが、まさか1年やり切るとは思いませんでしたねー。
映画だと2作品、TVアニメでは2期にわたって描かれた1年を、たった2時間弱の作品に収めたわけですから、相当な駆け足進行でした。サンフェス、オーディション、うんうん、え?最後のコンクール?もう!?って感じ。
特に違和感があったわけではありませんが、もっとたくさんのドラマがあったはずで、そういうのをもっと観たかったなと。絡みも新入生とばかりで、先輩との絡みも少ないまま引退というのは悲しすぎる。このモヤモヤは原作小説で補完するしかないのか…。
カタルシス的にはまあまあ
第1作のような逆転劇や、第2作の集大成感もなく、なんというか大きな目標に向かって団結する感じがなかったです。確かに障壁は乗り越えたけども、これまでと比較すると圧倒的にドラマ不足! 中身や質じゃなくて数! それだけが惜しいなぁ。
演奏は過去一好き
クライマックスの演奏シーンは過去一好きかもしれません。前よりドラマチックな曲調というのもあるかもしれませんが、シンプルに音楽が素晴らしかったのが1つ。もう1つは映像のバランスがとても良かったこと。作画がすごいというより、カメラワークやスイッチングによる演出が素晴らしいものでした。会場だけの映像なのに、情景が鮮明に浮かび上がり、アニメーションは良く動いているのに静かな曲調を邪魔しない範囲で、12分近いクラシックを心から堪能できました。
振り返ると3作の中では3番目かな~。面白かったけど、ドラマ的には前2作を超えなかった。もっと観たかった…。
~アンサンブルコンテスト~
そして数年ぶりの新作劇場版は2023年8月4日公開となります。
本作はなによりも多くのスタッフを失ったあの事件以降初のシリーズ新作ということで、公開されるだけでも大変意義深いことと言えます。
~誓いのフィナーレ~の続きで久美子2年生編の3年生が引退した後の話。部長に指名された後の初仕事みたいな感じかな? 少人数参加のアンサンブルコンテストということから、オーディションのようなギスギスがまずありそう。
これまで通り最後の本番の演奏がクライマックスになるとしたら、これまでなかった少人数の演奏になるってことか。すごく新鮮な映像になりそうだ。
観ました。
ダイジェスト的に展開が激しかった他の映画と比べると、無駄なシーンというか、日常シーンが多く、演出も含めてTVシリーズのデモ版みたいな内容。尺も1時間弱と短い。演奏シーンがなかったのは残念。引退3年生の出演は嬉しかった。ストーリーは薄味だけど、絵のクオリティは以前と変わりないクオリティ。アニメーションの動きは未知。第3期に期待が持てる内容。
そしてアニメ第3期へ
映画のあと、来年にはTVシリーズ第3期が始まります。詳しい日程や尺などは不明ですが、久美子3年生編ということで、2年生編はTVシリーズではスルーが確定っぽいですね。
続報:2024年4月より放送決定
『響け!ユーフォニアム3』2024年4月より放送決定! キービジュアル公開!
ティザーの後ろ姿もどこか大人っぽい感じで、いよいよ最後の1年を迎えるんだなとしみじみ。
早く次の曲が聴きたい!
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